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平安文学の名作 蜻蛉日記 ― 揺れる想いを綴った、ある女性のまなざし。紅葉の散る御殿の縁で、長い黒髪に色とりどりの十二単をまとった女性が、文机にほおづえをつき、筆を手に物思いにふける。灯台と硯箱のそばに、月夜の秋草を描いた冊子が開かれ、遠くに夕日の沈む湖と寺の堂塔が見えるイメージイラスト。

蜻蛉日記

藤原兼家の妻となった一人の女性が、二十年にわたる結婚生活の喜びと苦しみ、息子道綱への思いを書きつづった日記を、章ごとに原文で読みます。

作品について

『蜻蛉日記』は、平安時代中期の女流日記です。作者は藤原倫寧の娘で、藤原兼家(のちの摂政・関白)の妻となり、道綱を産んだことから「藤原道綱母」と呼ばれます。天暦八年(954)の兼家の求婚から、天延二年(974)の大晦日までのおよそ二十年を、上・中・下の三巻に書いています。

上巻は、求婚と結婚、道綱の誕生、兼家が「町の小路の女」のもとへ通うようになった苦しみ、母の死などを、のちに振り返ってまとめたものです。中巻は、兼家との仲がしだいに遠のくなかで、唐崎祓、石山詣、鳴滝の般若寺への参籠など、家を出て心をしずめようとする日々を描きます。下巻は、養女を迎え、道綱の成長と恋を見守りながら、兼家との夫婦の縁が絶えていくさまを静かに書きとめています。

書名は、上巻の結びの「なほものはかなきを思へば、あるかなきかの心ちするかげろふの日記といふべし」によります。物語の「そらごと」に対して自分の身の上をありのままに書くと序で述べたこの日記は、女性が自分の内面を見つめて書いた最初の本格的な散文作品とされ、『和泉式部日記』『紫式部日記』『更級日記』や『源氏物語』に大きな影響を与えました。

章

上巻(天暦八年〜安和元年)

  1. 第1章序と兼家の求婚954
  2. 第2章父の旅立ちと町の小路の女954–955
  3. 第3章町の小路の女と千鳥の歌956–957
  4. 第4章女の出産と秋の贈答957
  5. 第5章町の小路の女の没落と長歌958
  6. 第6章兼家の長歌と章明親王958–962
  7. 第7章宮の薄とひぐらしの声962–964
  8. 第8章母の死964
  9. 第9章四十九日と一周忌、姉の旅立ち964–965
  10. 第10章兼家の病966
  11. 第11章葵祭と菖蒲の節会966
  12. 第12章稲荷・賀茂詣と村上天皇の崩御966–967
  13. 第13章貞観殿の御方との交わり967–968
  14. 第14章初瀬詣968
  15. 第15章宇治の迎えと上巻の結び968

中巻(安和二年〜天禄二年)

  1. 第16章中巻の始まりと安和の変969
  2. 第17章閏五月の病と遺書969
  3. 第18章高明の北の方に贈る長歌969
  4. 第19章御嶽詣と屏風歌969
  5. 第20章賭弓と道綱の舞970
  6. 第21章途絶える訪れ970
  7. 第22章唐崎祓970
  8. 第23章出家の思いと道綱の鷹970
  9. 第24章石山詣への旅立ち970
  10. 第25章石山の夜と帰京970
  11. 第26章道綱の元服と雨の夜970
  12. 第27章素通りする車と呉竹971
  13. 第28章長精進と不思議な夢971
  14. 第29章鳴滝への出立と夜の迎え971
  15. 第30章鳴滝の山住み971
  16. 第31章山を下りよとの勧め971
  17. 第32章鳴滝への便り971
  18. 第33章兼家の甥の見舞い971
  19. 第34章山を下りる971
  20. 第35章下山の後971
  21. 第36章二度目の初瀬詣971
  22. 第37章時雨の秋と中巻の結び971

下巻(天禄三年〜天延二年)と巻末歌集

  1. 第38章下巻の始まりと大納言昇進972
  2. 第39章夢解きと養女の話972
  3. 第40章養女を迎える972
  4. 第41章紅梅の下の兼家972
  5. 第42章賀茂詣と鴫の羽がき972
  6. 第43章隣家の火事と道綱972
  7. 第44章賀茂祭と大和だつ女972
  8. 第45章蝉の声と死の予感972
  9. 第46章伊尹の死と八幡の祭972–973
  10. 第47章餌袋の歌と中川への転居973
  11. 第48章氷を食う童と道綱の右馬助973–974
  12. 第49章右馬頭遠度の求婚974
  13. 第50章風の中の右馬頭974
  14. 第51章卯月の約束とほととぎす974
  15. 第52章女絵の歌と端午の節句974
  16. 第53章月の光で読む手紙974
  17. 第54章疱瘡の流行と堀河殿の歌974
  18. 第55章臨時の祭と日記の終わり974
  19. 第56章巻末歌集(一)歌集
  20. 第57章巻末歌集(二)歌集

このページの本文について

原文は、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(明治36年)所収の「蜻蛉日記」を底本としています。ウィキソースの同書の翻刻と国立国会図書館のOCRテキストを下書きにし、底本の画像と照らして翻刻しました。底本の表記(旧字体・歴史的仮名遣い・踊り字)をそのまま翻刻し、句読点と「」は底本に従いました。本文の脇に小さく刷られた異本の注記や人名の注は翻刻に入れていません。底本の本文には意味のとりにくい箇所がありますが、そのまま翻刻し、語釈・文法注で通行本文の読みを示しました。

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