古典ライブラリー

万葉集 巻第三 465番

うつせみの 代は常なしと

大伴家持(おおとものやかもち)

この世は無常だと知っているのに、秋風が寒いので、亡き人がしのばれてならない。月が改まって吹く秋風に、亡き妾を思った家持の歌。

秋風に揺れるすすきの野で、若い貴公子が衣の袖をかき合わせ、遠くを見つめている

題詞移朔して後、秋風を悲嘆して家持の作れる歌一首

  1. 1うつせみうつせみうつせみののの虛蟬之
  2. 2代よ代よよははは常つね常つねつねなしなしなしととと代者無常跡
  3. 3知し知ししるるるものものものををを知物乎
  4. 4秋あき秋あきあき風かぜ風かぜかぜ寒さむ寒さむさむみみみ秋風寒
  5. 5思しの思しのしのびびびつるつるつるかもかもかも思努妣都流可聞

引用の仕方

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現代語訳

この世は無常であると知っているのに、秋風が寒いので、亡き人をしのんでしまうことだ。

意訳

人の世がはかないことは知っている。それでも、月が改まって秋風が寒く吹きはじめると、亡き人のことがしのばれてならない。仏教の無常観を頭では理解しながらも、悲しみを抑えきれない若い家持の心が表れている。

語釈・文法注

文法・本文

移朔
月が改まること。旧暦7月、秋に入ったこと。
秋風寒み
秋風が寒いので。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守などを務め、のちに中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残し、その編纂に深くかかわったとされる。
出典
『万葉集』巻第三・挽歌・465番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
月が改まった後、秋風を悲しんで大伴家持が詠んだ歌。

解説

「世は常なし」は仏教の無常観にもとづく。理屈では割り切れない悲しみを、秋風という季節の感覚に託している。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』上巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、126頁(コマ67)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』上巻 岩波書店、昭和24年(1949)、129頁(コマ70)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日