古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4171〜4172番

常人も 起きつつ聞くぞ

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月23日の夕暮れ、翌日が立夏にあたるので、明け方に鳴くだろうほととぎすの声を思って大伴家持が詠んだ歌二首。普通の人も起きて聞くぞ、ほととぎすよ、この明け方に来て初声を鳴けという歌と、ほととぎすが来て鳴き響かせるなら草を取ってやろう、花橘を家の外には植えないでという歌。

立夏の明け方、ほととぎすの初声を待つ人

題詞二十四日は、立夏四月の節に應れり。此に因りて二十三日の暮、忽ち霍公鳥の曉に喧かむ聲を思ひて作れる歌二首

  1. 1常人つねひと常人つねひとつねひとももも常人毛4171
  2. 2起お起おおきききつつつつつつ聞き聞ききくくくぞぞぞ起都追聞曾
  3. 3霍公鳥ほととぎす霍公鳥ほととぎすほととぎす霍公鳥
  4. 4このこのこのあかときあかときあかときににに此曉爾
  5. 5來き來きき喧な喧ななけけけ初はつ初はつはつ聲こゑ聲こゑこえ來喧始音
  6. 6ほととぎすほととぎすほととぎす霍公鳥4172
  7. 7來き來きき鳴な鳴ななききき響とよ響とよとよまままばばば來鳴響者
  8. 8草くさ草くさくさ取と取ととらららむむん草等良牟
  9. 9花はな花はなはな橘たちばな橘たちばなたちばなををを花橘乎
  10. 10屋外やど屋外やどやどにににははは植う植ううゑゑえずずずててて屋戸爾波不殖而

引用の仕方

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現代語訳

〔4171〕普通の人でさえ起きて聞くぞ。ほととぎすよ、この明け方に来て、初声を鳴け。

〔4172〕ほととぎすが来て鳴き響かせるならば、草を取ってやろう。花橘を家の外には植えないで。

意訳

立夏の前夜、翌朝のほととぎすの初声を待ちわびて詠んだ歌である。ほととぎすの好む花橘の手入れをしてやろうと興じ、その声を家で聞きたいと願う。

語釈・文法注

文法・本文

常人
「つねひと」。普通の人。
あかとき
明け方。
初聲
「はつこゑ」。その年初めての鳴き声。
響まば
「とよまば」。鳴き響かせるならば。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4171〜4172番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月23日の夕暮れ、越中守大伴家持が、立夏を前に詠んだ歌。

修辞

呼びかけ
4171番で、ほととぎすに「來喧け」と呼びかける。

解説

暦の上の立夏に、ほととぎすが鳴き始めるとされた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、682頁(コマ134)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、806頁(コマ167)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日