万葉集 巻第十七 4021番
雄神河 くれなゐにほふ
天平20年春、越中守大伴家持が諸郡を巡行したとき、礪波郡の雄神川のほとりで詠んだ歌。雄神川に紅の裳を照り映えさせて、乙女たちが葦附を採ろうと瀬に立っているらしいという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞礪波郡雄神河の邊にて作れる歌一首
現代語訳
雄神川に紅の色を照り映えさせて、乙女たちが、葦附を採ろうと瀬に立っているらしい。
意訳
巡行の途中、雄神川の瀬に立つ乙女たちの紅の裳が水に映える様子を詠んだ歌である。川藻の一種の葦附を採る土地の娘たちの姿を、明るい色彩でとらえる。
語釈・文法注
文法・本文
- 雄神河
- 「をがみがは」。今の庄川。
- くれなゐにほふ
- 紅の色が照り映える。
- 葦附
- 「あしつき」。川に生える藻の一種。
- 立たすらし
- 立っておられるらしい。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十七・部立なし・4021番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平20年春、越中守大伴家持が出挙のために越中の諸郡を巡行したときの歌の一つ(4021〜4029番)。
修辞
- 色彩
- 「くれなゐにほふ」と、乙女の裳の色が川面に映えるさまを詠む。
解説
「らし」で推量しているのは、遠くから眺めての作であることを示す。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、637頁(コマ111)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、749頁(コマ138)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日