古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4197〜4198番

妹に似る 草と見しより

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年4月、大伴家持が妻坂上大嬢に頼まれて、都に留まっている家持の妹に贈るために作った歌二首。妹に似る草と見た時から私が目印をつけていた野辺の山吹を、誰が手折ったのかという歌、つれなく離れて行ったと人は言うけれど、逢えない日が多いので私も物思いをしているという歌。

野辺に咲く山吹と、それを手折った跡

題詞京人に贈れる歌二首

  1. 1妹いも妹いもいもににに似に似ににるるる妹爾似4197
  2. 2草くさ草くさくさととと見み見みみしししよりよりより草等見之欲里
  3. 3吾わ吾わわががが標し標ししめめめししし吾標之
  4. 4野の野のの邊べ邊べべののの山吹やまぶき山吹やまぶきやまぶき野邊之山吹
  5. 5誰たれ誰たれたれかかか手た手たた折を折をおりりりししし誰可手乎里之
  6. 6つれつれつれももも無な無ななくくく都禮母奈久4198
  7. 7離か離かかれれれにににしししものものものととと可禮爾之毛能登
  8. 8人ひと人ひとひとはははいへいへいえどどど人者雖云
  9. 9逢あ逢ああははわぬぬぬ日ひ日ひひ數多まね數多まねまねみみみ不相日麻禰美
  10. 10念おもひ念おもひおもいぞぞぞ吾わ吾わわがががするするする念曾吾爲流

引用の仕方

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現代語訳

〔4197〕あなたに似た草だと見た時から、私が目印をつけておいた野辺の山吹を、いったい誰が手折ったのでしょう。

〔4198〕つれなくも離れて行ってしまったと人は言うけれど、逢わない日が多いので、私の方こそ物思いをしているのです。

意訳

都の家持の妹から贈られた山吹の歌(4184番)に、妻の大嬢に代わって家持が答えた歌である。山吹を相手になぞらえ、つれなく離れたと言われても、自分も逢えずに物思いをしていると返す。

語釈・文法注

文法・本文

標めし
「しめし」。目印をつけておいた。
日數多み
「ひまねみ」。日が多いので。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4197〜4198番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年4月、越中守大伴家持が妻坂上大嬢に頼まれて、都の妹に贈るために作った歌。

修辞

寄物
山吹に寄せて人を思う。

解説

4184番の歌への返歌にあたる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、687頁(コマ136)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、812頁(コマ170)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日