古典ライブラリー

万葉集 巻第三 408番

石竹の

大伴家持(おおとものやかもち)

あなたが撫子の花であったらいいのに。そうしたら毎朝手に取って、恋しく思わない日はないだろう。坂上大嬢を撫子の花にたとえた家持の歌。

朝露にぬれた撫子の花を、若い貴公子が手に取って見つめている

題詞大伴宿禰家持、同じき坂上家の大孃に贈れる歌一首

  1. 1石竹なでしこ石竹なでしこなでしこががが石竹之
  2. 2そのそのその花はな花はなはなにににもがもがもが其花爾毛我
  3. 3朝旦あさなさな朝旦あさなさなあさなさな朝旦
  4. 4手て手ててににに取と取ととりりり持も持ももちちちててて手取持而
  5. 5戀こ戀ここひひいぬぬぬ日ひ日ひひ無な無ななけむけむけむ不戀日將無

引用の仕方

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現代語訳

あなたが撫子のその花であったらいいのに。そうしたら毎朝手に取り持って、恋しく思わない日はないだろうに。

意訳

家持は、恋しい坂上大嬢が撫子の花であったら、毎朝手に取っていつも一緒にいられるのにと願う。撫子は家持が特に好んだ花で、大嬢へのいとおしさが素直に表れている。

語釈・文法注

文法・本文

花にもが
「もが」は願望。花であったらいいのに。
朝旦
「あさなさな」は毎朝。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残し、その編纂に深くかかわったとされる。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・408番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴家持が、坂上家の大嬢に贈った歌。

修辞

譬喩
撫子の花に、恋人をたとえる。

解説

家持は撫子を愛し、のちに越中でも庭に撫子を植えて妻をしのぶ歌を詠んでいる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、115頁(コマ61)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、118頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日