万葉集 巻第八 1627〜1628番
吾が屋前の 時じき藤の
わが家の庭の季節はずれの藤の花のように珍しく、今すぐにも見たいものだ、あなたの笑顔を。わが家の萩の下葉は、秋風もまだ吹かないのに、こんなに色づいている。大伴家持が季節はずれの藤と萩の黄葉を折って坂上大嬢に贈った歌二首。
場面イラスト(準備中)
題詞大伴宿禰家持、非時の藤の花并に萩の黄葉の二物を攀ぢて坂上大孃に贈れる歌二首
現代語訳
〔1627〕わが家の庭の季節はずれに咲いた藤の花のように珍しく、今すぐにでも見たいものだ、あなたの笑顔を。
〔1628〕わが家の庭の萩の下葉は、秋風もまだ吹かないのに、こんなに色づいている。
意訳
天平12年(740)6月、家持は季節はずれに咲いた藤の花と、夏なのに早くも色づいた萩の葉を折って、大嬢に贈った。珍しい藤の花のように、めったに見られない大嬢の笑顔を見たいと願い、秋風も吹かないのに色づいた萩に、恋に焦がれる自分を重ねている。
語釈・文法注
文法・本文
- 時じき
- 季節はずれの。
- 咲容
- 「ゑまひ」。笑顔。
- 黃變でる
- 色づいている。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した。 - 出典
- 『万葉集』巻第八・相聞・1627〜1628番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平12年(740)6月、大伴家持が季節はずれの藤の花と萩の黄葉を折って坂上大嬢に贈った歌二首。
修辞
- 序詞
- 1627番の「吾が屋前の時じき藤の」が「めづらしく」を導く。
解説
季節はずれの花と葉を、恋のしるしとして贈っている。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、331頁(コマ169)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、374頁(コマ193)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日