古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4063〜4064番

常世物 この橘の

大伴家持(おおとものやかもち)

田辺福麻呂が伝えた難波宮の橘の歌に、大伴家持が後に追って唱和した歌二首。常世の国の物であるこの橘のように、ますます照り輝いて、わが大君は今見るようにいつまでもという歌と、大君は永遠においでになるだろう、橘の殿の橘がいつも照り輝いているようにという歌。

常緑の葉の間に、照り輝く橘の実

題詞後に追和せる橘の歌二首

  1. 1常世とこよ常世とこよとこよ物もの物ものもの等許余物能4063
  2. 2このこのこの橘たちばな橘たちばなたちばなののの己能多知婆奈能
  3. 3いやいやいや照て照ててりりりににに伊夜氏里爾
  4. 4我わご我わごわご大皇おほきみ大皇おほきみおおきみははは和期大皇波
  5. 5今いま今いまいまももも見み見みみるるる如ごと如ごとごと伊麻毛見流其登
  6. 6大皇おほきみ大皇おほきみおおきみははは大皇波4064
  7. 7常盤ときは常盤ときはときわににに在ま在ままさささむむん等吉波爾麻佐牟
  8. 8橘たちばな橘たちばなたちばなののの多知婆奈能
  9. 9殿との殿とのとののののたちばなたちばなたちばな等能乃多知波奈
  10. 10常ひた常ひたひた照て照ててりりりにににしししててて比多底里爾之氏

引用の仕方

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現代語訳

〔4063〕常世の国の物であるこの橘のように、ますます照り輝いて、わが大君は、今も見るようにいつまでも。

〔4064〕大君は永遠においでになるだろう。橘の殿の橘が、いつも照り輝いているように。

意訳

福麻呂が伝えた難波宮の歌に、越中の家持が後から唱和した歌である。常世の国から伝わったという橘の永遠性に寄せて、大君の御代の長久を祈る。

語釈・文法注

文法・本文

常世物
「とこよもの」。常世の国の物。橘は田道間守が常世の国から持ち帰ったと伝える。
我大皇
「わごおほきみ」。わが大君。
常盤に
「ときはに」。永遠に。
常照り
「ひたてり」。いつも照り輝くこと。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4063〜4064番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴家持が、田辺福麻呂の伝えた難波宮の橘の歌に、後から唱和した歌。

修辞

比喩
橘の照り輝くさまに、大君の御代の長久をなぞらえる。

解説

家持はこの年の後にも、橘の歌(4111番)を詠んでいる。

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出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、649頁(コマ117)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、765頁(コマ146)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日