古典ライブラリー

万葉集 巻第六 1040番

ひさかたの 雨は零り重け

大伴家持(おおとものやかもち)

雨よ降り続け。思う人の家に、今夜は明かしていこう。安積親王が藤原八束の家で宴をしたときの大伴家持の歌。

雨の降る夜、屋敷の灯火のもとで、若い皇子と官人たちが宴を続けている

題詞安積親王、左少辨藤原八束朝臣の家に宴せる日、內舍人大伴宿禰家持の作れる歌一首

  1. 1ひさかたひさかたひさかたののの久堅乃
  2. 2雨あめ雨あめあめははは零ふ零ふふりりり重し重ししけけけ雨者零敷
  3. 3念おも念おもおもふふう子こ子ここののの念子之
  4. 4宿やど宿やどやどににに今こ今ここ夜よひ夜よひよいははは屋戸爾今夜者
  5. 5明あか明あかあかしししててて行ゆ行ゆゆかかかむむん明而將去

引用の仕方

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現代語訳

(ひさかたの)雨よ、降り続け。思う人の家に、今夜は夜を明かしていこう。

意訳

安積親王が藤原八束の家で宴をしたとき、家持は、雨がもっと降り続けばいい、そうすれば帰らずにすむから、今夜はこの家で夜を明かそうと歌い、主人へのもてなしの礼と親しみを表している。

語釈・文法注

文法・本文

零り重け
「しく」は重なる、しきりに降る。命令形。
念ふ子
親しく思う人。ここは主人の八束をさす。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第六・雑歌・1040番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
安積親王が左少弁藤原八束の家で宴をした日に、内舎人の大伴家持が詠んだ歌。

修辞

枕詞
「ひさかたの」が「雨」にかかる。

解説

安積親王は聖武天皇の皇子で、天平16年(744)に急死した。家持は親王に親しく仕え、その死を悼む挽歌を残している(巻第三の475〜480番)。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、249頁(コマ128)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、272頁(コマ142)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日