万葉集 巻第十七 4026〜4027番
鳥總立て 船木伐るといふ
天平20年春、大伴家持が能登郡の香島の津から船出して、熊来村へ向かったときに詠んだ歌二首。鳥総を立てて船材を伐るという能登の島山は、今日見ると木立が茂っている、幾代を経た神々しさかという旋頭歌と、香島から熊来へ漕ぐ船の楫を操る間もないほど絶えず都が思われるという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞能登郡にて香島津より發船して、熊來村を射して往きし時作れる歌二首
現代語訳
〔4026〕鳥総を立てて船材を伐り出すという能登の島山は、今日見ると木立が茂っている。幾代を経た神々しさなのか。
〔4027〕香島から熊来を目指して漕ぐ船の、楫を操る間もないほど、絶えず都が思われる。
意訳
能登の香島の津から熊来へ船で渡ったときの歌である。船材の産地として知られた島山の茂る木立に神々しさを感じて旋頭歌に詠み、絶え間なく漕ぐ楫の動きに寄せて、都への思いを詠む。
語釈・文法注
文法・本文
- 鳥總立て
- 「とぶさたて」。木を伐った後、梢を切り株に立てて山の神を祭ること。
- 船木
- 「ふなぎ」。船を造るための材木。
- 能登の島山
- 能登島の山。
- 幾代神びぞ
- 幾代を経て神々しくなったのか。
- 香島
- 「かしま」。今の七尾市の港。
- 熊來
- 「くまき」。今の七尾市中島町。
- 楫取る間なく
- 楫を操る間もないほど絶えず。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十七・部立なし・4026〜4027番
- 歌体
- 旋頭歌(五七七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平20年春、越中守大伴家持が出挙のために越中の諸郡を巡行したときの歌の一つ(4021〜4029番)。能登の香島の津から熊来村へ船で向かったときの歌。
修辞
- 序詞
- 4027番の「香島より熊來をさして漕ぐ船の楫取る」が「間なく」を導く。
解説
4026番は家持の旋頭歌で、巻十七には珍しい形である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、638頁(コマ112)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、750頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日