古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4070番

一本の なでしこ植ゑし

大伴家持(おおとものやかもち)

天平20年4月、都へ上る国師の従僧清見を送る宴で、大伴家持が庭のなでしこを詠んだ歌。一本のなでしこを植えたその心は、誰に見せようと思い始めたのだろうかという歌。

国守の館の庭に一本咲くなでしこの花

題詞庭中の牛麥の花を詠める歌一首

  1. 1一ひと一ひとひと本もと本もともとののの比登母等能
  2. 2なでしこなでしこなでしこ植う植ううゑゑえししし奈泥之故宇惠之
  3. 3其そ其そそののの心こころ心こころこころ曾能許己呂
  4. 4誰たれ誰たれたれににに見み見みみせせせむむんととと多禮爾見世牟等
  5. 5思おも思おもおもひひい初そ初そそめめめけむけむけん於母比曾米家牟

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

一本のなでしこを植えたその心は、誰に見せようと思い始めたのだろうか。

意訳

都へ上る僧清見を送る宴で、庭に一本植えたなでしこは、ほかならぬあなたに見せたいと思って植えたのだと、別れを惜しむ心を詠んだ歌である。

語釈・文法注

文法・本文

一本の
一株の。
思ひ初めけむ
思い始めたのだろうか。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4070番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平20年4月、越中守大伴家持が、都へ上る僧清見を送る宴で詠んだ歌。

修辞

自問
「誰に見せむと」と問いかけ、答えを相手に託す。

解説

国師は、諸国に置かれて僧尼を監督した僧官。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、650頁(コマ118)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、767頁(コマ147)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日