古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4146〜4147番

夜ぐたちに 寢覺めて居れば

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月2日の夜、大伴家持が千鳥の鳴くのを聞いて詠んだ歌二首。夜更けに目覚めていると、川の瀬を求めて心もしおれるほどに鳴く千鳥よという歌と、夜更けて鳴く川千鳥の声に、なるほど昔の人も心ひかれてきたのだという歌。

夜更けの川瀬で鳴く千鳥

題詞夜の裏に千鳥の喧くを聞く歌二首

  1. 1夜よ夜よよぐたちぐたちぐたちににに夜具多知爾4146
  2. 2寢ね寢ねね覺ざ覺ざざめめめててて居を居をおれれればばば寢覺而居者
  3. 3河かは河かはかわ瀨せ瀨せせ尋と尋ととめめめ河瀨尋
  4. 4情こころ情こころこころももも萎し萎ししぬぬぬににに情毛之奴爾
  5. 5鳴な鳴ななくくく千鳥ちどり千鳥ちどりちどりかもかもかも鳴知等理賀毛
  6. 6夜よ夜よよぐたちぐたちぐたちててて夜降而4147
  7. 7鳴な鳴ななくくく河かは河かはかわ千鳥ちどり千鳥ちどりちどり鳴河波知登里
  8. 8うべうべうべしししこそこそこそ宇倍之許曾
  9. 9昔むかし昔むかしむかしののの人ひと人ひとひとももも昔人母
  10. 10しぬびしぬびしぬび來き來ききにににけれけれけれ之奴比來爾家禮

引用の仕方

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現代語訳

〔4146〕夜更けに目を覚ましていると、川の瀬を求めて、心もしおれるほどに鳴く千鳥であることよ。

〔4147〕夜が更けて鳴く川千鳥の声を、なるほど昔の人も心ひかれて賞美してきたのだった。

意訳

春の夜更け、寝覚めの床で千鳥の声を聞き、その哀切な声に心をしおらせつつ、古人が千鳥の声を愛でてきたわけを悟った歌である。

語釈・文法注

文法・本文

夜ぐたち
夜更け。
尋め
「とめ」。探し求めて。
萎ぬに
「しぬに」。しおれるほどに。
うべしこそ
なるほど。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4146〜4147番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月2日の夜、越中守大伴家持が千鳥の声を聞いて詠んだ歌。

修辞

懐古
4147番で、昔の人の心に思いを寄せる。

解説

柿本人麻呂の「淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ」(266番)を思わせる。

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出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、677頁(コマ131)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、800頁(コマ164)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日