古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4175〜4176番

ほととぎす 今來喧き始む

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月、大伴家持がほととぎすを詠んだ歌二首。助詞の「も」「の」「は」を使わずに詠み、ほととぎすが今来て鳴き始めた、菖蒲を髪に挿す五月まで離れる日などあろうかという歌と、「も・の・は・て・に・を」の六つの助詞を使わずに詠み、わが家の門を鳴いて過ぎていくほととぎすは、いっそう心ひかれて、聞いても飽きないという歌。

門の上を鳴いて渡っていくほととぎす

題詞霍公鳥を詠める歌二首

  1. 1ほととぎすほととぎすほととぎす霍公鳥4175
  2. 2今いま今いまいま來き來きき喧な喧ななききき始そ始そそむむむ今來喧曾無
  3. 3菖蒲あやめぐさ菖蒲あやめぐさあやめぐさ菖蒲
  4. 4蘰かづら蘰かづらかずらくくくまでまでまでににに可都良久麻泥爾
  5. 5離か離かかるるるるるる日ひ日ひひあらあらあらめめめややや加流流日安良米也
  6. 6我わ我わわががが門かど門かどかどゆゆゆ我門從4176
  7. 7喧な喧ななききき過す過すすぎぎぎ渡わた渡わたわたるるる喧過度
  8. 8霍公鳥ほととぎす霍公鳥ほととぎすほととぎす霍公鳥
  9. 9いやいやいや懷なつ懷なつなつかしくかしくかしく伊夜奈都可之久
  10. 10聞き聞ききけけけどどど飽あ飽ああききき足た足たたらららずずず雖聞飽不足

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔4175〕ほととぎすが今来て鳴き始めた。菖蒲を髪飾りにする五月まで、離れる日などあろうか。

〔4176〕わが家の門を鳴いて過ぎていくほととぎすは、いっそう心ひかれて、聞いても聞き飽きない。

意訳

助詞を使わないという言葉遊びの趣向で詠んだほととぎすの歌である。4175番は「も・の・は」を、4176番は「も・の・は・て・に・を」を避けて詠む。

語釈・文法注

文法・本文

蘰くまでに
「かづらくまでに」。髪飾りにするまで。
離るる
「かるる」。離れる。
懷かしく
心ひかれて。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4175〜4176番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月、越中守大伴家持がほととぎすを詠んだ歌。

修辞

言語遊戯
特定の助詞を使わずに詠む。

解説

家持の言葉への関心を示す、趣向を凝らした歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、683頁(コマ134)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、806頁(コマ167)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日