古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4484〜4485番

咲く花は うつろふ時あり

大伴家持(おおとものやかもち)

大伴家持が、季節の景物の移り変わりを悲しんで作った歌と、時節の花の歌。咲く花は散る時がある、山菅の根こそ長く続くものだったという歌、その時々の花はいよいよ心ひかれる、このようにして見て心を晴らそう、秋が来るたびにという歌。

山の岩陰に茂る山菅と、秋の花々

題詞(物色の變化を悲しび怜びて作れる歌と、時の花の歌)

  1. 1咲さ咲ささくくく花はな花はなはなははは佐久波奈波4484
  2. 2うつろふうつろふうつろう時とき時ときときありありあり宇都呂布等伎安里
  3. 3あしひきあしひきあしひきののの安之比奇乃
  4. 4山やま山やまやま菅すが菅すがすがののの根ね根ねねししし夜麻須我乃禰之
  5. 5長なが長ながながくくくはははありありありけりけりけり奈我久波安利家里
  6. 6時とき時ときときののの花はな花はなはな時花4485
  7. 7いやいやいやめづらしめづらしめずらしももも伊夜米豆良之母
  8. 8斯か斯かかくくくしししこそこそこそ可久之許曾
  9. 9見め見めめししし明あき明あきあきらめらめらめめめめ賣之安伎良米兔
  10. 10秋あき秋あきあき立た立たたつつつごとごとごとににに阿伎多都其等爾

引用の仕方

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現代語訳

〔4484〕咲く花は色あせ散る時がある。(あしひきの)山菅の根こそ、長く続くものだったのだ。

〔4485〕その時節の花は、いよいよ心ひかれる。このようにして見て、心を晴らそう。秋が来るたびに。

意訳

華やかな花は移ろうが、地味な山菅の根は長く続くと、栄えるものの衰えを見つめた歌と、それでも季節ごとの花を見て心を晴らそうという歌である。

語釈・文法注

文法・本文

うつろふ
色あせる、散る。
山菅の根し
山菅の根こそ。
物色
季節の景物。
見し明らめめ
見て心を晴らそう。
秋立つごとに
秋が来るたびに。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4484〜4485番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝9年の夏から秋、家持が季節の移ろいに寄せて作った歌。

修辞

対照
咲く花と山菅の根を対照させる。

解説

政変の続く中で、栄枯盛衰への思いがこめられていると読まれる。

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出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、748頁(コマ167)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、884頁(コマ206)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日