古典ライブラリー

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歴史物語の名作 大鏡 ― 栄華の裏にある、人と時代を語る。藤の花と桜の咲く寝殿造の庭を背に、紫の装束の貴族が座り、手前で二人の老翁が書物を広げて昔語りをするイメージイラスト。

大鏡

雲林院の菩提講に集まった人々の前で、百歳をはるかに超えた大宅世継と夏山繁樹という二人の老人が、文徳天皇から後一条天皇までの帝と、藤原氏の大臣たちの物語を語り合う歴史物語を、章ごとに原文で読みます。

作品について

『大鏡』は、平安時代後期に成った歴史物語です。作者は未詳で、成立は白河院の院政期ごろ(11世紀末〜12世紀初め)とする説が有力です。物語の中の「今」は万寿二年(1025)、藤原道長が出家して栄華の頂点にあったころに設定されています。

舞台は京の北、紫野の雲林院で行われた菩提講(法華経の講説の法会)。講師の到着を待つあいだに、大宅世継(おおやけのよつぎ)と夏山繁樹(なつやまのしげき)という二人の老人が出会い(多くの本では世継は百九十歳、繁樹は百八十歳。このページの底本では百五十歳と百四十歳)、若い侍の合いの手を受けながら、自分の目で見、耳で聞いてきた昔のことを語り始めます。語り手のことばをそのまま写したという形をとり、聞き手の反応やしぐさまで書き込まれているのが、この作品の大きな特色です。

本文は、帝の一代ごとの事跡を記した「帝紀」(文徳天皇から後一条天皇まで十四代)と、藤原冬嗣から道長までの大臣の伝記を記した「列伝」を中心とし、そのあとに藤原氏の歴史をまとめた「藤氏物語」、宇多・醍醐・村上の時代などの逸話を集めた「昔物語」が続きます。中国の歴史書『史記』の紀伝体にならった構成で、仮名で書かれた歴史物語としては『栄花物語』に続くものです。

世継が語ろうとするのは「たゞ今の入道殿下」道長の栄華がどのようにしてもたらされたかです。そのために道長に至る藤原氏の人々を順にたどりますが、菅原道真の左遷、花山天皇の出家、兄弟の争い、小一条院の東宮退位など、権力をめぐる人間模様が、ときに批判的なまなざしも交えて生き生きと語られます。『今鏡』『水鏡』『増鏡』と続く「鏡物」の最初の作品です。

章

序 雲林院の菩提講(巻一)

  1. 第1章雲林院の菩提講世継・繁樹
  2. 第2章世継の語り始め世継・繁樹

帝紀 文徳天皇から後一条天皇まで(巻一)

  1. 第3章文徳天皇・清和天皇文徳・清和
  2. 第4章陽成院・光孝天皇陽成・光孝
  3. 第5章宇多天皇宇多
  4. 第6章醍醐天皇・朱雀天皇醍醐・朱雀
  5. 第7章村上天皇・冷泉院・円融院村上・冷泉・円融
  6. 第8章花山院の出家花山
  7. 第9章一条院・三条院一条・三条
  8. 第10章後一条院と二つの鏡の歌後一条

大臣列伝 冬嗣から時平まで(巻二)

  1. 第11章大臣のはじめ大臣の歴史
  2. 第12章冬嗣・良房・良相・長良冬嗣・良房
  3. 第13章基経基経
  4. 第14章時平と道真の左遷時平・道真
  5. 第15章筑紫の道真道真
  6. 第16章時平の子孫保忠・敦忠
  7. 第17章時平と笑いの話顕忠・時平

大臣列伝 仲平から師尹まで(巻三)

  1. 第18章仲平・忠平仲平・忠平
  2. 第19章実頼と佐理実頼・佐理
  3. 第20章実頼の子孫実資
  4. 第21章頼忠頼忠
  5. 第22章公任の三舟の才公任
  6. 第23章師尹と宣耀殿女御師尹
  7. 第24章済時と八宮の大饗済時
  8. 第25章敦明親王の東宮辞退敦明親王
  9. 第26章さびれる東宮御所敦明親王
  10. 第27章道長への申し出敦明親王・道長
  11. 第28章院号と悲しむ人々小一条院
  12. 第29章済時の娘の訴え済時の娘

大臣列伝 師輔(巻四)

  1. 第30章師輔と中宮安子師輔・安子
  2. 第31章安子の人柄と為平親王安子・為平親王
  3. 第32章為平親王の子の日と大斎院為平親王・選子内親王
  4. 第33章安子の妹たちと高光の出家登子・高光
  5. 第34章師輔の百鬼夜行と双六師輔・元方
  6. 第35章師輔の夢と貫之の歌師輔・貫之

大臣列伝 伊尹から兼家まで(巻五)

  1. 第36章伊尹の栄華伊尹
  2. 第37章挙賢・義孝兄弟の死挙賢・義孝
  3. 第38章行成の蔵人頭行成
  4. 第39章朝成の怨霊朝成
  5. 第40章行成の才覚行成
  6. 第41章義懐と花山天皇の御代義懐・花山天皇
  7. 第42章花山院の修行と奇行花山院
  8. 第43章花山院の風流花山院
  9. 第44章兼通と母后の御文兼通
  10. 第45章堀河中宮と顕光媓子・顕光
  11. 第46章朝光と北の方朝光
  12. 第47章兼通の最後の除目兼通・兼家
  13. 第48章為光と誠信為光・誠信
  14. 第49章公季と母の康子内親王準備中
  15. 第50章兼家(一)準備中
  16. 第51章兼家(二)準備中

大臣列伝 道隆・道兼(巻六)

  1. 第52章道隆(一)準備中
  2. 第53章道隆(二)準備中
  3. 第54章道隆(三)準備中
  4. 第55章道隆(四)準備中
  5. 第56章道隆(五)準備中
  6. 第57章道兼準備中

大臣列伝 道長(巻七)

  1. 第58章道長(一)準備中
  2. 第59章道長(二)準備中
  3. 第60章道長(三)準備中
  4. 第61章道長(四)準備中
  5. 第62章道長(五)準備中
  6. 第63章道長(六)準備中
  7. 第64章道長(七)準備中

藤氏物語(巻七)

  1. 第65章藤氏物語(一)準備中
  2. 第66章藤氏物語(二)準備中
  3. 第67章藤氏物語(三)準備中
  4. 第68章藤氏物語(四)準備中
  5. 第69章藤氏物語(五)準備中
  6. 第70章藤氏物語(六)準備中

昔物語(巻八)

  1. 第71章昔物語(一)準備中
  2. 第72章昔物語(二)準備中
  3. 第73章昔物語(三)準備中
  4. 第74章昔物語(四)準備中
  5. 第75章昔物語(五)準備中
  6. 第76章昔物語(六)準備中
  7. 第77章昔物語(七)準備中
  8. 第78章昔物語(八)準備中
  9. 第79章昔物語(九)準備中
  10. 第80章昔物語(十)準備中

「準備中」の章は順次公開します。章題は公開のときに内容に合わせて付け直すことがあります。

このページの本文について

原文は、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている『国史大系』第17巻(経済雑誌社編、明治34年。『宇治拾遺物語』『水鏡』『大鏡』『今鏡』『増鏡』を収める)の『大鏡』を底本としています。同書の『大鏡』は流布本系の八巻本で、編者が諸本と校合し、句点(。)を付けています。このサイトでは、底本の表記(旧字体・歴史的仮名遣い・踊り字・句点)をそのまま翻刻しました。底本の頭注(諸本の異同)、本文の行間に小さく入る注(年号・人名など)と、本文の脇のふりがなは入れていません。底本が「 」で囲んで衍字(余計な字)と示した所は除き、□で囲んで他本から補った所は本文に入れました。

底本には章の区切りがないので、このサイトでは序・帝紀・大臣列伝・藤氏物語・昔物語の順に、帝・大臣ごとのまとまりと分量をもとに章に分け、章題も付けました。巻末の「裏書」(漢文で書かれた補注)は載せていません。

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