古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4194〜4196番

ほととぎす 鳴き渡りぬと

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年4月、大伴家持が、ほととぎすの鳴くのが遅いのを恨んで詠んだ歌三首。ほととぎすが鳴き渡ったと人は告げるが、私は聞き継がないまま花は散っていくという歌、私がこれほど慕っているのも知らずに、ほととぎすはどこの山を鳴いて越えているのだろうという歌、月が改まった日から招き寄せて慕い待っているのに、来て鳴かないほととぎすよという歌。

夏の山の上を、どこかへ鳴いて越えていくほととぎす

題詞更に霍公鳥の喧くこと晩きを怨むる歌三首

  1. 1ほととぎすほととぎすほととぎす霍公鳥4194
  2. 2鳴な鳴ななききき渡わた渡わたわたりりりぬぬぬととと喧渡奴等
  3. 3告つ告つつぐれぐれぐれどもどもども告禮騰毛
  4. 4吾われ吾われわれ聞き聞ききききき繼つ繼つつがががずずず吾聞都我受
  5. 5花はな花はなはなははは過す過すすぎぎぎつつつつつつ花波須疑都追
  6. 6吾わ吾わわががが幾許ここだ幾許ここだここだ吾幾許4195
  7. 7慕しぬ慕しぬしぬばくばくばく知し知ししらららににに斯奴波久不知爾
  8. 8ほととぎすほととぎすほととぎす霍公鳥
  9. 9何方いづへ何方いづへいずえののの山やま山やまやまををを伊頭敝能山乎
  10. 10鳴な鳴ななきききかかか超こ超ここゆゆゆらむらむらん鳴可將超
  11. 11月つき月つきつき立た立たたちちちししし月立之4196
  12. 12日ひ日ひひよりよりより招を招をおきききつつつつつつ日欲里乎伎都追
  13. 13うちうちうち慕しぬ慕しぬしぬびびび敲自努比
  14. 14待ま待ままてててどどど來き來きき鳴な鳴ななかかかぬぬぬ麻低騰伎奈可奴
  15. 15霍公鳥ほととぎす霍公鳥ほととぎすほととぎすかもかもかも霍公鳥可母

引用の仕方

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現代語訳

〔4194〕ほととぎすが鳴き渡ったと人は告げるけれども、私は続けて聞くこともなく、花は散り過ぎていく。

〔4195〕私がこれほど慕っているのも知らずに、ほととぎすは、どこの山を鳴いて越えているのだろうか。

〔4196〕月の改まった日から招き寄せながら、心ひそかに慕って待っているのに、来て鳴かないほととぎすよ。

意訳

四月になってもなかなか鳴き声を聞かせてくれないほととぎすを恨んで詠んだ歌である。人は聞いたと言うのに自分は聞けず、ほととぎすの気まぐれを嘆く。

語釈・文法注

文法・本文

聞き繼がず
続けて聞くことができず。
幾許
「ここだ」。これほど。
何方
「いづへ」。どちら。
うち慕び
心ひそかに慕って。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4194〜4196番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年4月、越中守大伴家持が詠んだ歌。

修辞

恨み
ほととぎすへの恨みを戯れて詠む。

解説

4183番などでほととぎすを飼いたいと詠んだのと同じく、ほととぎすへの強い愛着がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、687頁(コマ136)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、812頁(コマ170)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日