古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4159番

磯の上の 都萬麻を見れば

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月9日、出挙の政務のために古江村へ行く途中、渋谿の崎を過ぎて岩の上の木を見た大伴家持が詠んだ歌。磯の上のつままの木を見ると、根を張って長い年月を経たらしい、神々しくなっていることだという歌。

渋谿の崎の岩の上に根を張る、古いたぶの木

題詞季春三月九日、出擧の政に擬して舊江村に行く道の上に、目を物花に屬くる詠、并に興の中に作るところの歌 澁溪の埼を過ぎて巖の上の樹を見る歌一首(樹の名はつまま)

  1. 1磯いそ磯いそいそののの上うへ上うへうえののの礒上之
  2. 2都萬麻つまま都萬麻つままつままををを見み見みみれれればばば都萬麻乎見者
  3. 3根ね根ねねををを延は延ははへへえててて根乎延而
  4. 4年とし年としとし深ふか深ふかふかからからからししし年深有之
  5. 5神かむ神かむかむさびさびさびにににけりけりけり神佐備爾家里

引用の仕方

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現代語訳

磯の上のつままの木を見ると、根を張りめぐらせて、長い年月を経たらしい。神々しくなっていることだ。

意訳

出挙の巡行の途中、渋谿の崎の岩の上に根を張る老木を見て、その長い歳月と神々しさに打たれた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

都萬麻
「つまま」。たぶの木とされる。
延へて
「はへて」。張りめぐらせて。
年深からし
長い年月を経たらしい。
神さび
神々しくなること。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4159番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月9日、出挙のために古江村へ行く途中、越中守大伴家持が渋谿の崎で詠んだ歌。

修辞

推量
「年深からし」と、老木の姿から歳月を推し量る。

解説

渋谿の崎は、今の高岡市の雨晴海岸。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、680頁(コマ133)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、802頁(コマ165)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日