古典ライブラリー

人物事典 / あ行

大伴家持

おおとものやかもち

718頃–785

別名・呼び名:中納言家持

人物について

奈良時代の貴族・歌人。大伴旅人の子。『万葉集』に最も多くの歌を残し、その編纂にも深く関わったと考えられている。三十六歌仙の一人。

古典ライブラリーで読める歌:『百人一首』1首『万葉集』436首『新古今和歌集』11首

この略歴は、掲載中の『百人一首』のページの作者欄に基づきます。伝承を含む場合は、その旨を本文に示しています。

『百人一首』の大伴家持

1首

『万葉集』の大伴家持

436首
万葉集・403番朝に日に朝に日に 見まく欲りする その玉を 如何にしてかも 手ゆ離れざらむ原文・訳・解説を読む 万葉集・408番石竹の石竹が その花にもが 朝旦 手に取り持ちて 戀ひぬ日無けむ原文・訳・解説を読む 万葉集・414番あしひきの 岩根凝しみあしひきの 岩根凝しみ 菅の根を 引かば難みと 標のみぞ結ふ原文・訳・解説を読む 万葉集・462番今よりは 秋風寒く今よりは 秋風寒く 吹きなむを いかにか獨 長き夜を宿む原文・訳・解説を読む 万葉集・464番秋さらば秋さらば 見つつ思べと 妹が植ゑし 屋前の石竹 咲きにけるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・465番うつせみの 代は常なしとうつせみの 代は常なしと 知るものを 秋風寒み 思びつるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・466〜469番吾が屋前に 花ぞ咲きたる吾が屋前に花ぞ咲きたる 其を見れど情も行かず 愛しきやし妹が在りせば み鴨なす二人雙び居 手折りても見せましものを うつせみの借れる身なれば 露霜の消ぬるが如く あしひきの山道を指して 入日なす隱りにしかば 其思ふに胸こそ痛め 言ひもかね名づけも知らに 跡なき世間にあれば爲むすべも無し 時はしも いつもあらむを こころ哀く いにし吾妹か 若き子を置きて 出でて行く 道知らませば あらかじめ 妹を留めむ 關も置かましを 妹が見し 屋前に花咲き 時は經ぬ 吾が泣く涙 いまだ干なくに原文・訳・解説を読む 万葉集・470〜474番斯くのみし斯くのみし ありけるものを 妹も吾も 千歲の如く 憑みたりける 家離り 坐す吾妹を 停めかね 山隱りつれ 情神もなし 世間し 常斯くのみと かつ知れど 痛き情は 忍びかねつも 佐保山に 棚引く霞 見るごとに 妹を思ひ出で 泣かぬ日は無し 昔こそ 外にも見しか 吾妹子が 奧津城と思へば 愛しき佐保山原文・訳・解説を読む 万葉集・475〜477番かけまくも あやにかしこしかけまくもあやにかしこし 言はまくもゆゆしきかも 吾王皇子の命 萬代に食したまはまし 大日本久邇の京は うち靡く春さりぬれば 山邊には花咲き撓り 河瀨には年魚子さ走り いや日日に榮ゆる時に 逆言の枉言とかも 白妙に舍人裝ひて 和豆香山御輿立たして ひさかたの天知らしぬれ 展轉び沾ち泣けどもせむすべも無し 吾王 天知らさむと 思はねば 凡にぞ見ける 和豆香杣山 あしひきの 山さへ光り 咲く花の 散りぬる如き 吾王かも原文・訳・解説を読む 万葉集・478〜480番かけまくも あやにかしこし わが王かけまくもあやにかしこし わが王皇子の命 武士の八十伴の男を 召し集へ率ひ賜ひ 朝獵に鹿猪踐み起し 暮獵に鶉雉履み立て 大御馬の口抑へ駐め 御心を見し明らめし 活道山木立の繁に 咲く花も移ろひにけり 世の中は斯くのみならし 丈夫の心振り起し 劒刀腰に取り佩き 梓弓靫取り負ひて 天地といや遠長に 萬代に斯くしもがもと 憑めりし皇子の御門の 五月蠅なす騷ぐ舍人は 白栲に服取り著て 常なりし咲ひ振舞 いや日日に變らふ見れば悲しきろかも 愛しきかも 皇子の命の 在り通ひ 見しし活道の 路は荒れにけり 大伴の 名に負ふ靫帶びて 萬代に 憑みし心 何處か寄せむ原文・訳・解説を読む 万葉集・611〜612番今更に 妹に逢はめやと今更に 妹に逢はめやと 念へかも 幾許わが胸 鬱悒からむ なかなかに 默もあらましを 何すとか 相見そめけむ 遂げざらなくに原文・訳・解説を読む 万葉集・680〜682番蓋しくも 人の中言蓋しくも 人の中言 聞かせかも 幾許待てど 君が來まさぬ なかなかに 絕つとしいはば 斯くばかり 氣の緒にして 吾が戀ひめやも 念ふらむ 人にあらなくに ねもころに 情盡して 戀ふる吾かも原文・訳・解説を読む 万葉集・691〜692番ももしきの 大宮人はももしきの 大宮人は 多かれど 情に乘りて 念ほゆる妹 表邊なき 妹にもあるかも 斯くばかり 人の情を 盡す念へば原文・訳・解説を読む 万葉集・700番斯くしてや斯くしてや なほや退らむ 近からぬ 道の間を なづみ參來て原文・訳・解説を読む 万葉集・705〜706番葉根蘰 今爲る妹を葉根蘰 今爲る妹を 夢に見て 情のうちに 戀ひわたるかも 葉根蘰 今爲る妹は 無かりしを 何の妹ぞ 幾許戀ひたる原文・訳・解説を読む 万葉集・714〜720番情には 思ひわたれど情には 思ひわたれど 緣を無み 外のみにして 嘆ぞ吾がする 千鳥鳴く 佐保の河門の 清き瀨を 馬うち渡し 何時か通はむ 夜晝と いふ別知らに 吾が戀ふる こころは蓋し 夢に見えきや つれも無く あるらむ人を 片思に 吾はおもへば わびしくもあるか 思はぬに 妹が笑ひを 夢に見て 心のうちに 燃えつつぞ居る 丈夫と おもへる吾を 斯くばかり 羸れに羸れ 片思を爲む 村肝の 情摧けて 斯くばかり 吾が戀ふらくを 知らずかあるらむ原文・訳・解説を読む 万葉集・722番斯くばかり 戀ひつつあらずは斯くばかり 戀ひつつあらずは 石木にも ならましものを 物思はずして原文・訳・解説を読む 万葉集・727〜736番萱草 吾が下紐に萱草 吾が下紐に 著けたれど 醜の醜草 言にしありけり 人も無き 國もあらぬか 吾妹子と 携ひ行きて 副ひて居らむ 玉ならば 手にも卷かむを うつせみの 世の人なれば 手に卷きがたし 逢はむ夜は いつもあらむを 何すとか 彼の夕逢ひて 言し繁しも 吾が名はも 千名の五百名に 立ちぬとも 君が名立たば 惜しみこそ泣け 今しはし 名の惜しけくも 吾は無し 妹によりてば 千遍立つとも うつせみの 世やも二行く 何すとか 妹に逢はずて 吾が獨宿む 吾が念 斯くてあらずは 玉にもが 眞も妹が 手に纏かれむを 春日山 霞たなびき 情ぐく 照れる月夜に 獨かも寢む 月夜には 門に出で立ち 夕占問ひ 足卜をぞせし 行かまくを欲り原文・訳・解説を読む 万葉集・741〜755番夢の逢は夢の逢は 苦しかりけり 覺きて かき探れども 手にも觸れねば 一重のみ 妹が結ばむ 帶をすら 三重結ぶべく 吾が身はなりぬ 吾が戀は 千引の石を 七ばかり 頸に繫けむも 神の諸伏 暮さらば 屋戸開け設けて 吾待たむ 夢に相見に 來むといふ人を 朝夕に 見む時さへや 吾妹子が 見とも見ぬ如 なほ戀しけむ 生ける世に 吾はいまだ見ず 言絕えて 斯く何怜く 縫へる囊は 吾妹子が 形見の衣 下に著て 直に逢ふまでは 吾脫がめやも 戀ひ死なむ 其も同じぞ 何せむに 人目他言 辭痛み吾が爲む 夢にだに 見えばこそあらめ 斯くばかり 見えずしあるは 戀ひて死ねとか 思ひ絕え 佗びにしものを なかなかに 何か苦しく 相見始めけむ 相見ては 幾日も經ぬを 幾許も 狂ひに狂ひ おもほゆるかも 斯くばかり 面影のみに 思ほえば 如何にかもせむ 人目繁くて 相見ては 須臾戀は 和ぎむかと 思へどいよよ 戀ひまさりけり 夜のほどろ 吾が出でて來れば 吾妹子が おもへりしくし 面影に見ゆ 夜のほどろ 出でつつ來らく 遍多數く なれば吾が胸 截ち燒く如し原文・訳・解説を読む 万葉集・765〜766番一隔山 隔れるものを一隔山 隔れるものを 月夜よみ 門に出で立ち 妹か待つらむ 路遠み 來じとは知れる ものからに 然ぞ待つらむ 君が目を欲り原文・訳・解説を読む 万葉集・767〜768番都路を 遠みや妹が都路を 遠みや妹が 此頃は 祈誓て宿れど 夢に見えこぬ 今しらす 久邇の京に 妹に逢はず 久しくなりぬ 行きてはや見な原文・訳・解説を読む 万葉集・769番ひさかたの 雨の降る日をひさかたの 雨の降る日を ただ獨 山邊に居れば 欝せかりけり原文・訳・解説を読む 万葉集・770〜774番人眼多み 逢はなくのみぞ人眼多み 逢はなくのみぞ 情さへ 妹を忘れて 吾が思はなくに 僞も 似つきてぞする 顯しくも まこと吾妹子 吾に戀ひめや 夢にだに 見えむと吾は ほどけども 會はずし思へば 諾見えざらむ 言問はぬ 木すら紫陽花 諸弟等が 練の村戸に 詐かえけり 百千遍 戀ふといふとも 諸弟等が 練の言葉は 吾は信まじ原文・訳・解説を読む 万葉集・775〜776番鶉鳴く 故りにし郷ゆ鶉鳴く 故りにし郷ゆ おもへども 何ぞも妹に 逢ふ緣も無き 言出しは 誰言なるか 小山田の 苗代水の 中淀にして原文・訳・解説を読む 万葉集・777〜781番吾妹子が 屋戸の籬を吾妹子が 屋戸の籬を 見に行かば 蓋し門より 返しなむかも うつたへに 籬の姿 見まく欲り 行かむといへや 君を見にこそ 板蓋の 黑木の屋根は 山近し 明日の日取りて 持ち參り來む 黑樹取り 草も刈りつつ 仕へめど 勤しき汝と 譽めむともあらじ ぬばたまの 昨夜よは還しつ 今夜さへ 吾を還すな 路の長道を原文・訳・解説を読む 万葉集・783〜785番前年の 先つ年より前の年の 先つ年より 今年まで 戀ふれど何ぞも 妹に逢ひがたき 現には 更も得言はじ 夢にだに 妹が袂を 纏き宿とし見ば 吾が屋戸の 草の上白く 置く露の 壽も惜しからず 妹に逢はざれば原文・訳・解説を読む 万葉集・786〜792番春の雨は いや頻降るに春の雨は いや頻降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも 夢の如 おもほゆるかも 愛しきやし 君が使の 數多く通へば 末わかみ 花咲きがたき 梅を植ゑて 人の言繁み 思ひぞ吾が爲る 情ぐく おもほゆるかも 春霞 たなびく時に 言の通へば 春風の 聲にし出なば 在りさりて 今ならずとも 君がまにまに 奧山の 磐蔭に生ふる 菅の根の ねもころ吾も 相念はざれや 春雨を 待つとにしあらし 吾が屋戸の 若木の梅も いまだ含めり原文・訳・解説を読む 万葉集・994番振仰けて 若月見れば振仰けて 若月見れば 一目見し 人の眉引 おもほゆるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・1029番河口の 野邊に廬りて河口の 野邊に廬りて 夜の歷れば 妹が袂し おもほゆるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・1032〜1033番天皇の 行幸の隨天皇の 行幸の隨 吾妹子が 手枕纒かず 月ぞ歷にける 御饌つ國 志摩の海人ならし 眞熊野の 小船に乘りて 沖邊こぐ見ゆ原文・訳・解説を読む 万葉集・1035番田跡河の 瀧を淸みか田跡河の 瀧を淸みか いにしへゆ 宮仕へけむ 多藝の野の上に原文・訳・解説を読む 万葉集・1036番關無くは 還りにだにも關無くは 還りにだにも うち行きて 妹が手枕 纏きて宿ましを原文・訳・解説を読む 万葉集・1037番今つくる 久邇の王都は今つくる 久邇の王都は 山河の さやけき見れば うべ知らすらし原文・訳・解説を読む 万葉集・1040番ひさかたの 雨は零り重けひさかたの 雨は零り重け 念ふ子の 宿に今夜は 明して行かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・1441番うち霧し 雪は零りつつうち霧し 雪は零りつつ 然すがに 吾家の苑に うぐひす鳴くも原文・訳・解説を読む 万葉集・1446番春の野に 求食る雉の春の野に 求食る雉の 妻戀に 己があたりを 人に知れつつ原文・訳・解説を読む 万葉集・1448番吾が屋外に 蒔きし瞿麥吾が屋外に 蒔きし瞿麥 いつしかも 花に咲きなむ 比へつつ見む原文・訳・解説を読む 万葉集・1462〜1463番吾が君に 戲奴は戀ふらし吾が君に 戲奴は戀ふらし 給りたる 茅花を喫めど いや痩せに痩す 吾妹子が 形見の合歡は 花のみに 咲きて蓋しく 實に成らじかも原文・訳・解説を読む 万葉集・1464番春霞 たなびく山の春霞 たなびく山の 隔たれば 妹に逢はずて 月ぞ經にける原文・訳・解説を読む 万葉集・1477〜1478番卯の花も いまだ咲かねば卯の花も いまだ咲かねば 霍公鳥 佐保の山邊に 來鳴き響もす 吾が屋前の 花橘の 何時しかも 珠に貫くべく その實成りなむ原文・訳・解説を読む 万葉集・1479番隱りのみ 居れば鬱悒み隱りのみ 居れば鬱悒み 慰むと 出で立ち聞けば 來鳴く晩蟬原文・訳・解説を読む 万葉集・1485番夏まけて 咲きたる唐棣花夏まけて 咲きたる唐棣花 ひさかたの 雨うち零らば うつろひなむか原文・訳・解説を読む 万葉集・1486〜1487番吾が屋前の 花橘を吾が屋前の 花橘を ほととぎす 來喧かず地に 散らしめむとか 霍公鳥 念はずありき 木の晩の 斯くなるまでに 奈何か來喧かぬ原文・訳・解説を読む 万葉集・1488番何處には 鳴きもしにけむ何處には 鳴きもしにけむ 霍公鳥 吾家の里に 今日のみぞ鳴く原文・訳・解説を読む 万葉集・1489番吾が屋前の 花橘は吾が屋前の 花橘は 散り過ぎて 珠に貫くべく 實になりにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・1490番ほととぎす 待てど來喧かずほととぎす 待てど來喧かず 菖蒲草 玉に貫く日を いまだ遠みか原文・訳・解説を読む 万葉集・1491番卯の花の 過ぎば惜しみか卯の花の 過ぎば惜しみか ほととぎす 雨間も措かず 此間ゆ喧き渡る原文・訳・解説を読む 万葉集・1494〜1495番夏山の 木末の繁に夏山の 木末の繁に ほととぎす 鳴き響むなる 聲の遙けさ あしひきの 木の間立ち潛く 霍公鳥 斯く聞きそめて 後戀ひむかも原文・訳・解説を読む 万葉集・1496番吾が屋前の なでしこの花吾が屋前の なでしこの花 盛なり 手折りて一目 見せむ兒もがも原文・訳・解説を読む 万葉集・1507〜1509番いかといかと ある吾が屋前にいかといかとある吾が屋前に 百枝刺し生ふる橘 玉に貫く五月を近み あえぬがに花咲きにけり 朝に日に出で見るごとに 氣の緒に吾が念ふ妹に まそ鏡淸き月夜に ただ一目見せむまでには 散りこすな努といひつつ 幾許も吾が守るものを 慨きや醜ほととぎす 曉のうら悲しきに 追へど追へどなほも來鳴きて 徒らに地に散らせば 術を無み攀ぢて手折りつ見ませ吾妹子 十五夜降ち 淸き月夜に 吾妹子に 見せむと念ひし 屋前の橘 妹が見て 後も鳴かなむ ほととぎす 花橘を 地に散らしつ原文・訳・解説を読む 万葉集・1510番瞿麥は 咲きて散りぬと瞿麥は 咲きて散りぬと 人は言へど 吾が標めし野の 花にあらめやも原文・訳・解説を読む 万葉集・1566〜1569番ひさかたの 雨間もおかずひさかたの 雨間もおかず 雲隱り 鳴きぞ行くなる 早田雁がね 雲隱り 鳴くなる雁の 去きて居む 秋田の穗立 繁くし念ほゆ 雨隱り 情鬱悒み 出で見れば 春日の山は 色づきにけり 雨晴れて 淸く照りたる この月夜 また更にして 雲な棚引き原文・訳・解説を読む 万葉集・1572番吾が屋戸の 草花が上の吾が屋戸の 草花が上の 白露を 消たずて玉に 貫くものにもが原文・訳・解説を読む 万葉集・1596番妹が家の 門田を見むと妹が家の 門田を見むと うち出來し 情もしるく 照る月夜かも原文・訳・解説を読む 万葉集・1597〜1599番秋の野に 咲ける秋萩秋の野に 咲ける秋萩 秋風に 靡ける上に 秋の露おけり さを鹿の 朝立つ野邊の 秋萩に 玉と見るまで おける白露 さを鹿の 胸別にかも 秋萩の 散り過ぎにける 盛かも去ぬる原文・訳・解説を読む 万葉集・1602〜1603番山彦の 相響むまで山彥の 相響むまで 妻戀に 鹿鳴く山邊に 獨のみして この頃の 朝けに聞けば あしひきの 山を響もし さを鹿鳴くも原文・訳・解説を読む 万葉集・1605番高圓の 野邊の秋萩高圓の 野邊の秋萩 この頃の 曉露に 咲きにけむかも原文・訳・解説を読む 万葉集・1619〜1620番玉桙の 道は遠けど玉桙の 道は遠けど はしきやし 妹をあひ見に 出でてぞ吾が來し あらたまの 月立つまでに 來まさねば 夢にし見つつ 思ひぞ吾がせし原文・訳・解説を読む 万葉集・1627〜1628番吾が屋前の 時じき藤の吾が屋前の 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が咲容を 吾が屋前の 萩の下葉は 秋風も いまだ吹かねば 斯くぞ黃變でる原文・訳・解説を読む 万葉集・1629〜1630番ねもころに 物を念へばねもころに物を念へば 言はむ術爲む術も無し 妹と吾が手携はりて 朝には庭に出で立ち 夕には床うち拂ひ 白妙の袖さし交へて さ寝し夜や常にありける あしひきの山鳥こそは 峯向ひに嬬問すと云へ 現身の人なる我や 何すとか一日一夜も 離り居て嘆き戀ふらむ 此念へば胸こそ痛め 其故に情和ぐやと 高圓の山にも野にも うち行きて遊び往けど 花のみ匂ひてあれば 見るごとにまして思ほゆ いかにして忘れむものぞ戀とふものを 高圓の 野邊の容花 おもかげに 見えつつ妹は 忘れかねつも原文・訳・解説を読む 万葉集・1631番今造る 久邇の京に今造る 久邇の京に 秋の夜の 長きに獨 宿るが苦しさ原文・訳・解説を読む 万葉集・1632番あしひきの 山邊に居りてあしひきの 山邊に居りて 秋風の 日に日に吹けば 妹をしぞ念ふ原文・訳・解説を読む 万葉集・1663番沫雪の 庭に零りしき沫雪の 庭に零りしき 寒き夜を 手枕纏かず 一人かも宿む原文・訳・解説を読む 万葉集・3853〜3854番石麻呂に 吾物申す石麻呂に 吾物申す 夏瘦に 良しといふ物ぞ 鰻漁り食せ 瘦す瘦すも 生けらばあらむを 將や將 鰻を漁ると 河に流るな原文・訳・解説を読む 万葉集・3900番織女し 船乘りすらし織女し 船乘りすらし まそかがみ 淸き月夜に 雲立ち渡る原文・訳・解説を読む 万葉集・3901〜3906番み冬つぎ 春はきたれどみ冬つぎ 春はきたれど 梅の花 君にしあらねば 折る人もなし 梅の花 み山と繁に 有りともや 斯くのみ君は 見れど飽かにせむ 春雨に 萌えし楊か 梅の花 ともに後れぬ 常の物かも 梅の花 何時は折らじと 厭はねど 咲の盛は 惜しきものなり 遊ぶ內の 樂しき庭に 梅柳 折りかざしてば 思無みかも 御苑生の 百木の梅の 散る花の 天に飛びあがり 雪と降りけむ原文・訳・解説を読む 万葉集・3911〜3913番あしひきの 山邊に居ればあしひきの 山邊に居れば ほととぎす 木の間立ち潛き 鳴かぬ日はなし ほととぎす 何の心ぞ 橘の 珠貫く月し 來鳴きとよむる ほととぎす あふちの枝に 行きて居ば 花は散らむな 珠と見るまで原文・訳・解説を読む 万葉集・3916〜3921番橘の にほへる香かも橘の にほへる香かも ほととぎす 鳴く夜の雨に うつろひぬらむ ほととぎす 夜音なつかし 網ささば 花は過ぐとも 離れずか鳴かむ 橘の にほへる苑に ほととぎす 鳴くと人告ぐ 網ささましを あをによし 奈良の都は 古りぬれど もとほととぎす 鳴かずあらなくに うづら鳴く 古しと人は おもへれど 花橘の にほふこの宿 杜若 衣に摺りつけ 丈夫の きそひ獵する 月は來にけり原文・訳・解説を読む 万葉集・3926番大宮の 内にも外にも大宮の 內にも外にも 光るまで 零らす白雪 見れど飽かぬかも原文・訳・解説を読む 万葉集・3957〜3959番天離る 鄙治めにと天離る鄙治めにと 大王の任のまにまに 出でて來し吾を送ると あをによし奈良山過ぎて 泉河淸き河原に 馬とどめ別れし時に 好く去きて吾歸り來む 平けく齋ひて待てと 語らひて來し日の極 玉桙の道をた遠み 山河の隔りてあれば 戀しけく日長きものを 見まく欲り念ふ間に 玉梓の使の來れば 嬉しみと吾が待ち問ふに およづれのたはこととかも はしきよしな弟の命 何しかも時しはあらむを はた薄穗に出る秋の 萩の花にほへる屋戸を 朝庭に出で立ち平し 夕庭に踏み平げず 佐保のうちの里を行き過ぎ あしひきの山の木末に 白雲に立ち棚引くと吾に告げつる ま幸くと 言ひてしものを 白雲に 立ち棚引くと 聞けば悲しも かからむと かねて知りせば 越の海の 荒磯の波も 見せましものを原文・訳・解説を読む 万葉集・3960〜3961番庭に降る 雪は千重しく庭に降る 雪は千重しく 然のみに 思ひて君を 吾が待たなくに 白浪の 寄する磯廻を こぐ船の 楫取る間なく 思ほえし君原文・訳・解説を読む 万葉集・3962〜3964番大王の 任のまにまに大王の任のまにまに 丈夫の心振り起し あしひきの山坂越えて 天放る鄙に下り來 息だにも未だ休めず 年月もいくらもあらぬに うつせみの世の人なれば うち靡き床に反倒し 痛けくの日に日に益る たらちねの母の命の 大船のゆくらゆくらに 下戀に何時かも來むと 待たすらむ情不樂しく 愛しきよし妻の命も 明け來れば門に倚り立ち 衣手を折り反しつつ 夕されば床打ち拂ひ ぬばたまの黑髮敷きて いつしかと嘆かすらむぞ 妹も兄も若き兒どもは 彼此に騷ぎ泣くらむ 玉桙の道をた遠み 間使も遣るよしも無し 思ほしき言傳て遣らず 戀ふるにし情は燃えぬ たまきはる命惜しけど 爲むすべのたどきを知らに 斯くしてや荒夫すらに嘆き臥せらむ 世間は かずなきものか 春花の 散りのまがひに 死ぬべきおもへば 山河の 退方を遠み 愛しきよし 妹を相見ず 斯くや嘆かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・3965〜3966番春の花 今は盛に春の花 今は盛に 匂ふらむ 折りて揷頭さむ 手力もがも うぐひすの 鳴き散らすらむ 春の花 いつしか君と 手折りかざさむ原文・訳・解説を読む 万葉集・3969〜3972番大君の 任のまにまに大君の任のまにまに 級離る越を治めに 出でて來し丈夫吾すら 世の中の常し無ければ うち靡き床に反倒し 痛けくの日に日に增せば 悲しけく此處に思ひ出 苛なけく其處に念ひ出 歎くそら安けなくに 思ふそら苦しきものを あしひきの山來隔りて 玉桙の道の遠けば 間使も遣るよしも無み 思ほしき言も通はず たまきはる命惜しけど 爲むすべのたどきを知らに 籠り居て念ひ嘆かひ なぐさむる心はなしに 春花の咲ける盛に 思ふどち手折りかざさず 春の野の茂み飛びぐく うぐひすの聲だに聞かず をとめ等が春菜摘ますと くれなゐの赤裳の裾の 春雨ににほひひづちて 通ふらむ時の盛を いたづらに過ぐし遣りつれ 思ばせる君が心を うるはしみ此の終夜に 寐も寢ずに今日も終らに戀ひつつぞ居る あしひきの 山櫻花 ひと目だに 君とし見てば 吾戀ひめやも 山吹の 茂み飛びぐく 鶯の 聲を聞くらむ 君は羨しも 出で立たむ 力を無みと 籠り居て 君に戀ふるに 心神もなし原文・訳・解説を読む 万葉集・3976〜3977番さけりとも 知らずしあらばさけりとも 知らずしあらば 默もあらむ 此の山吹を 見せつつもとな 葦垣の 外にも君が 倚り立たし 戀ひけれこそは 夢に見えけれ原文・訳・解説を読む 万葉集・3978〜3982番妹も吾も 心は同じ妹も吾も心は同じ 副へれどいや懷しく 相見れば常初花に 情ぐし眼ぐしもなしに 愛しけやし吾が奥妻 大王の命かしこみ あしひきの山越え野行き 天離る鄙治めにと 別れ來し其の日の極 あらたまの年往き返り 春花のうつろふまでに 相見ねば甚もすべなみ 敷妙の袖反しつつ 宿る夜闕ちず夢には見れど 現にし直にあらねば 戀しけく千重に積りぬ 近からばかへりにだにも うち行きて妹が手枕 指し交へて寢ても來ましを 玉ほこの路はし遠く 關さへに隔りてあれこそ よしゑやしよしはあらむぞ ほととぎす來鳴かむ月に いつしかも早くなりなむ 卯の花のにほへる山を 外のみもふり放け見つつ 淡海路にい行きのり立ち あをによし奈良の吾家に 奴要鳥のうら嘆しつつ 下戀に思ひうらぶれ 門に立ち夕占問ひつつ 吾を待つと寢すらむ妹を逢ひて早見む あらたまの 年かへるまで 相見ねば 心も萎ぬに 思ほゆるかも ぬばたまの 夢にはもとな 相見れど 直にあらねば 戀ひ止まずけり あしひきの 山來隔りて 遠けども こころし行けば 夢に見えけり 春花の うつろふまでに 相見ねば 月日數みつつ 妹待つらむぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・3983〜3984番あしひきの 山も近きをあしひきの 山も近きを ほととぎす 月立つまでに 何か來鳴かぬ 玉に貫く 花橘を 乏しみし 此の我が里に 來鳴かずあるらし原文・訳・解説を読む 万葉集・3985〜3987番射水河 い行き廻れる射水河い行き廻れる 玉くしげ二上山は 春花の咲ける盛に 秋の葉のにほへる時に 出で立ちてふり放け見れば 神故や許多貴き 山故や見が欲しからむ 皇神の裾廻の山の 澁溪の埼の荒磯に 朝なぎに寄する白波 夕なぎに滿ち來る潮の いや增しに絶ゆること無く 古ゆ今の現に 斯くしこそ見る人ごとに懸けて偲ばめ 澁溪の 埼の荒磯に 寄する波 いやしくしくに いにしへ思ほゆ 玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の 聲の戀しき 時は來にけり原文・訳・解説を読む 万葉集・3988番ぬばたまの 月に向ひてぬばたまの 月に向ひて ほととぎす 鳴く音はるけし 里遠みかも原文・訳・解説を読む 万葉集・3989〜3990番奈呉の海の 沖つ白波奈呉の海の 沖つ白波 しくしくに 思ほえむかも 立ち別れなば 我が兄子は 玉にもがもな 手に纏きて 見つつ行かむを 置きて往かば惜し原文・訳・解説を読む 万葉集・3991〜3992番もののふの 八十伴の緒のもののふの八十伴の緒の 思ふどち心遣らむと 馬竝めてうちくちぶりの 白波の荒磯に寄する 澁溪の埼徘徊り 松田江の長濱過ぎて うなび河淸き瀨ごとに 鵜河立ち右往き左往き 見つれども其も飽かにと 布勢の海に船浮け居ゑて 沖邊漕ぎ邊に漕ぎ見れば 渚にはあぢむら騷ぎ 島廻には木末花咲き 許多も見の淸けきか 玉くしげ二上山に 延ふ蔦の行きは別れず 在り通ひいや毎年に 思ふどち斯くし遊ばむ今も見る如 布勢の海の 沖つ白波 在り通ひ いや每年に 見つつ偲ばむ原文・訳・解説を読む 万葉集・3999番京方に 立つ日近づく京方に 立つ日近づく 飽くまでに 相見て行かな 戀ふる日多けむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4000〜4002番天離る 鄙に名懸かす天離る鄙に名懸かす 越の中國內ことごと 山はしも繁にあれども 川はしも多に逝けども 皇神の主宰き坐す 新河のその立山に 常夏に雪降り敷きて 帶ばせる可多加比河の 淸き瀨に朝夕ごとに 立つ霧の思ひ過ぎめや 在り通ひいや每年に 外のみもふり放け見つつ 萬代の語ひ草と 未だ見ぬ人にも告げむ 音のみも名のみも聞きて羨しぶるがね 立山に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならし 可多加比の 河の瀨淸く 行く水の 絶ゆることなく 在り通ひ見む原文・訳・解説を読む 万葉集・4006〜4007番かき數ふ 二上山にかき數ふ二上山に 神さびて立てる栂の木 幹も枝も同じ常盤に 愛しきよし我が兄の君を 朝去らず會ひて言問ひ 夕されば手携はりて 射水河淸き河内に 出で立ちて我が立ち見れば 東風甚くし吹けば 湊には白波高み 妻喚ぶと洲鳥は騷ぐ 葦刈ると海人の小舟は 入江漕ぐ楫の音高し 其をしもあやにともしみ 偲びつつ遊ぶ盛を 天皇の食國なれば 御言持ち立ち別れなば 後れたる君はあれども 玉ほこの道行く我は 白雲の棚引く山を 磐根蹐み越え隔りなば 戀しけく日の長けむぞ 其思へば心し痛し ほととぎす聲にあへ貫く 玉にもが手に纏き持ちて 朝夕に見つつ行かむを置きて行かば惜し 我が兄子は 玉にもがもな ほととぎす 聲にあへ貫き 手に纏きて行かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4011〜4015番大王の 遠の朝廷ぞ大王の遠の朝廷ぞ み雪降る越と名に負へる 天ざかる鄙にしあれば 山高み河とほじろし 野を廣み草こそ茂き 鮎走る夏の盛と 島つ鳥鵜養が伴は 行く河の淸き瀨ごとに 篝さしなづさひ上る 露霜の秋に至れば 野も多に鳥多集けりと ますらをの伴いざなひて 鷹はしも數多あれども 矢形尾の我が大黑に 白塗の鈴取り附けて 朝獵に五百つ鳥立て 夕獵に千鳥踏み立て 追ふ每に免すことなく 手放れも還來もか易き これを除きて又はあり難し さ竝べる鷹は無けむと 情には思ひ誇りて 笑ひつつ渡る間に 狂れたる醜つ翁の 言だにも吾には告げず との曇り雨の降る日を 鳥狩すと名のみを告りて 三島野を背向に見つつ 二山の上飛び越えて 雲隱り翔り去にきと 歸り來て咳れ告ぐれ 招くよしのそこに無ければ 言ふすべのたどきを知らに 心には火さへ燃えつつ 思ひ戀ひ息衝き餘り けだしくも逢ふことありやと あしひきの彼面此面に 鳥網張り守部を居ゑて ちはやぶる神の社に 照る鏡倭文に取り添へ 乞ひ祈みて吾が待つ時に 少女らが夢に告ぐらく 汝が戀ふるその秀つ鷹は 松田江の濱行き暮らし 鯯漁る氷見の江過ぎて 多故の島飛び徘徊り 葦鴨の多集く舊江に 一昨日も昨日も在りつ 近くあらば今二日許 遠くあらば七日のうちは 過ぎめやも來なむ吾が兄子 懇にな戀ひそよとぞ夢に告げつる 矢形尾の 鷹を手に据ゑ 三島野に 獵らぬ日數多く 月ぞ經にける 二上の 彼面此面に 網さして 吾が待つ鷹を 夢に告げつも 松反り しびにてあれかも さ山田の 翁が其の日に 求め逢はずけむ 情には ゆるぶことなく 須加の山 すがなくのみや 戀ひ渡りなむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4017〜4020番東風 いたく吹くらし東風 いたく吹くらし 奈呉の海人の 釣する小舟 漕ぎ隱る見ゆ 港風 寒く吹くらし 奈呉の江に 妻喚び交し 鶴さはに鳴く 天ざかる 鄙とも著く ここだくも 繁き戀かも 和ぐる日も無く 越の海の 信濃の濱を 行き暮し 長き春日も 忘れておもへや原文・訳・解説を読む 万葉集・4021番雄神河 くれなゐにほふ雄神河 くれなゐにほふ 少女らし 葦附採ると 瀨に立たすらし原文・訳・解説を読む 万葉集・4022番鸕坂河 渡る瀬多み鸕坂河 渡る瀨多み この我が馬の 足搔の水に 衣ぬれにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4023番婦負河の 早き瀬ごとに婦負河の 早き瀨ごとに 篝さし 八十伴の男は 鵜河立ちけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4024番立山の 雪し來らしも立山の 雪し來らしも 延槻の 河の渡瀨 鐙浸かすも原文・訳・解説を読む 万葉集・4025番之乎路から 直越え來れば之乎路から 直越え來れば 羽咋の海 朝なぎしたり 船楫もがも原文・訳・解説を読む 万葉集・4026〜4027番鳥總立て 船木伐るといふ鳥總立て 船木伐るといふ 能登の島山 今日見れば 木立繁しも 幾代神びぞ 香島より 熊來をさして 漕ぐ船の 楫取る間なく 京師し思ほゆ原文・訳・解説を読む 万葉集・4028番妹に逢はず 久しくなりぬ妹に逢はず 久しくなりぬ 饒石河 淸き瀨ごとに 水占はへてな原文・訳・解説を読む 万葉集・4029番珠洲の海に 朝びらきして珠洲の海に 朝びらきして 漕ぎ來れば 長濱の灣に 月照りにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4030番うぐひすは 今は鳴かむとうぐひすは 今は鳴かむと 片待てば 霞たなびき 月は經につつ原文・訳・解説を読む 万葉集・4031番中臣の 太祝詞言中臣の 太祝詞言 言ひ祓へ 贖ふいのちも 誰がために汝原文・訳・解説を読む 万葉集・4037番乎敷の埼 漕ぎ徘徊り乎布の埼 漕ぎ徘徊り 終日に 見とも飽くべき 浦にあらなくに原文・訳・解説を読む 万葉集・4043番明日の日の 布勢の浦廻の明日の日の 布勢の浦廻の 藤浪に 蓋し來鳴かず 散らしてむかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4044〜4045番濱邊より 我が鞭ち行かば濱邊より 我が鞭ち行かば 海邊より 迎へも來ぬか 海人の釣舟 沖邊より 滿ち來る潮の いや增しに 我が思ふ君が 御船かも彼原文・訳・解説を読む 万葉集・4063〜4064番常世物 この橘の常世物 この橘の いや照りに 我大皇は 今も見る如 大皇は 常盤に在さむ 橘の 殿のたちばな 常照りにして原文・訳・解説を読む 万葉集・4070番一本の なでしこ植ゑし一本の なでしこ植ゑし 其の心 誰に見せむと 思ひ初めけむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4071〜4072番級離る 越の君らと級離る 越の君らと 斯くしこそ 楊蘰き 樂しく遊ばめ ぬばたまの 夜渡る月を 幾夜經と 數みつつ妹は 我待つらむぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・4076〜4079番あしひきの 山は無くもがあしひきの 山は無くもが 月見れば 同じき里を 心隔てつ 我が兄子が 古き垣内の 櫻花 いまだ含めり 一目見に來ね 戀ふと云ふは えも名づけたり 言ふすべの たづきも無きは 我身なりけり 三島野に 霞たなびき 然すがに 昨日も今日も 雪は降りつつ原文・訳・解説を読む 万葉集・4082〜4084番天ざかる 鄙の奴に天ざかる 鄙の奴に 天人し 斯く戀ひすらば 生けるしるしあり 常の戀 いまだ止まぬに 都より 馬にこひ來ば 荷ひ堪へむかも 曉に 名告り鳴くなる ほととぎす いやめづらしく 思ほゆるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4085番燒刀を 礪波の關に燒刀を 礪波の關に 明日よりは 守部遣り副へ 君を留めむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4089〜4092番高御座 天の日嗣と高御座天の日嗣と 天皇の神の命の 聞し食す國のまほらに 山をしもさはに多みと 百鳥の來居て鳴く聲 春されば聞の愛しも いづれをか別きてしぬばむ 卯の花の咲く月立てば 愛しく鳴くほととぎす 菖蒲草珠貫くまでに 晝暮し夜亘し聞けど 聞くごとに心つごきて うち嘆きあはれの鳥と言はぬ時なし 行方なく あり渡るとも ほととぎす 鳴きし渡らば 斯くやしぬばむ 卯の花の 共にし鳴けば ほととぎす いやめづらしも 名告り鳴くなべ ほととぎす いと嫉けくは 橘の 花散る時に 來鳴き響むる原文・訳・解説を読む 万葉集・4093番英遠の浦に 寄する白波英遠の浦に 寄する白波 いや增しに 立ち重き寄せ來 東風を疾みかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4094〜4097番葦原の 瑞穂の國を葦原の瑞穗の國を 天降りしらしめしける 天皇の神の命の 御代重ね天の日嗣と しらし來る君の御代御代 敷きませる四方の國には 山河を廣み淳みと 奉る御調寶は 數へ得ず盡しも兼ねつ 然れども吾大王の 諸人を誘ひ給ひ 善き事を始め給ひて 金かも樂しけくあらむと 思ほして下惱ますに 鷄が鳴く東の國の 陸奧の小田なる山に 金ありと奏し賜へれ 御心を明らめ給ひ 天地の神相納受ひ 皇御祖の御靈助けて 遠き代にかかりし事を 朕が御世に顯してあれば 食國は榮えむものと 神ながら思ほし召して もののふの八十伴の雄を まつろへのむけのまにまに 老人も女童兒も 其が願ふ心足ひに 撫で給ひ治め給へば 此をしもあやに貴み 嬉しけく愈思ひて 大伴の遠つ神祖の 其の名をば大來目主と 負ひ持ちて仕へし官 海行かば水漬く屍 山行かば草生す屍 大皇の邊にこそ死なめ 顧みは爲じと言立 丈夫の淸き彼の名を 古よ今の現に 流さへる祖の子等ぞ 大伴と佐伯の氏は 人の祖の立つる言立 人の子は祖の名絶たず 大君に奉仕ふものと 言ひ繼げる言の職ぞ 梓弓手に取り持ちて 劍大刀腰に取り佩き 朝守り夕の守りに 大王の御門の守護 我をおきてまた人はあらじと 彌立て思ひし增る 大皇の御言の幸の聞けば貴み 丈夫の 心思ほゆ 大君の 御言の幸を 聞けば貴み 大伴の 遠つ神祖の 奧津城は 著く標立て 人の知るべく 天皇の 御代榮えむと 東なる みちのく山に 金花咲く原文・訳・解説を読む 万葉集・4098〜4100番高御座 天の日嗣と高御座天の日嗣と 天の下知らしめしける 天皇の神の命の 畏くも始め給ひて 貴くも定め給へる み吉野のこの大宮に 在り通ひ見し給ふらし もののふの八十伴の雄も 己が負へる己が名負ひ 大王の任のまくまく 此の河の絶ゆることなく 此の山の彌つぎつぎに 斯くしこそ仕へ奉らめいや遠永に いにしへを 思ほすらしも 我大君 吉野の宮を 在り通ひ見す もののふの 八十氏人も 吉野河 絶ゆることなく 仕へつつ見む原文・訳・解説を読む 万葉集・4101〜4105番珠洲の海人の 沖つ御神に珠洲の海人の沖つ御神に い渡りて潛き採ると云ふ 鰒珠五百箇もがも 愛しきよし妻の命の 衣手の別れし時よ ぬばたまの夜床片さり 朝寢髮搔きも梳らず 出でて來し月日數みつつ 歎くらむ心慰よ ほととぎす來鳴く五月の 菖蒲草花橘に 貫き交へ蘰にせよと包みて遣らむ 白玉を 包みて遣らば 菖蒲草 花橘に 合へも貫くがね 沖つ島 い行き渡りて 潛くちふ 鰒珠もが 包みて遣らむ 吾妹子が 心慰に 遣らむため 沖つ島なる 白玉もがも 白玉の 五百箇集を 手に結び 遣せむ海人は むかしくもあるか原文・訳・解説を読む 万葉集・4106〜4109番大己貴 少彦名の大己貴少彥名の 神代より言ひ繼ぎけらく 父母を見れば尊く 妻子見れば愛しく愍し うつせみの世の理と 如此樣に言ひけるものを 世の人の立つる言立 ちさの花咲ける盛に 愛しきよしその妻の兒と 朝宵に笑みみ笑まずも うち歎き語りけまくは 永久に斯くしもあらめや 天地の神こと依せて 春花の盛もあらむと 待たしけむ時の盛ぞ 離り居て嘆かす妹が 何時しかも使の來むと 待たすらむ心不樂しく 南風吹き雪消まさりて 射水河流る水沫の よるべ無み左夫流その兒に 紐の緒のいつがり合ひて 鳰鳥の二人雙び坐 奈呉の海の沖を深めて 惑はせる君が心の術もすべ無さ あをによし 奈良に在る妹が 高高に 待つらむ心 然にはあらじか 里人の 見る目はづかし 左夫流兒に 惑はす君が 宮出後風 くれなゐは うつろふものぞ 橡の なれにし衣に なほ若かめやも原文・訳・解説を読む 万葉集・4110番左夫流兒が いつきし殿に左夫流兒が いつきし殿に 鈴掛けぬ 早馬下れり 里もとどろに原文・訳・解説を読む 万葉集・4111〜4112番かけまくも あやにかしこしかけまくもあやにかしこし 皇神祖の神の大御代に 田道間守常世に渡り 八矛持ち參來出し 非時の香の木の實を かしこくも遺し給へれ 國も狹に生ひ立ち榮え 春されば孫枝萌いつつ ほととぎす鳴く五月には 初花を枝に手折りて 少女等に裹にも遣りみ 白妙の袖にも扱き入 香細しみ措きて枯らしみ 熟ゆる實は玉に貫きつつ 手に纏きて見れども飽かず 秋づけば時雨の雨零り あしひきの山の木末は 紅ににほひ散れども 橘の成れる其の實は 直照りに彌見が欲しく み雪降る冬に到れば 霜置けどもその葉も枯れず 常盤なすいや榮ばえに 然れこそ神の御代より 宜しなべこの橘を 非時の香の木の實と名づけけらしも 橘は 花にも實にも 見つれども いや時じくに 猶し見が欲し原文・訳・解説を読む 万葉集・4113〜4115番大君の 遠の朝廷と大君の遠の朝廷と 任き給ふ官のまにま み雪降る越に下り來 あらたまの年の五年 敷妙の手枕纏かず 紐解かず獨寢をすれば 鬱悒みと情慰に なでしこを屋戸に蒔き生し 夏の野のさ百合引き植ゑて 咲く花を出で見る毎に なでしこが其の花妻に さ百合花後も逢はむと 慰むる心し無くば 天ざかる鄙に一日も在るべくもあれや なでしこが 花見る毎に をとめ等が ゑまひのにほひ 思ほゆるかも さ百合花 後も逢はむと 下延ふる 心しなくば 今日も經めやも原文・訳・解説を読む 万葉集・4116〜4118番大君の 任のまにまに大君の任のまにまに 執り持ちて仕ふる國の 年の內の事かたね持ち 玉ほこの道に出で立ち 岩根踏み山越え野行き 都べに參し我が兄を あらたまの年往き還り 月かさね見ぬ日さ數多み 戀ふるそら安くしあらねば ほととぎす來鳴く五月の 菖蒲草蓬蘰き 酒宴遊び慰れど 射水河雪消溢りて 逝く水のいや增しにのみ 鶴が鳴く奈呉江の菅の 懃に思ひ結ぼれ 歎きつつ我が待つ君が 事畢り歸り罷りて 夏の野のさ百合の花の 花咲に莞爾に笑みて 逢はしたる今日を始めて 鏡なす斯くし常見む面變りせず 去年の秋 相見しまにま 今日見れば 面彌珍らし 都方人 斯くしても 相見るものを 少くも 年月經れば 戀しけれやも原文・訳・解説を読む 万葉集・4119番いにしへよ 偲びにければいにしへよ 偲びにければ ほととぎす 鳴く聲聞きて 戀しきものを原文・訳・解説を読む 万葉集・4120〜4121番見まく欲り 思ひしなべに見まく欲り 思ひしなべに 蘰掛け かぐはし君を 相見つるかも 朝參の 君が姿を 見ず久に 鄙にし住めば 吾戀ひにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4122〜4123番天皇の 敷きます國の天皇の敷きます國の 天の下四方の道には 馬の蹄い盡す極 船の舳のい泊つるまでに 古よ今の現に 萬調奉る長上と 作りたる其の農業を 雨降らず日の重なれば 植ゑし田も蒔きし畠も 朝ごとに凋み枯れ行く 其を見れば心を痛み 綠兒の乳乞ふがごとく 天つ水仰ぎてぞ待つ あしひきの山のたをりに 彼の見ゆる天の白雲 海神の沖つ宮邊に 立ち渡りとの曇り合ひて雨も賜はね この見ゆる 雲ほびこりて との曇り 雨も降らぬか 心足ひに原文・訳・解説を読む 万葉集・4124番我が欲りし 雨は降り來ぬ我が欲りし 雨は降り來ぬ 斯くしあらば 言擧せずとも 年は榮えむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4125〜4127番天照す 神の御代より天照す神の御代より 安の河中に隔てて 向ひ立ち袖振り交し 生の緒に歎かす子ら 渡守船も設けず 橋だにも渡してあらば その上ゆもい行き渡らし 携はりうながけり居て 思ほしきことも語らひ 慰むる心はあらむを 何しかも秋にしあらねば 言問のともしき子ら 現身の世の人我も 此處をしもあやにくすしみ 往き更る毎年ごとに 天の原ふり放け見つつ言ひ繼ぎにすれ 天の河 橋渡せらば 其の上ゆも い渡らさむを 秋にあらずとも 安の河 こ向ひ立ちて 年の戀 日長き子らが 妻問の夜ぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・4134番雪の上に 照れる月夜に雪の上に 照れる月夜に 梅の花 折りて贈らむ 愛しき兒もがも原文・訳・解説を読む 万葉集・4135番我が兄子が 琴取るなべに我が兄子が 琴取るなべに 常人の 云ふ歎しも いや重き益すも原文・訳・解説を読む 万葉集・4136番あしひきの 山の木末のあしひきの 山の木末の 寄生取りて 插頭しつらくは 千年壽ぐとぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・4137番正月たつ 春のはじめに正月たつ 春のはじめに 斯くしつつ 相し笑みてば 時じけめやも原文・訳・解説を読む 万葉集・4138番やぶなみの 里に宿借りやぶなみの 里に宿借り 春雨に 隱り障むと 妹に告げつや原文・訳・解説を読む 万葉集・4139〜4140番春の苑 くれなゐにほふ春の苑 くれなゐにほふ 桃の花 した照る道に 出で立つ媙嬬 吾が園の 李の花か 庭に落る はだれのいまだ 殘りたるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4141番春まけて 物がなしきに春まけて 物がなしきに さ夜更けて 羽ぶき鳴く鴫 誰が田にか住む原文・訳・解説を読む 万葉集・4142番春の日に 張れる柳を春の日に 張れる柳を 取り持ちて 見れば京の 大路おもほゆ原文・訳・解説を読む 万葉集・4143番もののふの 八十をとめ等がもののふの 八十をとめ等が 挹み亂ふ 寺井の上の 堅香子の花原文・訳・解説を読む 万葉集・4144〜4145番燕來る 時になりぬと燕來る 時になりぬと 雁がねは 本郷思ひつつ 雲隱り喧く 春設けて 斯く歸るとも 秋風に 黃葉づる山を 超え來ざらめや原文・訳・解説を読む 万葉集・4146〜4147番夜ぐたちに 寢覺めて居れば夜ぐたちに 寢覺めて居れば 河瀨尋め 情も萎ぬに 鳴く千鳥かも 夜ぐたちて 鳴く河千鳥 うべしこそ 昔の人も しぬび來にけれ原文・訳・解説を読む 万葉集・4148〜4149番椙の野に さ躍る雉椙の野に さ躍る雉 いちじろく 啼にしも哭かむ 隱妻かも あしひきの 八峯の雉 なき響む 朝けの霞 見ればかなしも原文・訳・解説を読む 万葉集・4150番朝床に 聞けば遙けし朝床に 聞けば遙けし 射水河 朝漕ぎしつつ 唱ふ船人原文・訳・解説を読む 万葉集・4151〜4153番今日の爲と 思ひて標めし今日の爲と 思ひて標めし あしひきの 峯の上の櫻 かく咲きにけり 奧山の 八峯の椿 つばらかに 今日は暮さね 丈夫の徒 漢人も 栰浮べて 遊ぶとふ 今日ぞ我が兄子 花蘰せよ原文・訳・解説を読む 万葉集・4154〜4155番あしひきの 山坂越えてあしひきの山坂越えて 去き更る年の緒長く しなざかる越にし住めば 大王の敷きます國は 都をも此間も同じと 心にはおもふものから 語り放け見放くる人眼 乏しみと思し繁し 其ゆゑに情和ぐやと 秋づけば萩咲きにほふ 石瀨野に馬だき行きて 遠近に鳥踏み立て 白塗の小鈴もゆらに 合せ遣りふり放け見つつ 憤る心の中を 思ひ伸べ嬉しびながら 枕附く妻屋のうちに 鳥座結ひすゑてぞ我が飼ふ眞白斑の鷹 矢形尾の 眞白の鷹を 屋戸に据ゑ 搔き撫で見つつ 飼はくし好しも原文・訳・解説を読む 万葉集・4156〜4158番あらたまの 年往き更りあらたまの年往き更り 春されば花咲き匂ふ あしひきの山下響み 落ち激ち流る辟田の 河の瀨に年魚兒さ走る 島つ鳥鸕養伴なへ 篝さしなづさひ行けば 吾妹子が形見がてらと 紅の八入に染めて おこせたる衣の裾も徹りて濕れぬ くれなゐの 衣にほはし 辟田河 絶ゆることなく 吾かへりみむ 毎年に 鮎し走らば 辟田河 鸕八頭潛けて 河瀨たづねむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4159番磯の上の 都萬麻を見れば磯の上の 都萬麻を見れば 根を延へて 年深からし 神さびにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4160〜4162番天地の 遠き始よ天地の遠き始よ 俗中は常無きものと 語り續ぎながらへ來れ 天の原ふり放け見れば 照る月も盈昃しけり あしひきの山の木末も 春されば花咲き匂ひ 秋づけば露霜負ひて 風交り紅葉散りけり 現身も斯くのみならし 紅の色もうつろひ ぬばたまの黑髮變り 朝の咲暮變らひ 吹く風の見えぬが如く 逝く水の止らぬ如く 常も無く移ろふ見れば 行潦流るる涙止みかねつも 言問はぬ 木すら春咲き 秋づけば もみぢ散らくは 常を無みこそ 現身の 常無き見れば 世のなかに 情つけずて 念ふ日ぞ多き原文・訳・解説を読む 万葉集・4163番妹が袖 われまくらかむ妹が袖 われまくらかむ 河の瀨に 霧立ち渡れ さ夜ふけぬとに原文・訳・解説を読む 万葉集・4164〜4165番ちちの實の 父の命ちちの實の父の命 柞葉の母の命 凡ろかに情盡して 念ふらむその子なれやも 丈夫や空しくあるべき 梓弓末振り起し 投矢以ち千尋射渡し 劒刀腰に取り佩き あしひきの八峯踏み越え 差任くる情障らず 後の代の語り繼ぐべく名を立つべしも 丈夫は 名をし立つべし 後の代に 聞き繼ぐ人も 語り續ぐがね原文・訳・解説を読む 万葉集・4166〜4168番毎時に いや珍らしく毎時にいや珍しく 八千種に草木花咲き 喧く鳥の音もかはらふ 耳に聞き眼に視るごとに うち嘆き萎えうらぶれ 偲びつつあり來る間に 木の晩闇四月し立てば 夜隱りに鳴く霍公鳥 古昔より語り繼ぎつる 鶯の現し眞子かも 菖蒲花橘を をとめ等が珠貫くまでに あかねさす晝はしめらに あしひきの八丘飛び越え ぬばたまの夜はすがらに 曉の月に向ひて 往き還り喧き響むれどなどか飽き足らむ 毎時に いや珍しく 咲く花を 折りも折らずも 見らくし好しも 毎年に 來喧くものゆゑ 霍公鳥 聞けばしぬばく 逢はぬ日を多み原文・訳・解説を読む 万葉集・4169〜4170番霍公鳥 來鳴く五月に霍公鳥來鳴く五月に 咲き匂ふ花橘の 香はしき親の御言 朝暮に聞かぬ日數多く 天離る夷にし居れば あしひきの山のたをりに 立つ雲を外のみ見つつ 歎くそら安けなくに 念ふそら苦しきものを 奈呉の海人の潛き取るとふ 眞珠の見が欲し御面 直向ひ見む時までは 松柏の榮えいまさね尊き吾が君 白玉の 見が欲し君を 見ず久に 夷にし居れば 生けるともなし原文・訳・解説を読む 万葉集・4171〜4172番常人も 起きつつ聞くぞ常人も 起きつつ聞くぞ 霍公鳥 このあかときに 來喧け初聲 ほととぎす 來鳴き響まば 草取らむ 花橘を 屋外には植ゑずて原文・訳・解説を読む 万葉集・4173番妹を見ず 越の國邊に妹を見ず 越の國邊に 年經れば 吾が情神の 和ぐる日もなし原文・訳・解説を読む 万葉集・4174番春の裏の 樂しき終へば春の裏の 樂しき終へば 梅の花 手折りを來つつ 遊ぶにあるべし原文・訳・解説を読む 万葉集・4175〜4176番ほととぎす 今來喧き始むほととぎす 今來喧き始む 菖蒲 蘰くまでに 離るる日あらめや 我が門ゆ 喧き過ぎ渡る 霍公鳥 いや懷かしく 聞けど飽き足らず原文・訳・解説を読む 万葉集・4177〜4179番我が兄子と 手携はりて我が兄子と手携はりて 曉來れば出で立ち向ひ 暮さればふり放け見つつ 念ひ暢べ見和ぎし山に 八峯には霞たなびき 谿邊には椿花咲く うらがなし春し過ぐれば ほととぎす彌頻き喧きぬ 獨のみ聞けば不怜しも 君と吾隔てて戀ふる 礪波山飛び越え行きて 明け立たば松の小枝に 暮さらば月に向ひて 菖蒲玉貫くまでに 鳴き響め安寢宿しめず君を惱ませ 吾のみし 聞けば不怜しも ほととぎす 丹生の山邊に い行き鳴かなも ほととぎす 夜喧をしつつ 我が兄子を 安宿な寢しめ ゆめ情あれ原文・訳・解説を読む 万葉集・4180〜4183番春過ぎて 夏來向へば春過ぎて夏來向へば あしひきの山よび響め さ夜中に鳴くほととぎす 初聲を聞けば懷かし 菖蒲花橘を 貫き交へ蘰くまでに 里響め喧き渡れども尚ししぬばゆ さ夜ふけて 曉月に 影見えて 喧くほととぎす 聞けばなつかし ほととぎす 聞けども飽かず 網取りに 獲りて懷けな 離れず鳴くがね ほととぎす 飼ひ通せらば 今年經て 來向ふ夏は 先づ喧きなむを原文・訳・解説を読む 万葉集・4185〜4186番現身は 戀を繁みと現身は戀を繁みと 春設けて念繁けば 引き攀ぢて折りも折らずも 見む毎に情和ぎむと 繁山の谿邊に生ふる 山吹を屋戸に引き植ゑて 朝露ににほへる花を 見る毎に念は止まず戀し繁しも 山吹を 屋戸に植ゑては 見るごとに 念ひは止まず 戀こそ益れ原文・訳・解説を読む 万葉集・4187〜4188番念ふどち ますらをのこの念ふどち丈夫の 木の暗の繁き思を 見明らめ情遣らむと 布勢の海に小船連並め 眞櫂懸けい漕ぎ廻れば 乎布の浦に霞たなびき 垂姫に藤浪咲きて 濱淨く白浪騷ぎ 重重に戀は益れど 今日のみに飽き足らめやも 斯くしこそいや毎年に 春花の繁き盛に 秋の葉の黃色づる時に 在り通ひ見つつ偲ばめこの布勢の海を 藤浪の 花の盛に 斯くしこそ 浦漕ぎ廻みつつ 年に偲ばめ原文・訳・解説を読む 万葉集・4189〜4191番天離る 夷としあれば天離る夷としあれば 彼所此間も同じ心ぞ 家離り年の經ぬれば 現身は物念繁し 其故に情慰に ほととぎす喧く初聲を 橘の珠に合へ貫き 蘰きて遊ばむはしも 丈夫を伴へ立てて 叔羅河なづさひ泝り 平瀨には小網指し渡し 早瀨には水烏を潛けつつ 月に日に然し遊ばね愛しき我が兄子 叔羅河 瀨を尋ねつつ 我が兄子は 鵜河立たさね 情慰に 鵜河立ち 取らさむ鮎の 其が鰭は 吾に搔き向け 念ひし念はば原文・訳・解説を読む 万葉集・4192〜4193番桃の花 くれなゐ色に桃の花くれなゐ色に にほひたる面輪のうちに 青柳の細き眉根を 咲みまがり朝影見つつ をとめらが手に取り持たる まそ鏡二上山に 木の暗の繁き溪邊を 呼び響め朝飛び渡り 夕月夜幽けき野邊に はろばろに喧くほととぎす 立ちぐくと羽觸に散らす 藤浪の花なつかしみ 引き攀ぢて袖に扱入れつ染まば染むとも ほととぎす 鳴く羽觸にも 散りにけり 盛過ぐらし 藤浪の花原文・訳・解説を読む 万葉集・4194〜4196番ほととぎす 鳴き渡りぬとほととぎす 鳴き渡りぬと 告ぐれども 吾聞き繼がず 花は過ぎつつ 吾が幾許 慕ばく知らに ほととぎす 何方の山を 鳴きか超ゆらむ 月立ちし 日より招きつつ うち慕び 待てど來鳴かぬ 霍公鳥かも原文・訳・解説を読む 万葉集・4197〜4198番妹に似る 草と見しより妹に似る 草と見しより 吾が標めし 野邊の山吹 誰か手折りし つれも無く 離れにしものと 人はいへど 逢はぬ日數多み 念ぞ吾がする原文・訳・解説を読む 万葉集・4206番澁溪を さして吾が行く澁溪を さして吾が行く この濱に 月夜飽きてむ 馬暫し停め原文・訳・解説を読む 万葉集・4207〜4208番此間にして 背向に見ゆる此間にして背向に見ゆる 我が兄子が垣内の谿に 明けされば榛の小枝に 夕されば藤の繁みに はろばろに鳴くほととぎす 吾が屋戸の殖ゑ木橘 花に散る時を未だしみ 來鳴かなく其は怨みず 然れども谷片就きて 家居れる君が聞きつつ告げなくも憂し 吾が幾許 待てど來鳴かぬ ほととぎす 獨聞きつつ 告げぬ君かも原文・訳・解説を読む 万葉集・4211〜4212番古に ありけるわざの古にありけるわざの くすはしき事と言ひ繼ぐ 血沼壯士菟原壯士の 現身の名を爭ふと たまきはる壽も捨てて 爭ひに嬬問しける をとめらが聞けば悲しさ 春花のにほえさかえて 秋の葉のにほひに照れる あたらしき身の壯すら 丈夫の語いたはしみ 父母に啓し別れて 家離り海邊に出で立ち 朝暮に滿ち來る潮の 八重浪に靡く珠藻の 節の間も惜しき命を 露霜の過ぎましにけれ 奧墓を此處と定めて 後の代の聞き繼ぐ人も いや遠にしぬびにせよと 黃楊小櫛しか指しけらし生ひて靡けり をとめらの 後のしるしと 黃楊小櫛 生ひ更り生ひて 靡きけらしも原文・訳・解説を読む 万葉集・4213番東風を疾み 奈呉の浦廻に東風を疾み 奈呉の浦廻に 寄する浪 いや千重しきに 戀ひ渡るかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4214〜4216番天地の 初の時ゆ天地の初の時ゆ 現身の八十伴の男は 大王に服從ふものと 定まれる官にしあれば 天皇の命かしこみ 夷放る國を治むと あしひきの山河阻て 風雲に言は通へど 正に遇はぬ日の累なれば 思ひ戀ひ氣衝き居るに 玉桙の道來る人の 傳言に吾に語らく 愛しきよし君は此の頃 うらさびて嘆かひ坐す 世のなかの憂けく辛けく 開く花も時にうつろふ 現身も常無くありけり たらちねの御母の命 何しかも時しはあらむを まそ鏡見れども飽かず 珠の緒の惜しき盛に 立つ霧の失せぬる如く 置く露の消ぬるが如 玉藻なす靡き臥伏し 逝く水の留めかねつと 枉言や人の云ひつる 逆言か人の告げつる 梓弓爪よる音の 遠音にも聞けば悲しみ 庭潦流るる涕留めかねつも 遠音にも 君が嘆くと 聞きつれば 哭のみし泣かゆ 相念ふ吾は 世のなかの 常無きことは 知るらむを 情盡すな 丈夫にして原文・訳・解説を読む 万葉集・4217番卯の花を 腐す霖雨の卯の花を 腐す霖雨の 水始に 縁る木糞なす 縁らむ兒もがも原文・訳・解説を読む 万葉集・4218番鮪衝くと 海人の燭せる鮪衝くと 海人の燭せる 漁火の ほにか出ださむ 吾が下念を原文・訳・解説を読む 万葉集・4219番吾が屋戸の 萩咲きにけり吾が屋戸の 萩咲きにけり 秋風の 吹かむを待たば いと遠みかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4225番あしひきの 山の黄葉にあしひきの 山の黃葉に 雫合ひて 散らむ山道を 君が越えまく原文・訳・解説を読む 万葉集・4226番この雪の 消遺る時にこの雪の 消遺る時に いざ行かな 山橘の 實の光るも見む原文・訳・解説を読む 万葉集・4229番新たしき 年のはじめは新たしき 年のはじめは 彌年に 雪踏み平し 常斯くにもが原文・訳・解説を読む 万葉集・4230番降る雪を 腰になづみて降る雪を 腰になづみて 參り來し しるしもあるか 年の初に原文・訳・解説を読む 万葉集・4238番君が往き もし久ならば君が往 もし久にならば 梅柳 誰とともにか 吾が蘰かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4239番二上の 峯の上の繁に二上の 峯の上の繁に 籠りにし その霍公鳥 待てど來鳴かず原文・訳・解説を読む 万葉集・4248〜4249番あらたまの 年の緒長くあらたまの 年の緒長く 相見てし 彼の心引 忘らえめやも いはせ野に 秋萩凌ぎ 馬竝めて 始鷹獵だに 爲ずや別れむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4250番しなざかる 越に五箇年しなざかる 越に五箇年 住み住みて 立ち別れまく 惜しき初夜かも原文・訳・解説を読む 万葉集・4251番玉ほこの 道に出で立ち玉ほこの 道に出で立ち 往く吾は 君が言跡を 負ひてし行かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4254〜4255番秋津島 倭の國を秋津島倭の國を 天雲に磐船浮べ 艫に舳に眞櫂繁貫き い榜ぎつつ國見しせして 天降り坐し掃ひ平げ 千代累ねいや嗣繼に 知らし來る天の日嗣と 神ながら吾が皇の 天の下治め賜へば 物部の八十伴の雄を 撫で賜ひ齊へ賜ひ 食國の四方の人をも 餘さはず愍み賜へば 古昔より無かりし瑞 遍數多く申したまひぬ 手拱きて事無き御代と 天地日月と共に 萬世に記し續がむぞ 安見しし吾が大皇 秋の花其がいろいろに 見し賜ひ明らめたまひ 酒宴榮ゆる今日のあやに貴さ 秋の時 花種なれど 色別に 見し明らむる 今日の貴さ原文・訳・解説を読む 万葉集・4256番古に 君の三代經て古に 君の三代經て 仕へけり 吾が大主は 七世申さね原文・訳・解説を読む 万葉集・4266〜4267番あしひきの 八峯の上のあしひきの八峯の上の 樛の木のいや繼繼に 松が根の絶ゆること無く あをによし奈良の京師に 萬代に國知らさむと やすみしし吾が大皇の 神ながら思ほしめして 豐の宴見す今日の日は もののふの八十伴の雄の 島山に熟る橘 髻華に指し紐解き放けて 千年壽ぎ壽ぎとよもし ゑらゑらに仕へ奉るを見るが貴さ 天皇の 御代萬代に 斯くしこそ 見し明らめめ 立つ毎年に原文・訳・解説を読む 万葉集・4285〜4287番大宮の 內にも外にも大宮の 內にも外にも めづらしく 降れる大雪 な踏みそね惜し 御苑生の 竹の林に うぐひすは 屢鳴きにしを 雪は降りつつ 鶯の 鳴きし垣內に にほへりし 梅この雪に うつろふらむか原文・訳・解説を読む 万葉集・4288番河渚にも 雪は降れれし河渚にも 雪は降れれし 宮の裏に 千鳥鳴くらし 居む所無み原文・訳・解説を読む 万葉集・4289番青柳の 秀つ枝攀ぢ執り青柳の 秀つ枝攀ぢ執り 蘰くは 君が屋戸にし 千年壽ぐとぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・4290〜4291番春の野に春の野に 霞たなびき うらがなし この夕かげに うぐひす鳴くも わがやどの いささ群竹 吹く風の 音のかそけき この夕かも原文・訳・解説を読む 万葉集・4292番うらうらにうらうらに 照れる春日に 雲雀あがり 情悲しも 獨しおもへば原文・訳・解説を読む 万葉集・4304番山吹の 花の盛に山吹の 花の盛に 斯くのごと 君を見まくは 千年にもがも原文・訳・解説を読む 万葉集・4305番木の暗の 繁き尾の上を木の暗の 繁き尾の上を ほととぎす 鳴きて越ゆなり 今し來らしも原文・訳・解説を読む 万葉集・4306〜4313番初秋風 涼しき夕初秋風 涼しき夕 解かむとぞ 紐は結びし 妹に逢はむため 秋といへば 心ぞ痛き うたて異に 花に比へて 見まく欲りかも 初尾花 花に見むとし 天の河 隔りにけらし 年の緒長く 秋風に 靡く河傍の 和草の 莞爾にしも 思ほゆるかも 秋されば 霧立ちわたる 天の河 石並み置かば 繼ぎて見むかも あき風に 今か今かと 紐解きて うら待ち居るに 月かたぶきぬ 秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ 青波に 袖さへぬれて 漕ぐ船の 牂牁振る程に さ夜ふけなむか原文・訳・解説を読む 万葉集・4314番八千種に 草木を植ゑて八千種に 草木を植ゑて 時毎に 咲かむ花をし 見つつ思ばな原文・訳・解説を読む 万葉集・4315〜4320番宮人の 袖つけ衣宮人の 袖つけ衣 秋萩に にほひよろしき 高圓の宮 高圓の 宮の裾廻の 野づかさに 今咲けるらむ 女郎花はも 秋野には 今こそ行かめ もののふの 男女の 花にほひ見に 秋の野に 露負へる萩を 手折らずて あたら盛を 過ぐしてむとか 高圓の 秋野のうへの 朝霧に 妻呼ぶ牡鹿 出で立つらむか 丈夫の 呼び立てしかば さを鹿の 胸分け行かむ 秋野萩原原文・訳・解説を読む 万葉集・4331〜4333番天皇の 遠の朝廷と天皇の遠の朝廷と 不知火筑紫の國は 賊守る鎭の城ぞと 聞し食す四方の國には 人多に滿ちてはあれど 鷄が鳴く東男は 出で向ひ顧みせずて 勇みたる猛き軍卒と 勞ぎ給ひ任のまにまに たらちねの母が目離れて 若草の妻をも纏かず あらたまの月日數みつつ 蘆が散る難波の御津に 大船に眞櫂繁貫き 朝なぎに水手整へ 夕汐に楫引き撓り 率ひて漕ぎゆく君は 波の間をい行きさぐくみ 眞幸くも早く到りて 大王の命のまにま 丈夫の心を持ちて 在り廻り事し畢らば 恙はず歸り來ませと 齋瓮を床邊にすゑて 白妙の袖折り反し ぬばたまの黑髮敷きて 長き日を待ちかも戀ひむ愛しき妻らは 丈夫の 靫取り負ひて 出でて往けば 別を惜しみ 嘆きけむ妻 とりが鳴く 東男の 妻別れ 悲しくありけむ 年の緒長み原文・訳・解説を読む 万葉集・4334〜4336番海原を 遠く渡りて海原を 遠く渡りて 年經とも 兒らが結べる 紐解くなゆめ 今替る 新防人が 船出する 海原のうへに 浪な開きそね 防人の 堀江漕ぎ出る 伊豆手舟 楫取る間なく 戀は繁けむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4360〜4362番天皇の 遠き御代にも天皇の遠き御代にも 押照る難波の國に 天の下知らしめしきと 今の世に絶えず言ひつつ 懸けまくもあやに畏し 神ながら吾大王の うち靡く春の初は 八千種に花咲きにほひ 山見れば見のともしく 河見れば見の清けく 物ごとに榮ゆる時と 見し給ひ明らめ給ひ 敷きませる難波の宮は 聞し食す四方の國より 獻る貢の船は 堀江より水脈引きしつつ 朝なぎに楫引き泝り 夕汐に棹さし下り あぢ群の騷ぎ競ひて 濱に出でて海原見れば 白浪の八重折るが上に 海人小舟はららに浮きて 大御食に仕へ奉ると 遠近に漁り釣りけり 幾許もおぎろなきかも 許多もゆたけきかも 此見ればうべし神代ゆはじめけらしも 櫻花 今さかりなり 難波の海 押照る宮に 聞しめすなべ 海原の ゆたけき見つつ 蘆が散る 難波に年は 經ぬべく思ほゆ原文・訳・解説を読む 万葉集・4395〜4397番龍田山 見つつ越え來し龍田山 見つつ越え來し 櫻花 散りか過ぎなむ 我が歸るとに 堀江より 朝潮滿ちに 寄る木糞 貝にありせば つとにせましを 見渡せば 向つ峯の上の 花にほひ 照りて立てるは 愛しき誰が妻原文・訳・解説を読む 万葉集・4398〜4400番大王の 命かしこみ大王の命かしこみ 妻別れ悲しくはあれど 丈夫の情振り興し とりよそひ門出をすれば たらちねの母かき撫で 若草の妻は取り附き 平けく我は齋はむ 好く去きて早還り來と 眞袖持ち涙を拭ひ 咽びつつ言語すれば 群鳥の出で立ち難に 滯り顧みしつつ いや遠に國を來離れ いや高に山を越え過ぎ 蘆が散る難波に來居て 夕汐に船を浮け居ゑ 朝なぎに舳向け漕がむと 侍候ふと我が居る時に 春霞島廻に立ちて 鶴が音の悲しみ鳴けば はろばろに家を思ひ出 負ひ征箭のそよと鳴るまで歎きつるかも 海原に 霞たなびき 鶴が音の 悲しき宵は 國方し思ほゆ 家おもふと 寐を寢ず居れば 鶴が鳴く 蘆邊も見えず 春の霞に原文・訳・解説を読む 万葉集・4408〜4412番大王の 任のまにまに大王の任のまにまに 島守に我が立ち來れば 柞葉の母の命は 御裳の裾つみ擧げ搔き撫で ちちの實の父の命は 栲綱の白鬚の上ゆ 涙垂り歎き宣たばく 鹿兒じもの唯一人して 朝戸出のかなしき吾が子 あらたまの年の緒長く あひ見ずは戀しくあるべし 今日だにも言問せむと 惜しみつつ悲しび坐せ 若草の妻も子等も 彼此に多に圍み居 春鳥の聲の吟ひ 白妙の袖泣きぬらし 携はり別れ難にと 引き止め慕ひしものを 大皇の命かしこみ 玉ほこの道に出で立ち 丘の岬い廻むる毎に 萬度顧みしつつ はろばろに別れし來れば 思ふそら安くもあらず 戀ふるそら苦しきものを 現身の世の人なれば たまきはる命も知らず 海原のかしこき道を 島傳ひい漕ぎ渡りて 在り廻り我が來るまでに 平けく親はいまさね 恙無く妻は待たせと 住吉の我が皇神に 幣奉り祈り申して 難波津に船を浮け居ゑ 八十楫貫き水手整へて 朝びらき我は漕ぎ出ぬと家に告げこそ 家人の 齋へにかあらむ 平けく 船出はしぬと 親に申さね み空行く 雲も使と 人はいへど 家づと遣らむ たづき知らずも 家づとに 貝ぞ拾へる 濱浪は いやしくしくに 高く寄すれど 島かげに 我が船泊てて 告げやらむ 使を無みや 戀ひつつ行かむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4445番うぐひすの 聲は過ぎぬとうぐひすの 聲は過ぎぬと 思へども 染みにし情 なほ戀ひにけり原文・訳・解説を読む 万葉集・4460〜4462番堀江漕ぐ 伊豆手の船の堀江漕ぐ 伊豆手の船の 楫つくめ 音屢立ちぬ 水脈早みかも 堀江より 水脈さかのぼる 楫の音の 間なくぞ奈良は 戀しかりける 船競ふ 堀江の河の 水際に 來居つつ鳴くは 都鳥かも原文・訳・解説を読む 万葉集・4463〜4464番ほととぎす まづ鳴く朝けほととぎす まづ鳴く朝け いかにせば 我が門過ぎじ 語りつぐまで ほととぎす かけつつ君が 松蔭に 紐解き放くる 月近づきぬ原文・訳・解説を読む 万葉集・4465〜4467番ひさかたの 天の戸開きひさかたの天の戸開き 高千穗の嶽に天降りし 皇祖の神の御代より 梔弓を手握り持たし 眞鹿兒矢を手挾み添へて 大久米の丈夫武雄を 先に立て靫取り負せ 山河を磐根さくみて 履みとほり國覓しつつ ちはやぶる神をことむけ 服從はぬ人をも和し 掃き淸め仕へ奉りて 秋津島大和の國の 橿原の畝傍の宮に 宮柱太知り立てて 天の下知らしめしける 皇祖の天の日嗣と つぎて來る君の御代御代 隱さはぬ赤き心を 皇方に極め盡して 仕へ來る祖の職と 言立てて授け給へる 子孫のいや繼ぎ繼ぎに 見る人の語りつぎてて 聞く人の鑒にせむを 惜しき淸きその名ぞ 凡ろかに心思ひて 虛言も祖の名斷つな 大伴の氏と名に負へる健男の伴 磯城島の 倭の國に 明らけき 名に負ふ伴の緒 こころ勤めよ 劍刀 いよよ研ぐべし 古ゆ 淸けく負ひて 來にしその名ぞ原文・訳・解説を読む 万葉集・4468〜4469番現身は 數なき身なり現身は 數なき身なり 山河の 淸けき見つつ 道を尋ねな 渡る日の 陰に競ひて 尋ねてな 淸きその道 またも遇はむため原文・訳・解説を読む 万葉集・4470番泡沫なす 假れる身ぞとは泡沫なす 假れる身ぞとは 知れれども 猶し願ひつ 千歲の命を原文・訳・解説を読む 万葉集・4471番消殘りの 雪に合へ照る消殘りの 雪に合へ照る あしひきの 山たちばなを 裹に採み來な原文・訳・解説を読む 万葉集・4474番群鳥の 朝立ち往にし群鳥の 朝立ち往にし 君が上は 淸かに聞きつ 思ひし如く原文・訳・解説を読む 万葉集・4481番あしひきの 八峯の椿あしひきの 八峯の椿 つらつらに 見とも飽かめや 植ゑてける君原文・訳・解説を読む 万葉集・4483番移り行く 時見る毎に移り行く 時見る毎に 心いたく 昔の人し 思ほゆるかも原文・訳・解説を読む 万葉集・4484〜4485番咲く花は うつろふ時あり咲く花は うつろふ時あり あしひきの 山菅の根し 長くはありけり 時の花 いやめづらしも 斯くしこそ 見し明らめめ 秋立つごとに原文・訳・解説を読む 万葉集・4492番月數めば いまだ冬なり月數めば いまだ冬なり しかすがに 霞たなびく 春立ちぬとか原文・訳・解説を読む 万葉集・4493番始春の 初子の今日の始春の 初子の今日の 玉箒 手に執るからに ゆらぐ玉の緒原文・訳・解説を読む 万葉集・4494番水鳥の 鴨の羽の色の水鳥の 鴨の羽の色の 青馬を 今日見る人は かぎり無しと云ふ原文・訳・解説を読む 万葉集・4495番うち靡く 春とも著くうち靡く 春とも著く うぐひすは 植木の樹間を 鳴き渡らなむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4514番蒼海原 風波なびき蒼海原 風波なびき ゆくさくさ つつむことなく 船は早けむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4515番秋風の すゑ吹き靡く秋風の すゑ吹き靡く 萩の花 ともに挿頭さず 相か別れむ原文・訳・解説を読む 万葉集・4516番新しき新しき 年の始の 初春の 今日降る雪の いや重け吉事原文・訳・解説を読む

『新古今和歌集』の大伴家持

11首
新古今和歌集・20番卷向の卷向の 檜原のいまだ 曇らねば 小松が原に あは雪ぞふる原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・85番行かむ人行かむ人 來む人忍べ 春霞 たつ田の山の 初櫻ばな原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・151番唐人の唐人の 舟をうかべて 遊ぶてふ 今日ぞわがせこ 花かつらせよ原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・195番郭公郭公 一聲なきて 去ぬる夜は いかでか人の いをやすく寢る原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・285番神南備の神南備の 三室の山の 葛かづら うら吹きかへす 秋は來にけり原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・334番さを鹿のさを鹿の 朝たつ小野の 秋萩に 玉と見るまで おける白露原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・457番いまよりはいまよりは 秋風寒く なりぬべし いかでかひとり 長き夜を寐む原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・462番我宿の我宿の 尾花が末の 白露の おきし日よりぞ 秋風も吹く原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・620番鵲の鵲の 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・1025番秋萩の秋萩の 枝もとをゝに おく露の 今朝消えぬとも 色に出でめや原文・訳・解説を読む 新古今和歌集・1213番足曳の足曳の 山のかげ草 結びおきて 戀ひやわたらむ 逢ふよしをなみ原文・訳・解説を読む
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