古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4138番

やぶなみの 里に宿借り

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年2月18日、墾田の検察のために礪波郡に出かけ、主帳多治比部北里の家に泊まったところ、急に風雨が起こって発てなくなったときに、大伴家持が詠んだ歌。やぶなみの里に宿を借りて、春雨に降り込められていると、妻に告げてくれたかという歌。

春雨に降り込められた田舎の家で、旅の宿を借りる国守

題詞墾田地を檢察する事に縁りて、礪波郡の主帳多治比部北里の家に宿る。時に忽に風雨起りて、辭去することを得ずて作れる歌一首

  1. 1やぶなみやぶなみやぶなみののの夜夫奈美能
  2. 2里さと里さとさとににに宿やど宿やどやど借か借かかりりり佐刀爾夜度可里
  3. 3春はる春はるはる雨さめ雨さめさめににに波流佐米爾
  4. 4隱こも隱こもこもりりり障つつ障つつつつむむむととと許母理都追牟等
  5. 5妹いも妹いもいもににに告つ告つつげげげつつつややや伊母爾都宜都夜

引用の仕方

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現代語訳

やぶなみの里に宿を借りて、春雨に降り込められて出られずにいると、妻に告げてくれたであろうか。

意訳

巡察の途中、春の嵐に足止めされた家持が、待っている妻への言づてを案じた歌である。この年、妻の坂上大嬢は越中に来ていたと見られる。

語釈・文法注

文法・本文

やぶなみ
礪波郡の地名。
隱り障む
「こもりつつむ」。籠もって外出できずにいる。
告げつや
告げてくれたか。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4138番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年2月18日、礪波郡で風雨に足止めされた越中守大伴家持が詠んだ歌。

修辞

気遣い
妻への知らせを気にかける形で、旅の心細さを表す。

解説

巻第十八の最後の歌。墾田地の検察は、東大寺などの墾田を調べる仕事。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、667頁(コマ126)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、789頁(コマ158)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日