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徒然草 ― 人の世を見つめる、兼好のまなざし。紅葉に囲まれた山寺の縁側で、黒い頭巾に墨染めの衣を着た僧が筆を手に遠くの山並みと湖をながめ、かたわらに硯や巻物、冊子が置かれたイメージイラスト。

徒然草

鎌倉時代の末に、兼好法師が「つれづれなるままに」書きつけた随筆を、序段から第243段まで、章ごとに原文で読みます。

作品について

『徒然草』は、兼好法師(卜部兼好、1283ごろ〜1352ごろ)が書いた随筆です。鎌倉時代末期の元徳二年(1330)から翌年ごろにかけて、それまでに書きためたものをまとめたとする説が有力です。序段と243の段からなり、数行の短い段から数頁にわたる長い段まで、内容も長さもさまざまな文章が、ほとんど脈絡なく並んでいます。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と並べて、日本の三大随筆と呼ばれます。

書かれていることは、無常の世をどう生きるかという仏教的な思索から、恋や住まい、酒や友人、四季の情趣、有職故実(朝廷の儀式や慣例)、仁和寺の法師たちの失敗談、名人や達人の言葉まで、きわめて幅広いものです。「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」(第137段)のような美意識の表明や、「高名の木のぼり」(第109段)のような処世の教えは、今もよく読まれています。

兼好は、京都の吉田神社の神職の家である卜部氏の出身です。若いころは堀川家に仕え、後二条天皇の蔵人などをつとめましたが、三十歳ごろまでに出家し、比叡山の横川や京都の双ヶ岡などに住みました。二条為世の門下で「和歌四天王」の一人に数えられた歌人でもあります。「吉田兼好」の名は江戸時代以降に広まった呼び名です。『徒然草』は室町時代に歌人の正徹らに見いだされ、江戸時代には注釈書が数多く作られて、広く読まれるようになりました。

章

つれづれなるままに(序段〜第37段)

  1. 第1章つれづれなるままに序段〜6段
  2. 第2章あだし野の露と住まいのたたずまい第7段〜11段
  3. 第3章見ぬ世の友と和歌・旅・清貧第12段〜18段
  4. 第4章折節のうつりかはり第19段〜22段
  5. 第5章飛鳥川の淵瀬と過ぎにし方の恋しさ第23段〜29段
  6. 第6章人のなきあとと九月二十日の月第30段〜37段

無常と仁和寺の法師たち(第38〜76段)

  1. 第7章名利と賀茂の競べ馬第38段〜42段
  2. 第8章春の暮れの家と老いを待たぬ道第43段〜49段
  3. 第9章伊勢の鬼と仁和寺の法師たち第50段〜54段
  4. 第10章家は夏をむねとし、道心は住む所によらず第55段〜58段
  5. 第11章大事を思ひ立つ人と芋頭の僧都第59段〜65段
  6. 第12章鳥をつける枝と岩本・橋本第66段〜70段
  7. 第13章そら言の多き世と蟻のごとき人々第71段〜76段

人の心と世の中(第77〜136段)

  1. 第14章知ったかぶりと不具の美第77段〜84段
  2. 第15章偽りても賢を学ぶと猫また第85段〜89段
  3. 第16章赤舌日と二つの矢第90段〜97段
  4. 第17章一言芳談と荒れたる宿の女第98段〜104段
  5. 第18章女の性と寸陰を惜しむこと第105段〜108段
  6. 第19章高名の木のぼりとぼろぼろ第109段〜115段
  7. 第20章友とするにわろきもの第116段〜122段
  8. 第21章人間の大事と雅房大納言第123段〜128段
  9. 第22章人を苦しめず、分を知る第129段〜133段
  10. 第23章おのれを知ることと資季大納言のあらがひ第134段〜136段

花は盛りに(第137〜188段)

  1. 第24章花は盛りに第137段
  2. 第25章後の葵と家にありたき木第138段〜141段
  3. 第26章荒夷の一言と能をつかむとする人第142段〜150段
  4. 第27章資朝卿と機嫌を知ること第151段〜157段
  5. 第28章ことばの正しさと一道にたずさわる人第158段〜168段
  6. 第29章貝おほひと若き時・老いたる時第169段〜174段
  7. 第30章酒の功罪第175段〜176段
  8. 第31章松下禅尼と馬乗りの心得第177段〜186段
  9. 第32章一事を励むべし第187段〜188段

故実の聞き書きと晩年の思索(第189〜243段)

  1. 第33章不定と心得ぬるのみまことにて第189段〜194段
  2. 第34章有職故実の聞き書き第195段〜208段
  3. 第35章よろづの事は頼むべからず第209段〜216段
  4. 第36章大福長者と横笛の五の穴第217段〜219段
  5. 第37章楽の音と平家物語の作者第220段〜229段
  6. 第38章五条内裏の妖物と園の別当入道第230段〜233段
  7. 第39章出雲の獅子狛犬第234段〜237段
  8. 第40章近友が自讃にならひて第238段〜239段
  9. 第41章八つになりし年第240段〜243段

このページの本文について

原文は、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(明治36年)所収の「徒然草」(763〜860頁)を底本としています。底本の表記(旧字体・歴史的仮名遣い・踊り字)をそのまま翻刻し、句読点と「」は底本に従いました。本文の脇に小さく刷られた人名・書名の注や異本の注記は翻刻に入れていません。底本の誤植と思われる所や通行本文と違う所も底本どおりに翻刻し、各章の文法注に断りました。

国文大観の『徒然草』は、江戸時代に広く流布した烏丸光広の校訂本(烏丸本)の系統の本文です。底本には段の番号がなく、段の切れ目で行を改めるだけですが、ところどころ二つ以上の段が続けて刷られています。このサイトでは、今日広く使われている章段番号(序段と第1〜243段)に合わせて段を分け、さらに数段ずつ、内容のまとまりと分量をもとに当サイトで章にまとめて、章題を付けました。現代語訳と意訳では、段の始まりに〔第N段〕と記しています。

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