万葉集 巻第十七 4024番
立山の 雪し來らしも
天平20年春、大伴家持が新河郡の延槻川を渡るときに詠んだ歌。立山の雪解け水が流れて来たらしい、延槻川の渡り瀬で馬の鐙を水に浸してしまうという歌。
場面イラスト(準備中)
題詞新河郡にて延槻河を渡る時作れる歌一首
現代語訳
立山の雪が解けて流れて来たらしい。延槻川の渡り瀬で、鐙を水に浸してしまうことだ。
意訳
春の延槻川が立山の雪解け水で増水し、馬で渡ると鐙まで水に浸かるほどであった。その深さから、遠い立山の雪解けを思いやった歌である。
語釈・文法注
文法・本文
- 雪し來らしも
- 雪(解けの水)が流れて来たらしい。
- 延槻の河
- 「はひつきのかは」。今の早月川。
- 鐙浸かすも
- 鐙を水に浸してしまうことだ。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第十七・部立なし・4024番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平20年春、越中守大伴家持が出挙のために越中の諸郡を巡行したときの歌の一つ(4021〜4029番)。
修辞
- 推量
- 目の前の増水から、立山の雪解けを「らし」で推し量る。
解説
前年に「立山の賦」(4000番)を詠んだ家持が、その雪解け水を実際に渡って詠んだ歌である。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、637頁(コマ111)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、750頁(コマ139)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日