新古今和歌集 巻第一 春歌上 20番
卷向の
巻向の檜原がまだ霞んで曇っていないので、小松の原に淡雪が降っている。

現代語訳
巻向の檜原がまだ霞んで曇っていないので、小松の原に淡雪が降っている。
意訳
巻向山の檜の林はまだ春霞に曇っていない。春はまだ浅く、小松の生える原には淡雪が降っている。大和の山の遠景と、小松原の近景を重ねて、早春の景色を描く。
語釈・文法注
- 卷向
- 大和国の地名で、三輪山の北にある巻向山のふもと。
- 檜原
- 檜の林。
- 曇らねば
- 「ね」は打消の「ず」の已然形、「ば」は順接の確定条件。曇らないので。
和歌
- 作者
- 大伴家持(おおとものやかもち) 718?–785
大伴旅人の子。越中守などを経て中納言に至った。『万葉集』の編纂に深く関わったとされ、同集に最も多くの歌を残す。繊細で抒情的な歌風で知られる。三十六歌仙の一人。 - 出典
- 『新古今和歌集』巻第一・春歌上・20番
- 歌体
- 短歌
- 状況
- 題しらず(詠まれた事情は伝わらない)。
解説
『万葉集』巻十の作者未詳歌「巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る」の異伝が、家持の歌として伝えられたもの。
関連
出典
- 底本
- 『新古今集』 短歌雑誌社編輯部校訂、紅玉堂書店、大正15年(1926)、4頁(コマ12)。流布本を底本とする。国立国会図書館デジタルコレクション(保護期間満了)
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部(本文は底本による。現代語訳・注は当サイト)
- 更新日