古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4218番

鮪衝くと 海人の燭せる

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年5月、大伴家持が、海人の漁火を見て詠んだ歌。鮪を突こうと海人のともしている漁火のように、はっきりと表に出してしまおうか、私の心の中の思いをという歌。

夜の海に点々とともる海人の漁火

題詞漁夫の火光を見る歌一首

  1. 1鮪しび鮪しびしび衝つ衝つつくくくととと鮪衝等
  2. 2海人あま海人あまあまののの燭とも燭ともともせせせるるる海人之燭有
  3. 3漁火いざりび漁火いざりびいざりびののの伊射里火之
  4. 4ほほほにににかかか出い出いいだだださささむむん保爾可將出
  5. 5吾わ吾わわががが下した下したした念もひ念もひもいををを吾之下念乎

引用の仕方

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現代語訳

鮪を突こうと海人がともしている漁火のように、はっきりと外に表してしまおうか。私の心ひそかな思いを。

意訳

闇夜にくっきりと浮かぶ漁火に寄せて、胸に秘めた恋心を表に出してしまおうかと迷う心を詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

鮪
「しび」。まぐろ。
ほに出だす
表に出す。
下念
「したもひ」。心ひそかな思い。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4218番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年5月、越中守大伴家持が、海人の漁火を見て詠んだ歌。

修辞

序詞
「鮪衝くと海人の燭せる漁火の」が「ほに」を導く。

解説

夜の漁の明かりを恋の表現に転じた歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、692頁(コマ139)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、816頁(コマ172)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日