万葉集 巻第十八 4071〜4072番
級離る 越の君らと
天平20年4月、越中の郡司以下の人々が多く集まった宴で、大伴家持が詠んだ歌二首。越の国の皆さんと、こうして柳を髪に挿して楽しく遊ぼうという歌と、夜空を渡る月を幾夜たったかと数えながら、妻は私を待っているだろうという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞(越中の郡司以下の人々と宴せる時の歌二首)
現代語訳
〔4071〕(級離る)越の国の皆さんと、このようにして、柳を髪に挿して楽しく遊ぼう。
〔4072〕(ぬばたまの)夜空を渡る月を見て、幾夜たったかと数えながら、妻は私を待っているだろう。
意訳
越中の郡司やその子弟たちが大勢集まった宴での歌である。家持は国守として土地の人々と打ち解けて楽しく遊ぼうと呼びかける一方、ゆっくりと渡る月を見て、奈良で自分の帰りを数えて待つ妻を思う。
語釈・文法注
文法・本文
- 級離る
- 「しなざかる」。「越」にかかる枕詞。
- 楊蘰き
- 「やなぎかづらき」。柳の枝を髪飾りにして。
- 幾夜經と
- 「いくよふと」。幾夜たったかと。
- 數みつつ
- 「よみつつ」。数えながら。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十八・部立なし・4071〜4072番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平20年4月、越中守大伴家持の館で、郡司以下の人々が集まった宴の歌。
修辞
- 対照
- 4071番の宴の楽しさと、4072番の妻への思いとを対照させる。
解説
4072番の左注の「月光遲く流れ、和風稍扇ぐ」は、漢詩文の表現にならったもの。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、650頁(コマ118)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、767頁(コマ147)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日