古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4043番

明日の日の 布勢の浦廻の

大伴家持(おおとものやかもち)

天平20年3月24日の宴で、田辺福麻呂の4042番に大伴家持が答えた歌。明日の布勢の浦の藤の花に、ほととぎすは来て鳴かないまま散らしてしまうのではないかという歌。

布勢の浦の岸辺に咲く藤の花房

題詞(田邊史福麿の歌に和ふる歌一首)

  1. 1明日あす明日あすあすののの日ひ日ひひののの安須能比能
  2. 2布勢ふせ布勢ふせふせののの浦うら浦うらうら廻み廻みみののの敷勢能宇良未能
  3. 3藤浪ふぢなみ藤浪ふぢなみふじなみににに布治奈美爾
  4. 4蓋けだ蓋けだけだししし來き來きき鳴な鳴ななかかかずずず氣太之伎奈可須
  5. 5散ち散ちちらしらしらしてててむむんかもかもかも知良之底牟可母

引用の仕方

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現代語訳

明日行く布勢の浦のあたりの藤の花に、ひょっとすると、ほととぎすは来て鳴かずに、花を散らしてしまうのではなかろうか。

意訳

福麻呂が藤の花にほととぎすの季節の近いことを詠んだのに答え、明日の遊覧では、ほととぎすが来ないうちに藤が散ってしまうのではないかと案じた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

浦廻
「うらみ」。浦のあたり。
蓋し
「けだし」。ひょっとすると。
散らしてむかも
散らしてしまうのではないか。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4043番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平20年3月24日、越中守大伴家持の館の宴で、田辺福麻呂に答えた歌。

修辞

懸念
藤の花とほととぎすの取り合わせが叶わないことを案じる。

解説

4032番からこの歌までの十首が、二十四日の宴の歌であると左注にある。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、646頁(コマ116)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、761頁(コマ144)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日