古典ライブラリー

万葉集 巻第十九 4143番

もののふの 八十をとめ等が

大伴家持(おおとものやかもち)

天平勝宝2年3月2日、大伴家持が、かたかごの花を手折って詠んだ歌。大勢の乙女たちが水を汲みに入り乱れる寺の井戸のほとりの、かたくりの花よという歌。

寺の井戸のほとりに咲くかたくりの花と、水を汲む乙女たち

題詞堅香子草の花を攀ぢ折る歌一首

  1. 1もののふもののふもののふののの物部能
  2. 2八十やそ八十やそやそをとめをとめおとめ等ら等ららががが八十媙嬬等之
  3. 3挹く挹くくみみみ亂まが亂まがまがふふう挹亂
  4. 4寺井てらゐ寺井てらゐてらいののの上うへ上うへうえののの寺井之於乃
  5. 5堅香子かたかご堅香子かたかごかたかごののの花はな花はなはな堅香子之花

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

(もののふの)大勢の乙女たちが、水を汲みに入り乱れる寺の井戸のほとりの、かたかごの花よ。

意訳

寺の井戸に水を汲みに来る大勢の乙女たちの姿と、そのほとりにうつむいて咲くかたくりの花とを重ね合わせた、明るく華やかな春の歌である。

語釈・文法注

文法・本文

もののふの
「八十」にかかる枕詞。
挹み亂ふ
「くみまがふ」。水を汲みに入り乱れる。
寺井
「てらゐ」。寺の井戸。
堅香子
「かたかご」。かたくり。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十九・部立なし・4143番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平勝宝2年3月2日、越中守大伴家持が、かたかごの花を手折って詠んだ歌。

修辞

名詞止め
「堅香子の花」で結ぶ。

解説

かたくりの花が詠まれた歌は、万葉集にこの一首だけである。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、677頁(コマ131)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、799頁(コマ163)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日