古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4248〜4249番

あらたまの 年の緒長く

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝3年7月17日、少納言に任じられて越中を去ることになった大伴家持が、朝集使として都へ行っていた掾久米広縄の館に書き残した別れの歌二首。長い年月にわたって親しくしてきたあなたの心遣いを忘れることがあろうかという歌と、石瀬野で秋萩を踏み分けて馬を並べ、初鷹狩さえもせずに別れるのかという歌。

秋萩の咲く石瀬野で、馬を並べて鷹狩をする二人

題詞七月十七日を以て少納言に遷任せらる。仍りて悲別の歌を作りて朝集使掾久米朝臣廣繩の館に贈り貽せる二首

  1. 1あらたまあらたまあらたまののの荒玉乃4248
  2. 2年とし年としとしののの緒を緒をお長なが長ながながくくく年緒長久
  3. 3相あひ相あひあい見み見みみてててししし相見氐之
  4. 4彼そ彼そそののの心こころ心こころこころ引ひき引ひきひき彼心引
  5. 5忘わす忘わすわすらえらえらえめめめやもやもやも將忘也毛
  6. 6いはせいはせいわせ野の野ののににに伊波世野爾4249
  7. 7秋あき秋あきあき萩はぎ萩はぎはぎ凌しぬ凌しぬしぬぎぎぎ秋芽子之努藝
  8. 8馬うま馬うまうま竝な竝ななめめめててて馬並
  9. 9始はつ始はつはつ鷹獵とがり鷹獵とがりとがりだにだにだに始鷹獵太爾
  10. 10爲せ爲せせずずずややや別わか別わかわかれれれむむん不爲哉將別

引用の仕方

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現代語訳

〔4248〕(あらたまの)長い年月にわたって親しく顔を合わせてきた、あなたのその心遣いを、忘れることがあろうか。

〔4249〕石瀬野で秋萩を踏み分けて馬を並べ、初鷹狩さえもしないで別れるのだろうか。

意訳

越中で最も親しく交わった部下の広縄が都へ出ている間に、家持の帰京が決まった。会えないまま去るのを惜しみ、その心遣いを忘れないと言い、秋の初鷹狩を共にする約束も果たせずに別れる無念を詠む。

語釈・文法注

文法・本文

相見てし
親しく顔を合わせてきた。
心引
「こころひき」。心遣い、好意。
秋萩凌ぎ
秋萩を踏み分けて。
始鷹獵
「はつとがり」。秋の初めての鷹狩。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4248〜4249番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝3年、少納言に遷任された越中守大伴家持が、久米広縄に書き残した歌。

修辞

反語
「忘らえめやも」。

解説

家持は天平18年から天平勝宝3年まで足かけ6年、越中守を務めた。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、698頁(コマ142)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、824頁(コマ176)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日