古典ライブラリー

万葉集 巻第四 700番

斯くしてや

大伴家持(おおとものやかもち)

こうして、やはり引き返すのだろうか。近くもない道のりを、苦労してやって来たのに。娘子の家の門まで来て逢えなかった家持の歌。

夜、閉ざされた門の前で、若い貴公子が立ちつくしている

題詞大伴宿禰家持、娘子の門に到りて作れる歌一首

  1. 1斯か斯かかくくくしししてててややや如此爲而哉
  2. 2なほなほなおややや退まか退まかまからららむむん猶八將退
  3. 3近ちか近ちかちかからからからぬぬぬ不近
  4. 4道みち道みちみちののの間あひだ間あひだあいだををを道之間乎
  5. 5なづみなづみなずみ參まゐ參まゐまい來き來ききててて煩參來而

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

こうして、やはり引き返すのだろうか。近くもない道のりを、苦労してやって来たのに。

意訳

家持は遠い道を苦労して娘子の家の門までやって来たが、門は開かず逢えなかった。このまま帰るしかないのかと、やるせない思いを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

なづみ
難儀して、苦労して。
參來て
「まゐく」は参上する。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残し、その編纂に深くかかわったとされる。
出典
『万葉集』巻第四・相聞・700番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴家持が娘子の家の門まで来て詠んだ歌。

修辞

倒置
結句に「なづみ參來て」を置き、苦労を強調する。

解説

若い家持の恋の一場面を伝える歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、175頁(コマ91)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、185頁(コマ98)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日