古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4483番

移り行く 時見る毎に

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝9年6月23日、大監物三形王の家で宴をした時の大伴家持の歌。移り変わっていく時世を見るたびに、心が痛み、昔の人のことが思われるという歌。

夏の夕暮れ、宴の席で物思いにふける官人

題詞勝寶九歲六月二十三日、大監物三形王の宅にて宴せる歌一首

  1. 1移うつ移うつうつりりり行ゆ行ゆゆくくく宇都里由久
  2. 2時とき時ときとき見み見みみるるる毎ごと毎ごとごとににに時見其登爾
  3. 3心こころ心こころこころいたくいたくいたく許己呂伊多久
  4. 4昔むかし昔むかしむかしののの人ひと人ひとひとししし牟可之能比等之
  5. 5思おも思おもおもほほおゆるゆるゆるかもかもかも於毛保由流加母

引用の仕方

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現代語訳

移り変わっていく時世を見るたびに、心が痛み、昔の人のことが思われることだ。

意訳

聖武太上天皇の崩御、橘諸兄の死去、橘奈良麻呂の変と続いた激動の時に、移り変わる世を見て、亡き人々をしのんだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

大監物
中務省の官。
移り行く時
移り変わっていく時世。
昔の人し
昔の人を。「し」は強め。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4483番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝9年6月23日、三形王の家での宴で家持が詠んだ歌。

修辞

詠嘆
「思ほゆるかも」。

解説

この年1月に橘諸兄が没し、7月には橘奈良麻呂の変が起こる。家持は兵部大輔に昇進していた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、748頁(コマ167)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、884頁(コマ206)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日