古典ライブラリー

万葉集 巻第十七 4022番

鸕坂河 渡る瀬多み

大伴家持(おおとものやかもち)

天平20年春、大伴家持が婦負郡の鸕坂川のほとりで詠んだ歌。鸕坂川は渡る瀬が多いので、私の馬が足で掻く水しぶきに衣が濡れてしまったという歌。

馬に乗って鸕坂川の浅瀬を渡り、水しぶきを浴びる旅人

題詞婦負郡にて鸕坂河の邊にて作れる歌一首

  1. 1鸕坂うさか鸕坂うさかうさか河がは河がはがわ宇佐可河泊
  2. 2渡わた渡わたわたるるる瀨せ瀨せせ多おほ多おほおおみみみ和多流瀨於保美
  3. 3このこのこの我あ我ああががが馬ま馬ままののの許乃安我馬乃
  4. 4足搔あがき足搔あがきあがきののの水みづ水みづみずににに安我枳乃美豆爾
  5. 5衣きぬ衣きぬきぬぬれぬれぬれにににけりけりけり伎奴奴禮爾家里

引用の仕方

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現代語訳

鸕坂川は渡る瀬が多いので、この私の馬が足で掻く水しぶきに、衣が濡れてしまった。

意訳

いくつもの瀬を渡って鸕坂川を越える旅の実感を、馬の蹴立てる水しぶきに衣が濡れたと具体的に詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

鸕坂河
「うさかがは」。婦負郡の川。今の神通川とされる。
瀨多み
瀬が多いので。
足搔
「あがき」。馬が足で地や水を掻くこと。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十七・部立なし・4022番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平20年春、越中守大伴家持が出挙のために越中の諸郡を巡行したときの歌の一つ(4021〜4029番)。

修辞

写生
馬の足搔の水しぶきという細部で、川渡りの様子を描く。

解説

婦負郡では、鵜飼の様子も詠んでいる(4023番)。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、637頁(コマ111)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、749頁(コマ138)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日