古典ライブラリー

万葉集 巻第二十 4514番

蒼海原 風波なびき

大伴家持(おおとものやかもち)

天平宝字2年2月10日、内相藤原仲麻呂の家で、渤海へ遣わされる大使小野田守たちを送る宴のために大伴家持が作った歌。青い海原の風も波も穏やかになって、行きも帰りも無事で、船は速く進むだろうという歌。

穏やかな青い海原を進む遣渤海使の船

題詞二月十日、内相の宅にて渤海大使小野田守朝臣等を餞する宴の歌一首

  1. 1蒼海原あをうなばら蒼海原あをうなばらあおうなばら阿乎宇奈波良
  2. 2風かぜ風かぜかぜ波なみ波なみなみなびきなびきなびき加是奈美奈妣伎
  3. 3ゆくさゆくさゆくさくさくさくさ由久左久佐
  4. 4つつむつつむつつむことことことなくなくなく都都牟許等奈久
  5. 5船ふね船ふねふねははは早はや早はやはやけけけむむん布禰波波夜家無

引用の仕方

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現代語訳

青い海原の風も波も穏やかになって、行きも帰りも、障りなく、船は速く進むことだろう。

意訳

渤海へ渡る使節の船旅の無事と速い航海を祈って詠んだ餞の歌である。

語釈・文法注

文法・本文

渤海
中国東北部から朝鮮半島北部にあった国。
風波なびき
風も波も穏やかになって。
ゆくさくさ
行く時も帰る時も。
つつむことなく
障りなく。
早けむ
速いだろう。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第二十・部立なし・4514番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平宝字2年2月10日、藤原仲麻呂の家で遣渤海大使小野田守らを送る宴のために家持が用意した歌。

修辞

祝福
航海の無事を予祝する。

解説

小野田守はこの年に渤海に渡り、同年9月に渤海使を伴って帰国した。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、753頁(コマ169)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、891頁(コマ209)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日