万葉集 巻第十六 3853〜3854番
石麻呂に 吾物申す
大伴家持が、ひどくやせた吉田老(石麻呂)をからかって詠んだ歌二首。石麻呂に申し上げる、夏やせによいというものだ、鰻を取ってお食べなさいという歌と、やせていても生きていればよいだろうに、まさか鰻を取ろうとして川に流されなさるなという歌。
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題詞瘦人を嗤り咲ふ歌二首
現代語訳
〔3853〕石麻呂に私は申し上げる。夏やせによいというものですよ。鰻を捕ってお召し上がりなさい。
〔3854〕やせにやせていても、生きていられればよいだろうに。まさかまさか、鰻を捕ろうとして、川に流されなさるなよ。
意訳
大伴家持が、いくら食べてもやせている吉田石麻呂をからかって詠んだ戯れの歌である。夏やせには鰻がよいと勧めながら、やせた体で鰻を捕りに行って川に流されるなと、さらにからかう。
語釈・文法注
文法・本文
- 物申す
- 「ものまをす」。申し上げる。
- 鰻
- 「むなぎ」。うなぎ。
- 食せ
- 「めせ」。召し上がれ。
- 將や將
- 「はたやはた」。まさか、もしや。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十六・雑歌・3853〜3854番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 大伴家持が、やせた吉田石麻呂をからかって詠んだ歌。
修辞
- 嗤笑
- 友人のやせた体をからかう。
解説
夏やせに鰻がよいという考えが奈良時代からあったことを示す歌として知られる。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、596頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、699頁(コマ113)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日