古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4163番

妹が袖 われまくらかむ

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月、大伴家持があらかじめ作っておいた七夕の歌。妻の袖を私は枕にしよう、天の川の瀬に霧よ立ち渡れ、夜が更けないうちにという歌。

霧の立ち込める天の川の瀬

題詞豫て作れる七夕の歌一首

  1. 1妹いも妹いもいもががが袖そで袖そでそで妹之袖
  2. 2われわれわれまくらかまくらかまくらかむむん和禮枕可牟
  3. 3河かは河かはかわののの瀨せ瀨せせににに河湍爾
  4. 4霧きり霧きりきり立た立たたちちち渡わた渡わたわたれれれ霧多知和多禮
  5. 5さささ夜よ夜よよふけふけふけぬぬぬとととににに左欲布氣奴刀爾

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

妻の袖を私は枕にしよう。天の川の瀬に霧よ立ちこめよ。夜が更けないうちに。

意訳

牽牛の身になって、年に一度の逢瀬の夜を人目から隠してくれるよう、川の瀬に霧が立ちこめることを願った七夕の歌である。

語釈・文法注

文法・本文

まくらかむ
枕にしよう。
ふけぬとに
更けないうちに。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4163番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月、越中守大伴家持が七夕に備えて前もって作った歌。

修辞

呼びかけ
「霧立ち渡れ」と霧に呼びかける。

解説

家持は時節に先立って歌を作っておくことがあった(4098番など)。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、680頁(コマ133)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、803頁(コマ165)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日