古典ライブラリー

万葉集 巻第十七 3988番

ぬばたまの 月に向ひて

大伴家持(おおとものやかもち)

天平19年4月16日の夜、遠くにほととぎすの鳴く声を聞いて、大伴家持が思いを述べた歌。月に向かってほととぎすの鳴く声が遠く聞こえる、里から遠いからだろうかという歌。

月夜の山の端を、ほととぎすが鳴いて渡っていく

題詞四月十六日、夜の裏に、遙に霍公鳥の喧くを聞きて、懷を述ぶる歌一首

  1. 1ぬばたまぬばたまぬばたまののの奴婆多麻能
  2. 2月つき月つきつきににに向むか向むかむかひひいててて都奇爾牟加比底
  3. 3ほととぎすほととぎすほととぎす保登等藝須
  4. 4鳴な鳴ななくくく音おと音おとおとはるけしはるけしはるけし奈久於登波流氣之
  5. 5里さと里さとさと遠どほ遠どほどおみみみかもかもかも佐刀騰保美可聞

引用の仕方

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現代語訳

(ぬばたまの)月に向かって、ほととぎすの鳴く声が遠く聞こえる。里から遠いからだろうか。

意訳

待ちわびたほととぎすの声を、ようやく月夜に遠く聞いた喜びと、なお遠いもどかしさを詠んだ歌である。月に向かって鳴くという取り合わせに、夜のほととぎすの風情がある。

語釈・文法注

文法・本文

はるけし
遠く隔たっている。
里遠みかも
里から遠いからだろうか。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十七・部立なし・3988番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平19年4月16日の夜、越中守大伴家持が、遠くに鳴くほととぎすの声を聞いて詠んだ歌。

修辞

枕詞
「ぬばたまの」。

解説

3983・3984番で鳴かないことを恨んだほととぎすの声を、半月余りのちにようやく聞いた歌である。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、628頁(コマ107)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、736頁(コマ132)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日