古典ライブラリー

万葉集 巻第三 414番

あしひきの 岩根凝しみ

大伴家持(おおとものやかもち)

山の岩根がごつごつと固いので、菅の根を引き抜こうとしても難しいと思い、しるしだけを結んでおく。まだ手に入らない恋人を、岩根の菅にたとえた家持の歌。

山の岩の間に生えた菅に、若い男が白い縄を結びつけている

題詞大伴宿禰家持の歌一首

  1. 1あしひきあしひきあしひきののの足日木能
  2. 2岩いは岩いはいわ根ね根ねね凝こご凝こごこごしみしみしみ石根許其思美
  3. 3菅すが菅すがすがののの根ね根ねねををを菅根乎
  4. 4引ひ引ひひかかかばばば難かた難かたかたみみみととと引者難三等
  5. 5標しめ標しめしめのみのみのみぞぞぞ結ゆ結ゆゆふふう標耳曾結焉

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

(あしひきの)山の岩根がごつごつしているので、菅の根を引き抜けば難しいだろうと、しるしだけを結んでおくことだ。

意訳

岩の間に生えた菅は、根がしっかり張っていて引き抜くのが難しい。それで家持は、自分のものだというしるしだけを結んでおく。周りの事情でまだ結ばれることのできない恋人を、せめて誰にも渡さないようにしておきたいという思いを歌っている。

語釈・文法注

文法・本文

凝しみ
「こごし」はごつごつと険しい。険しいので。
難みと
難しいだろうと。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残し、その編纂に深くかかわったとされる。
出典
『万葉集』巻第三・譬喩歌・414番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴家持の譬喩歌。巻第三の譬喩歌はこの歌で終わり、次の415番から挽歌になる。

修辞

譬喩
岩根の菅に、手の届きにくい恋人をたとえる。

解説

「標結ふ」は394・400・401番にも見え、この巻の譬喩歌に多く用いられている。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、116頁(コマ62)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、119頁(コマ65)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日