古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4471番

消殘りの 雪に合へ照る

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝8年11月5日の夜、小さな雷が鳴って雪が庭を覆った時、大伴家持がふと心を動かされて作った歌。消え残った雪に映えて照る山橘を、土産に摘んで来ようという歌。

消え残る雪の中で赤く照る山橘の実

題詞冬十一月五日の夜、少雷起り鳴り、雪落りて庭を覆ふ。忽に感憐を懷ひて、聊か作れる短歌一首

  1. 1消け消けけ殘のこ殘のこのこりりりののの氣能己里能
  2. 2雪ゆき雪ゆきゆきににに合あ合ああへへえ照て照ててるるる由伎爾安倍弖流
  3. 3あしひきあしひきあしひきののの安之比奇乃
  4. 4山やま山やまやまたちばなたちばなたちばなををを夜麻多知波奈乎
  5. 5裹つと裹つとつとににに採つ採つつみみみ來こ來ここななな都刀爾通彌許奈

引用の仕方

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現代語訳

消え残っている雪に映えて照っている、(あしひきの)山橘の実を、土産に摘んで来よう。

意訳

冬の雷と雪に心を動かされ、白い雪に映える山橘の赤い実を思い浮かべた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

少雷
小さな雷。
感憐
心を動かされること。
消殘り
「けのこり」。消え残り。
合へ照る
映えて照る。
山たちばな
ヤブコウジ。冬に赤い実をつける。
裹
「つと」。土産。
採み來な
摘んで来よう。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4471番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝8年11月5日の夜、雷が鳴り雪が降って庭を覆った時、家持が作った歌。

修辞

色彩の対照
白い雪と山橘の赤い実を対照させる。

解説

家持には、雪に映える山橘の実を詠んだ歌がほかにもある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、746頁(コマ166)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、881頁(コマ204)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日