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今鏡 ― 平安末期の動乱と人物を描く歴史物語。桜と紅葉に彩られた御殿の縁から、都の寺院や山並みを見わたす束帯の貴族と十二単の女性を描いたイメージイラスト。

今鏡

『大鏡』の後を継ぎ、後一条天皇から高倉天皇まで、十三代百四十六年の宮廷の歴史を、百五十歳を越える老女が語る歴史物語を、章ごとに原文で読みます。

作品について

『今鏡』は、平安時代の末、嘉応二年(1170)以後まもなく成立した歴史物語です。大和の初瀬に詣でた人々が、木陰で百五十歳を越える老女に出会い、その昔語りを聞くという形で書かれています。老女は『大鏡』の語り手大宅世継の孫で、若いころ紫式部に仕えて「あやめ」と呼ばれた人という設定です。『大鏡』が語り終えた万寿二年(1025)から嘉応二年までの歴史を受け継いで語るので、別名を『続世継』ともいいます。作者は藤原為経(寂超)とする説が有力です。

全十巻のうち、初めの三巻「すべらぎ」は後一条天皇から高倉天皇までの天皇の歴史(紀伝体の「本紀」にあたる部分)、次の三巻「藤波」は道長以後の藤原氏の摂関家と諸流、第七「村上の源氏」は村上源氏の人々、第八「みこたち」は皇子・皇女たちの列伝で、第九「むかしがたり」と第十「うちぎき」には、昔の逸話や和歌・物語をめぐる話が集められています。

保元・平治の乱の時代を含みながら、今鏡は政争や合戦をあまり語らず、宮廷の儀式や和歌・音楽・書道など、王朝の風雅と人々の才芸を好んで語ります。巻末の「作り物語の行方」では、紫式部が『源氏物語』を書いた罪で地獄に堕ちたという説に答えて物語を擁護しており、物語文学への深い愛着がうかがえます。『大鏡』『水鏡』『増鏡』とあわせて「四鏡」と呼ばれます。

章

第一「すべらぎの上」後一条天皇・後朱雀天皇・後冷泉天皇

  1. 第1章発端語り手の老女
  2. 第2章雲井後一条天皇
  3. 第3章子の日上東門院の出家
  4. 第4章初春後朱雀天皇
  5. 第5章星合中宮嫄子の死
  6. 第6章望月上東門院
  7. 第7章菊の宴後冷泉天皇
  8. 第8章こがねの御法後冷泉天皇
  9. 第9章司召後三条天皇

第二「すべらぎの中」後三条天皇・白河天皇・堀河天皇・鳥羽天皇・崇徳天皇

  1. 第10章たむけ後三条天皇
  2. 第11章御法の師後三条天皇
  3. 第12章紅葉のみかり白河天皇
  4. 第13章釣せぬ浦々白河院
  5. 第14章玉章堀河天皇
  6. 第15章所々の御寺堀河天皇の母后
  7. 第16章白河の花の宴鳥羽天皇
  8. 第17章鳥羽の御賀鳥羽天皇
  9. 第18章春のしらべ崇徳天皇
  10. 第19章八重の潮路崇徳院

第三「すべらぎの下」近衛天皇・後白河天皇・二条天皇・六条天皇・高倉天皇

  1. 第20章男山鳥羽院
  2. 第21章虫の音近衛天皇
  3. 第22章大内わたり後白河天皇
  4. 第23章内宴後白河天皇
  5. 第24章をとめの姿二条天皇
  6. 第25章ひなの別れ平治の乱
  7. 第26章花園のにほひ六条天皇
  8. 第27章二葉の松高倉天皇

第四「藤波の上」藤原氏の摂関(道長・頼通・教通・師実)

  1. 第28章藤波道長
  2. 第29章梅のにほひ頼通
  3. 第30章伏見の雪の朝師実・橘俊綱
  4. 第31章雲のかへし頼通の姫君たち
  5. 第32章白川のわたり教通
  6. 第33章はちすの露教通の子息たち
  7. 第34章小野のみゆき教通の姫君たち
  8. 第35章薄花桜師実
  9. 第36章波の上の盃師通
  10. 第37章宇治の川瀬忠実

第五「藤波の中」藤原氏の摂関(忠通・基実・基房)と頼長・師実の子孫

  1. 第38章みかさの松忠通
  2. 第39章菊の露忠通
  3. 第40章藤の初花基実・基房
  4. 第41章浜千鳥忠通の子女
  5. 第42章使合皇嘉門院
  6. 第43章かざり太刀頼長
  7. 第44章苔の衣師通の子孫
  8. 第45章花の山家忠とその一族
  9. 第46章水茎教長
  10. 第47章ふるさとの花の色僧となった公達

第六「藤波の下」藤原氏の諸流(頼宗・能信・公季など)

  1. 第48章絵合の歌頼宗
  2. 第49章唐人の遊び宗忠・宗輔
  3. 第50章旅寝の床宗通
  4. 第51章弓の音伊通
  5. 第52章雁がね成通
  6. 第53章ますみの影能信
  7. 第54章竹のよ閑院流・公実
  8. 第55章梅の木のもと実行
  9. 第56章花散る庭の面実能
  10. 第57章宮城野公能
  11. 第58章志賀のみそぎ待賢門院の宮たち

第七「村上の源氏」村上源氏(師房とその子孫)

  1. 第59章うたたね師房
  2. 第60章堀河の流れ師頼・師時
  3. 第61章夢の通ひ路師頼・師仲
  4. 第62章根合郁芳門院
  5. 第63章有栖川令子内親王
  6. 第64章紫のゆかり雅実
  7. 第65章新枕雅定
  8. 第66章武蔵野の草雅俊・顕仲
  9. 第67章藻塩の煙顕房の姫君

第八「みこたち」皇子・皇女たちと源氏の諸流

  1. 第68章源氏の御息所行尊・輔仁親王
  2. 第69章花のあるじ有仁
  3. 第70章ふし柴有仁家の女房
  4. 第71章月の隠るる山の端有仁の出家
  5. 第72章はらはらの御子皇子・皇女たち

第九「むかしがたり」昔の帝や人々の逸話

  1. 第73章あしたづ清和天皇・村上天皇
  2. 第74章祈るしるし高僧の験
  3. 第75章唐歌漢詩の人々
  4. 第76章誠の道仏道の人々
  5. 第77章かしこき道々諸芸の名人

第十「うちぎき」和歌・歌集と物語の話

  1. 第78章敷島の打聞歌人たちの逸話
  2. 第79章奈良の御代万葉集の成立
  3. 第80章作り物語の行方源氏物語と紫式部

このページの本文について

原文は、国立国会図書館デジタルコレクションで公開されている関根正直『今鏡新註』(六合館、昭和2年)を底本としています。同書は、関根正直が明治二十九年に校訂した『今鏡読本』を改めたもので、流布本(松屋本など)をもとに諸本で校訂した本文に、句読点・かぎ括弧・濁点を施しています。このサイトでは、底本の表記(旧字体・歴史的仮名遣い・踊り字・句読点・かぎ括弧)をそのまま翻刻しました。底本の頭注と、本文の脇に小さく添えられた注(年月日・人名など)は入れていません。底本の誤植と思われる所も底本どおりに翻刻し、各章の文法注に断りました。

章の区切りと章題は、底本の巻の中の小題(「雲井」「子の日」など)に従い、一つの小題を一章として全80章に分けました。小題の順と巻への分け方は伝本によって違いがあり、底本では第五「藤波の中」の終わりが「苔の衣」「花の山」「水茎」「ふるさとの花の色」の順になっています。章の副題(人物名など)は、内容の目安として当サイトで付けたものです。

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