古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4085番

燒刀を 礪波の關に

大伴家持(おおとものやかもち)

天平感宝元年5月5日、東大寺の墾田の地を定めに越中へ来た僧平栄らをもてなした宴で、大伴家持が僧に酒をすすめて詠んだ歌。礪波の関に明日からは番人を増やして、あなたを引き留めようという歌。

礪波山の関所と、そこを越えようとする僧の一行

題詞天平感寶元年五月五日、東大寺の占墾地使の僧平榮等を饗す。時に守大伴宿禰家持、酒を僧に送る歌一首

  1. 1燒刀やきだち燒刀やきだちやきだちををを夜岐多知乎
  2. 2礪波となみ礪波となみとなみののの關せき關せきせきににに刀奈美能勢伎爾
  3. 3明日あす明日あすあすよりよりよりははは安須欲里波
  4. 4守部もりべ守部もりべもりべ遣や遣ややりりり副そ副そそへへえ毛利敝夜里蘇倍
  5. 5君きみ君きみきみををを留とど留とどとどめめめむむん伎美乎等登米牟

引用の仕方

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現代語訳

(燒刀を)礪波の関に、明日からは番人を増やして遣わし、あなたを引き留めましょう。

意訳

越中から帰ろうとする東大寺の僧たちを、関所の番人を増やしてでも引き留めたいと、もてなしの心を戯れて詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

燒刀を
「やきだちを」。鍛えた刀を研ぐ意から「礪(と)」にかかる枕詞。
礪波の關
「となみのせき」。越中と加賀の境の関所。
守部
「もりべ」。番人。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4085番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平感宝元年5月5日、越中守大伴家持が、東大寺の占墾地使の僧平栄らをもてなした宴で詠んだ歌。

修辞

枕詞
「燒刀を」。
誇張
関所の番人を増やして引き留めると戯れる。

解説

占墾地使は、寺の墾田とする土地を定めるために遣わされた使い。東大寺は越中に広い墾田を持った。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、653頁(コマ119)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、770頁(コマ149)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日