古典ライブラリー

万葉集 巻第十八 4093番

英遠の浦に 寄する白波

大伴家持(おおとものやかもち)

天平感宝元年5月、大伴家持が英遠の浦に行った日に詠んだ歌。英遠の浦に寄せる白波は、ますます重なって寄せて来る、東風が激しいからだろうかという歌。

東風に重なって寄せる英遠の浦の白波

題詞英遠浦に行きし日作れる歌一首

  1. 1英遠あを英遠あをあおののの浦うら浦うらうらににに安乎能宇良爾
  2. 2寄よ寄よよするするする白しら白しらしら波なみ波なみなみ餘須流之良奈美
  3. 3いやいやいや增ま增まましししににに伊夜末之爾
  4. 4立た立たたちちち重し重ししききき寄よ寄よよせせせ來く來くく多知之伎與世久
  5. 5東風あゆ東風あゆあゆををを疾いた疾いたいたみみみかもかもかも安由乎伊多美可聞

引用の仕方

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現代語訳

英遠の浦に寄せる白波は、ますます重なって寄せて来る。東風が激しいからだろうか。

意訳

英遠の浦で、東風に吹かれて次々と重なって寄せる白波を見て詠んだ歌である。越中の言葉「あゆ」を用いている。

語釈・文法注

文法・本文

英遠
「あを」。越中の地名。今の氷見市阿尾。
立ち重き寄せ來
次々に重なって寄せて来る。
東風
「あゆ」。越中の言葉で東の風。
疾みかも
激しいからだろうか。

和歌

作者
大伴家持(718?–785)
大伴旅人の子。越中守・少納言・兵部少輔などを歴任し、晩年は中納言に至った。万葉集に最も多くの歌を残した歌人で、その編纂にも深く関わったとされる。繊細で感傷的な歌風は、万葉集の第4期を代表する。百人一首の第6首の作者でもある。
出典
『万葉集』巻第十八・部立なし・4093番
歌体
短歌(五七五七七)
時期
第4期(733〜759年(〜万葉集の最後の歌))
状況
天平感宝元年5月、越中守大伴家持が英遠の浦で詠んだ歌。

修辞

推量
「疾みかも」と、波の高さから風の激しさを推し量る。

解説

東風(あゆ)は、4017番の左注にも越の言葉として見える。

関連

出典

底本
佐佐木信綱編『新訓万葉集』下巻 岩波文庫、昭和2年(1927)、655頁(コマ120)。国立国会図書館デジタルコレクション
原文
佐佐木信綱編『白文万葉集』下巻 岩波書店、昭和5年(1930)、772頁(コマ150)。万葉仮名の原文。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日