万葉集 巻第二十 4468〜4469番
現身は 數なき身なり
病に臥して世の無常を悲しみ、仏道を修めたいと思って大伴家持が作った歌二首。現世の身ははかない身だ、山河の清らかな景色を見ながら仏の道を尋ねようという歌、空を渡る日の光と競うように急いで尋ねよう、清らかなその道にまた巡り会うためにという歌。
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題詞病に臥して無常を悲しみ、修道を欲して作れる歌二首
現代語訳
〔4468〕この世の身は、数にも入らないはかない身である。山河の清らかな景色を見ながら、仏の道を尋ね求めよう。
〔4469〕空を渡る日の光と競うように、急いで尋ね求めよう。清らかなその道に、来世でもまた巡り会うために。
意訳
病の床で人の命のはかなさを感じ、仏道を求めようと決意した歌である。一族を戒めた長歌と同じ日に作られ、家持の心の揺れがうかがえる。
語釈・文法注
文法・本文
- 現身
- 「うつせみ」。この世に生きる身。
- 數なき身
- 数にも入らないはかない身。
- 尋ねな
- 尋ね求めよう。
- 渡る日の陰に競ひて
- 移っていく日の光と競って。時を惜しんで。
- またも遇はむため
- 再び巡り会うために。
和歌
- 作者
- 大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。 - 出典
- 『万葉集』巻第二十・部立なし・4468〜4469番
- 歌体
- 短歌(五七五七七)
- 時期
- 第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
- 状況
- 天平勝宝8年6月17日、病に臥した家持が作った歌。
修辞
- 仏教思想
- 無常観と求道の思いを詠む。
解説
万葉集で仏道への志をはっきり詠んだ歌は少ない。
関連
出典
- 底本
- 佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、745頁(コマ165)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 原文
- 佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、880頁(コマ204)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日