万葉集 巻第十九 4144〜4145番
燕來る 時になりぬと
天平勝宝2年3月2日、大伴家持が、北へ帰る雁を見て詠んだ歌二首。燕の来る季節になったと、雁は故郷を思いながら雲に隠れて鳴いていくという歌と、春を待ってこのように帰っても、秋風の吹くころには紅葉する山を越えて来ないことがあろうかという歌。
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題詞歸雁を見る歌二首
現代語訳
〔4144〕燕が来る季節になったと、雁は故郷を思いながら、雲に隠れて鳴いていく。
〔4145〕春になってこのように帰っていくとしても、秋風の吹くころ、紅葉する山を越えて来ないことがあろうか。
意訳
燕と入れ替わりに北へ帰る雁を見て、故郷を思う雁の心に自らの望郷の思いを重ね、秋にはまた紅葉の山を越えて戻って来るだろうと、再会を期した歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 本郷
- 「くに」。故郷。
- 思ひつつ
- 「しぬひつつ」。慕いながら。
- 春設けて
- 「はるまけて」。春になって。
- 黃葉づる
- 「もみづる」。紅葉する。
- 超え來ざらめや
- 越えて来ないことがあろうか。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十九・部立なし・4144〜4145番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝2年3月2日、越中守大伴家持が、北へ帰る雁を見て詠んだ歌。
修辞
- 対照
- 春に帰る雁と秋に来る雁、燕の来る時と雁の帰る時とを対照させる。
解説
燕は春に南から来て、雁は春に北へ帰る。季節の交代を鳥の往来でとらえた歌である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、677頁(コマ131)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、799頁(コマ163)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日