古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4206番

澁溪を さして吾が行く

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年4月12日、布勢の水海の遊覧から帰る途中、浜辺で月の光を仰いで大伴家持が詠んだ歌。渋谿を目指して私の行くこの浜で、月を存分に眺めよう、馬をしばらく止めよという歌。

月光の照らす浜辺で、馬を止めて月を仰ぐ

題詞還る時濱の上にて月光を仰ぎ見る歌一首

  1. 1澁溪しぶたに澁溪しぶたにしぶたにををを之夫多爾乎
  2. 2さしさしさしててて吾わ吾わわががが行ゆ行ゆゆくくく指而吾行
  3. 3このこのこの濱はま濱はまはまににに此濱爾
  4. 4月夜つくよ月夜つくよつくよ飽あ飽ああきききてててむむん月夜安伎氐牟
  5. 5馬うま馬うまうま暫しま暫しましまししし停とど停とどとどめめめ馬之末時停息

引用の仕方

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現代語訳

渋谿を目指して私が行くこの浜で、月を飽きるほど眺めよう。馬をしばらく止めよ。

意訳

遊覧の帰り道、月の照らす浜辺の美しさに、馬を止めて心ゆくまで月を眺めようと詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

澁溪
「しぶたに」。越中の海岸。
月夜飽きてむ
月を飽きるほど眺めよう。
暫し
「しまし」。しばらく。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4206番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年4月12日、布勢の水海の遊覧から帰る途中、越中守大伴家持が詠んだ歌。

修辞

命令
「馬暫し停め」と供の者に呼びかける。

解説

渋谿の崎は、家持がたびたび詠んだ景勝の地。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、688頁(コマ137)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、813頁(コマ170)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日