古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4217番

卯の花を 腐す霖雨の

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年5月、長雨の晴れた日に大伴家持が詠んだ歌。卯の花を腐らせる長雨の、出水に寄ってくる木屑のように、寄り添ってくれる人がいればよいのにという歌。

長雨の後の川に、木屑が流れ寄っている

題詞霖雨の晴るる日作れる歌一首

  1. 1卯う卯ううののの花はな花はなはなををを宇能花乎
  2. 2腐くた腐くたくたすすす霖雨ながめ霖雨ながめながめののの令腐霖雨之
  3. 3水始みづはな水始みづはなみずはなににに始水逝
  4. 4縁よ縁よよるるる木糞こづみ木糞こづみこずみなすなすなす緣木積成
  5. 5縁よ縁よよらららむむん兒こ兒ここもがもがもがももも將因兒毛我母

引用の仕方

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現代語訳

卯の花を腐らせる長雨の、出水の先に寄って来る木屑のように、寄り添ってくれる人がいればよいのに。

意訳

長雨の出水に流れ寄る木屑の様子から、自分に寄り添ってくれる人を求める思いを導いた歌である。

語釈・文法注

文法・本文

腐す
「くたす」。腐らせる。
霖雨
「ながめ」。長雨。
水始
「みづはな」。出水の先端。白文は「始水逝」。
木糞
「こづみ」。木屑、流れ寄る木片。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4217番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年5月、長雨の晴れた日に越中守大伴家持が詠んだ歌。

修辞

序詞
「卯の花を腐す霖雨の水始に縁る木糞なす」が「縁らむ」を導く。

解説

五月の長雨(梅雨)は「卯の花腐し」と呼ばれる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、691頁(コマ138)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、816頁(コマ172)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日