古典ライブラリー

万葉集 巻第八 1462〜1463番

吾が君に 戲奴は戀ふらし

大伴家持(おおとものやかもち)

ご主人に戯奴は恋い焦がれているらしい。いただいた茅花を食べても、ますますやせていく。あなたの形見の合歓の木は、花ばかり咲いて、たぶん実はならないでしょう。家持が紀女郎に答えた歌二首。

若い家持が茅花を手にやせた姿でおどけ、合歓の木を指さしている

題詞大伴家持、贈り和ふる歌二首

  1. 1吾わ吾わわががが君きみ君きみきみににに吾君爾1462
  2. 2戲わ戲わわ奴け奴けけははは戀こ戀ここふふうらしらしらし戲奴者戀良思
  3. 3給たば給たばたばりりりたるたるたる給有
  4. 4茅つ茅つつ花ばな花ばなばなををを喫は喫ははめめめどどど茅花乎雖喫
  5. 5いやいやいや痩や痩ややせせせににに痩や痩ややすすす彌瘦爾夜須
  6. 6吾わぎ吾わぎわぎ妹も妹もも子こ子ここががが吾妹子之1463
  7. 7形かた形かたかた見み見みみののの合ね合ねね歡ぶ歡ぶぶははは形見乃合歡木者
  8. 8花はな花はなはなのみのみのみににに花耳爾
  9. 9咲さ咲ささきききててて蓋けだ蓋けだけだしくしくしく咲而蓋
  10. 10實み實みみににに成な成なならららじじじかもかもかも實爾不成鴨

引用の仕方

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現代語訳

〔1462〕ご主人さまに、戯奴は恋い焦がれているらしい。いただいた茅花を食べても、ますますやせていくばかりです。

〔1463〕あなたの形見の合歓の木は、花ばかり咲いて、たぶん実はならないのではないでしょうか。

意訳

家持は紀女郎の戯れに合わせ、自分を「戯奴」と称して、ご主人さまに恋い焦がれて茅花を食べてもやせるばかりだと答える。そして、あなたの合歓の花は花ばかりで実を結ばない、つまりあなたの思わせぶりは本気ではないのでしょうと切り返している。

語釈・文法注

文法・本文

給りたる
いただいた。
蓋しく
たぶん、おそらく。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した。
出典
『万葉集』巻第八・相聞・1462〜1463番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
大伴家持が紀女郎の歌に答えた歌二首。

修辞

寓意
花ばかりで実のならない合歓に、実のない恋を重ねる。

解説

紀女郎の戯れに巧みに応じた、若い家持の機知がうかがえる。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、309頁(コマ158)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、346頁(コマ179)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日