古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4141番

春まけて 物がなしきに

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月1日、大伴家持が、飛び翔る鴫を見て詠んだ歌。春になってなんとなく物悲しいのに、夜が更けて羽ばたいて鳴く鴫は、誰の田に住んでいるのだろうかという歌。

春の夜更けの田に、羽ばたいて鳴く鴫

題詞翻び翔る鴫を見て作れる歌一首

  1. 1春はる春はるはるまけまけまけててて春儲而
  2. 2物もの物ものものがなしきがなしきがなしきににに物悲爾
  3. 3さささ夜よ夜よよ更ふ更ふふけけけててて三更而
  4. 4羽は羽ははぶきぶきぶき鳴な鳴ななくくく鴫しぎ鴫しぎしぎ羽振鳴志藝
  5. 5誰た誰たたががが田た田たたにににかかか住す住すすむむむ誰田爾加須牟

引用の仕方

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現代語訳

春になって、なんとなく物悲しいのに、夜が更けて羽ばたいて鳴く鴫は、誰の田に住んでいるのだろうか。

意訳

春の夜更けの物悲しさの中で、羽音を立てて鳴く鴫の声を聞き、その住む田を思いやった歌である。家持の春愁の歌の始まりとされる。

語釈・文法注

文法・本文

春まけて
春になって。
物がなしき
なんとなく悲しい。
羽ぶき
羽ばたいて。
鴫
「しぎ」。水辺に住む鳥。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4141番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月1日、越中守大伴家持が詠んだ歌。

修辞

春愁
春の物悲しさを詠む。

解説

「春まけて物がなしき」は、のちの家持の春愁三首(4290〜4292番)に通じる心境である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、677頁(コマ131)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、799頁(コマ163)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日