古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4495番

うち靡く 春とも著く

大伴家持(おおとものやかもち)

天平宝字2年正月6日、内裏の庭に仮に木を植えて林のとばりとし、宴が催された時のために大伴家持が作った歌。春になったとはっきりわかるように、鶯は植木の木の間を鳴き渡ってほしいという歌。

宮中の庭に植えられた木々の間を飛ぶ鶯

題詞六日、内庭に假に樹木を植ゑて林帷と作して、肆宴を爲す歌一首

  1. 1うちうちうち靡なび靡なびなびくくく打奈婢久
  2. 2春はる春はるはるとととももも著しる著しるしるくくく波流等毛之流久
  3. 3うぐひすうぐひすうぐいすははは宇具比須波
  4. 4植木うゑき植木うゑきうえきののの樹間こま樹間こまこまををを宇惠木之樹間乎
  5. 5鳴な鳴ななききき渡わた渡わたわたらららなななむむん奈伎和多良奈牟

引用の仕方

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現代語訳

(うち靡く)春になったとはっきりわかるように、鶯は、植えた木々の木の間を鳴き渡ってほしい。

意訳

正月の宴のために庭に仮に植えた木々を、鶯が鳴き渡って春の訪れを告げてほしいと願った歌である。

語釈・文法注

文法・本文

林帷
「かきしろ」。林のとばり。
うち靡く
「春」にかかる枕詞。
著く
「しるく」。はっきりと。
樹間
「こま」。木の間。
鳴き渡らなむ
鳴き渡ってほしい。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4495番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平宝字2年正月6日、内裏の庭での宴のために家持が作ったが、奏上しなかった歌。

修辞

枕詞
「うち靡く」。

解説

前の4494番と同じく、仁王会のため7日の宴が6日に改められた時の歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、750頁(コマ168)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、887頁(コマ207)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日