古典ライブラリー

今鏡 第十「うちぎき」 第78章

敷島の打聞

巻十「うちぎき」の始まり。和歌をめぐる聞き書きの数々。灯火の炎に女の姿を見た男、法華経を読みながら息絶えた女、稲荷の神に祈って歌を得た頼実と、住吉に命と引き換えに名歌を願った頼実の最期、思い上がった歌人源頼綱、八幡の別当の女の歌と小大進の数奇な運命、陸奥の菖蒲の代わりの花かつみ、実方の雀、郭公を育てた鶯の話などが語られる。

  1. 1中頃なかごろ中頃なかごろなかごろ男をとこ男をとこおとこありけりありけりありけり。。。女をんな女をんなおんなををを思おも思おもおもひてひていて、、、とき〴〵とき〴〵ときどき通かよ通かよかよひけるにひけるにひけるに、、、男をとこ男をとこおとこあるあるある所ところ所ところところにてにてにて、、、ともしともしともし火ひ火ひひのののほのほのほのほのほのほの上うへ上うへうえににに、、、かのかのかの女をんな女をんなおんなののの見み見みみえければえければえければ、、、これこれこれははは忌い忌いいむなるものむなるものむなるものををを、、、火ひ火ひひのもゆるのもゆるのもゆる所ところ所ところところををを、、、かきかきかき落おと落おとおとしてこそしてこそしてこそ、、、そのそのその人ひと人ひとひとににに飮の飮ののますなれますなれますなれ。。。
  2. 2とてとてとて、、、紙かみ紙かみかみにつゝみてにつゝみてにつつみて、、、もたりけるもたりけるもたりけるほどにほどにほどに、、、事こと事ことこと繁しげ繁しげしげくしてくしてくして、、、まぎるゝことありければまぎるゝことありければまぎるることありければ、、、忘わす忘わすわすれてれてれて、、、一日ついたち一日ついたちついたち二日ふつか二日ふつかふつか過す過すすぎてぎてぎて、、、思おも思おもおもひひい出い出いいでけるまゝにでけるまゝにでけるままに、、、ゆけりければゆけりければゆけりければ、、、「「「惱なや惱なやなやみてみてみて程ほど程ほどほどなくなくなく女をんな女をんなおんなかくれぬかくれぬかくれぬ」」」。。。
  3. 3といひければといひければといいければ、、、いつしかいつしかいつしか往ゆ往ゆゆきてきてきて、、、かのともしびのかのともしびのかのともしびの、、、かきおとしたりしかきおとしたりしかきおとしたりし物もの物ものものををを見み見みみせでとせでとせでと、、、わがわがわが過あやま過あやまあやまちにちにちに悲かな悲かなかなしくおぼえてしくおぼえてしくおぼえて、、、つねなきつねなきつねなき鬼おに鬼おにおにににに一ひと一ひとひと口くち口くちくちにくはれけむにくはれけむにくわれけむ心こころ心こころこころうさうさうさ、、、足あし足あしあしずりずりずりをををしつべくしつべくしつべく、、、歎なげ歎なげなげききき泣な泣ななきけるきけるきけるほどにほどにほどに、、、御覽ごらん御覽ごらんごらんぜさせよとにやぜさせよとにやぜさせよとにや。。。
  4. 4このこのこの御おん御おんおんふみふみふみををを、、、見み見みみつけてつけてつけて侍はべ侍はべはべるとてるとてるとて、、、とりとりとり出い出いいだしたるだしたるだしたるををを見み見みみればればれば、、、
  5. 5谷たに谷たにたににけぶりのにけぶりのにけぶりの見み見みみえたらばえたらばえたらばはははかなくかなくかなく消き消ききえしえしえし我わ我わわれとしらなむれとしらなむれとしらなむ
  6. 6とぞかきたりけるとぞかきたりけるとぞかきたりける。。。歌うた歌うたうたさへともしさへともしさえともし火ひ火ひひのけぶりとおぼえてのけぶりとおぼえてのけぶりとおぼえて、、、いといといと悲かな悲かなかなしくしくしく思おも思おもおもひけるひけるいける、、、ことわりになむことわりになむことわりになむ。。。
  7. 7又また又またまたあるあるある女をんな女をんなおんな有あ有あありけりりけりりけり。。。とき〴〵とき〴〵ときどき通かよ通かよかよひけるひけるひける男をとこ男をとこおとこののの、、、いつしかいつしかいつしか絕た絕たたえにければえにければえにければ、、、心こころ心こころこころうくてうくてうくて、、、心こころ心こころこころのののうちにうちにうちに、、、思おも思おもおもひひい惱なや惱なやなやみけるみけるみける程ほど程ほどほどににに、、、そのそのその人ひと人ひとひと門もん門もんもんををを過す過すすぐるぐるぐる事こと事ことことのありけるのありけるのありけるををを、、、家いへ家いへいえののの人ひと人ひとひとののの、、、「「「今いま今いまいまこそこそこそ過す過すすぎさせぎさせぎさせ給たま給たまたまへへえ」」」。。。
  8. 8といひければといひければといいければ、、、思おも思おもおもひあまりてひあまりていあまりて、、、「「「きときときと立た立たたちながらいらせちながらいらせちながらいらせ給たま給たまたまへへえ」」」。。。ととと追お追おおひつきてひつきていつきて、、、云い云いいはせければはせければわせければ、、、やりかへしてやりかへしてやりかえして入い入いいりたるにりたるにりたるに、、、もともともと見み見みみしよりもしよりもしよりも、、、なつかしきさまにてなつかしきさまにてなつかしきさまにて、、、殊こと殊ことことののの外ほか外ほかほかににに見み見みみえければえければえければ、、、悔くや悔くやくやしくなりてしくなりてしくなりて、、、とかくいひけれどとかくいひけれどとかくいいけれど、、、女をんな女をんなおんなたゞたゞただ經きやう經きやうきょうをををのみよみてかへりごともせざりけるのみよみてかへりごともせざりけるのみよみてかえりごともせざりける程ほど程ほどほどににに、、、七しち七しちしちのまきののまきののまきの、、、住す住すす安樂あんらく安樂あんらくあんらく世界せかい世界せかいせかい、、、といふといふという所ところ所ところところををを、、、くりかへしよむとくりかへしよむとくりかえしよむと見み見みみけるけるける程ほど程ほどほどににに、、、やがてやがてやがて絕た絕たたえいりてえいりてえいりて、、、うせにければうせにければうせにければ、、、我わ我わわれもよりておさへれもよりておさへれもよりておさえ、、、人ひと人ひとひともよりてもよりてもよりて、、、とかくしけれどもとかくしけれどもとかくしけれども、、、やがてやがてやがてうせにけりうせにけりうせにけり。。。
  9. 9かくてかくてかくて籠こも籠こもこもりもしりもしりもし、、、又また又またまたかしらかしらかしらをもをもをも、、、おろしてむとおろしてむとおろしてむと、、、思おも思おもおもひけれどひけれどいけれど、、、當時たうじ當時たうじとうじ辨べん辨べんべんなりけるなりけるなりける人ひと人ひとひとなればなればなれば、、、さすがえさすがえさすがえ籠こも籠こもこもらでらでらで、、、土つち土つちつちにおりてにおりてにおりて、、、とかくのとかくのとかくの事こと事ことことまでさだしてまでさだしてまでさだして、、、しばししばししばしははは山やま山やまやまざとにざとにざとに、、、かくれたりければかくれたりければかくれたりければ、、、世よ世よよをををそむきぬるとそむきぬるとそむきぬると聞き聞ききこえけれどこえけれどこえけれど、、、さすがさすがさすが、、、かくれもかくれもかくれもはははてゞてゞてで、、、出い出いいででで仕つか仕つかつかへければへければえければ、、、辨べん辨べんべんとなんいひけるとなんいひけるとなんいいける。。。
  10. 10左衞門さゑもん左衞門さゑもんさえもんノノノ尉じよう尉じようじょう實み實みみといふといふという藏人くらうど藏人くらうどくろうど、、、歌うた歌うたうたののの道みち道みちみちすぐれてもすぐれてもすぐれても、、、又また又またまた好この好このこのみにもみにもみにも好この好このこのみみみ侍はべ侍はべはべりけるにりけるにりけるに、、、七條しちでう七條しちでうしちじょうなるなるなる所ところ所ところところにてにてにて、、、夕ゆふべ夕ゆふべゆうべににに郭公ほととぎす郭公ほととぎすほととぎすをををきくきくきく。。。といふといふという題だい題だいだいをををよみよみよみ侍はべ侍はべはべりけるにりけるにりけるに、、、醉ゑ醉ゑえひてひていて、、、そのそのその家いへ家いへいえののの車くるま車くるまくるま宿やど宿やどやどりにたてたるりにたてたるりにたてたる車くるま車くるまくるまにてにてにて、、、歌うた歌うたうた案あん案あんあんぜんとてぜんとてぜんとて、、、寐ね寐ねね過す過すすぐしてぐしてぐして侍はべ侍はべはべりけるりけるりけるををを、、、もとめけれどもとめけれどもとめけれど、、、思おも思おもおもひよらでひよらでいよらで既すで既すですでににに講かう講かうこうぜんとてぜんとてぜんとて、、、人皆ひとみな人皆ひとみなひとみなかきたるかきたるかきたる後のち後のちのちにてにてにて、、、此こ此ここのわたりのわたりのわたりははは、、、稻荷いなり稻荷いなりいなりののの明神みやうじん明神みやうじんみょうじんこそとてこそとてこそとて、、、念ねん念ねんねんじければじければじければ、、、きとおぼえけるきとおぼえけるきとおぼえけるををを、、、かきてかきてかきて侍はべ侍はべはべりけるりけるりける。。。
  11. 11山やま山やまやまこえてやきつるこえてやきつるこえてやきつる郭公ほととぎす郭公ほととぎすほととぎすゆふかけてしもゆふかけてしもゆうかけてしも聲こゑ聲こゑこえのきこゆるのきこゆるのきこゆる
  12. 12同おな同おなおなじじじ人ひと人ひとひとののの、、、「「「人ひと人ひとひとにしらるばかりのにしらるばかりのにしらるばかりの歌うた歌うたうた、、、よませさせよませさせよませさせ給たま給たまたまへへえ。。。五年ごねん五年ごねんごねんががが命みこと命みことみことにかへんにかへんにかえん」」」。。。とととににに、、、申まう申まうもうしたりければしたりければしたりければ、、、落葉らくえふ落葉らくえふらくよう雨あめ雨あめあめののの如ごと如ごとごとししし。。。ととと云い云いいふふう題だい題だいだいににに、、、
  13. 13木き木ききののの葉は葉ははちるちるちる宿やど宿やどやどははは聞き聞きききわくきわくきわく事こと事ことことぞなきぞなきぞなき時雨しぐれ時雨しぐれしぐれするするする夜よ夜よよもしぐれせぬよももしぐれせぬよももしぐれせぬよも
  14. 14とよみてとよみてとよみて侍はべ侍はべはべりけるりけるりけるををを、、、かならずこれともかならずこれともかならずこれとも、、、思おも思おもおもひよらざりけるにやひよらざりけるにやいよらざりけるにや。。。病やま病やまやまひのつきてひのつきてひのつきて、、、生い生いいかんとかんとかんと祈いの祈いのいのりなどしければりなどしければりなどしければ、、、家いへ家いへいえににに侍はべ侍はべはべりけるりけるりける女をんな女をんなおんなににに、、、住吉すみのえ住吉すみのえすみのえのつきてのつきてのつきて、、、「「「さるさるさる歌うた歌うたうたよませしよませしよませしははは。。。さればえさればえさればえ生い生いいくまじくまじくまじ」」」。。。
  15. 15とのたまひけるにぞとのたまひけるにぞとのたまいけるにぞ、、、ひとへにひとへにひとえに、、、後のち後のちのちののの世よ世よよののの祈いの祈いのいのりになりにけるとなんりになりにけるとなんりになりにけるとなん。。。
  16. 16又また又またまた同おな同おなおなじゆかりにじゆかりにじゆかりに、、、三河みかは三河みかはみかわ守かみ守かみかみ綱つな綱つなつなといひしといひしといいしははは、、、まだまだまだ若わか若わかわかくてくてくて、、、親おや親おやおやのもとにのもとにのもとに、、、三河みかは三河みかはみかわ國くに國くにくにににに下くだ下くだくだりけるにりけるにりけるに、、、かのかのかの國くに國くにくにののの女をんな女をんなおんなをををよばひてよばひてよばいて、、、又また又またまたももも音おと音おとおとづれざりければづれざりければずれざりければ、、、女をんな女をんなおんな、、、
  17. 17あさましやあさましやあさましや見み見みみしししははは夢ゆめ夢ゆめゆめかとかとかと問と問ととふふう程ほど程ほどほどにおどろかすにもなりにけるかなにおどろかすにもなりにけるかなにおどろかすにもなりにけるかな
  18. 18ととと申まう申まうもうしければしければしければ更さら更さらさらにおぼえつきてなんにおぼえつきてなんにおぼえつきてなん思おも思おもおもひひい侍はべ侍はべはべりけるりけるりける。。。かくよむともかくよむともかくよむとも、、、みめかたちやみめかたちやみめかたちやははは變かは變かはかわるべきるべきるべき。。。とおぼえとおぼえとおぼえ侍はべ侍はべはべれどれどれど、、、昔むかし昔むかしむかしののの人ひと人ひとひと、、、中なか中なかなかごろまでごろまでごろまでははは、、、人ひと人ひとひとののの心こころ心こころこころかくぞかくぞかくぞ侍はべ侍はべはべりけるりけるりける。。。
  19. 19此こ此ここののの事こと事ことことははは、、、そのそのその人ひと人ひとひとののの子こ子ここののの正じやう正じやうじょうといひしがといひしがといいしが、、、語かた語かたかたりりり侍はべ侍はべはべるとなむるとなむるとなむ。。。
  20. 20三河みかは三河みかはみかわ守かみ守かみかみ賴たの賴たのたの綱つな綱つなつなははは、、、歌うた歌うたうたののの道みち道みちみちにとりてにとりてにとりて、、、人ひと人ひとひともゆるせりけりもゆるせりけりもゆるせりけり。。。わがわがわが身み身みみにもにもにも、、、殊こと殊ことことののの外ほか外ほかほかににに、、、思おも思おもおもひあがりたるけしきなりけりひあがりたるけしきなりけりいあがりたるけしきなりけり。。。俊賴としより俊賴としよりとしよりといふといふという人ひと人ひとひとののの、、、少將せうしやう少將せうしやうしょうしょうなりけるなりけるなりける時とき時ときとき、、、賴たの賴たのたの綱つな綱つなつなががが云い云いいひけるひけるいけるははは、、、「「「少將せうしやう少將せうしやうしょうしょう殿どの殿どのどの〳〵〳〵どの、、、歌うた歌うたうたよまむとおぼしめさばよまむとおぼしめさばよまむとおぼしめさば、、、賴たの賴たのたの綱つな綱つなつなををを供とも供ともともせさせせさせせさせ給たま給たまたまへへえ。。。べちのべちのべちの者もの者ものものももも、、、まかりいるまじまかりいるまじまかりいるまじ。。。あらひたるあらひたるあらいたる供とも供ともともなんなんなん。。。ふたかはらけふたかはらけふたかわらけ、、、そなへさせそなへさせそなえさせ給たま給たまたまへへえ」」」。。。などぞいひけるなどぞいひけるなどぞいいける。。。其そ其そそののの歌うた歌うたうた、、、おほくおほくおおく侍はべ侍はべはべれどもれどもれども、、、
  21. 21夏山なつやま夏山なつやまなつやまのならののならののならのはははそよぐそよぐそよぐ夕暮ゆふぐれ夕暮ゆふぐれゆうぐれはははことしもことしもことしも秋あき秋あきあきのこゝちこそすれのこゝちこそすれのここちこそすれ
  22. 22といふといふという歌うた歌うたうたぞぞぞ、、、人ひと人ひとひとののの口くち口くちくちすさびにしすさびにしすさびにし侍はべ侍はべはべるめるるめるるめる。。。
  23. 23近ちか近ちかちかききき世よ世よよににに、、、女をんな女をんなおんなありけるありけるありけるををを、、、八幡やはた八幡やはたやわたなるなるなる所ところ所ところところににに宮みや宮みやみや寺じ寺じじのつかさなるのつかさなるのつかさなる、、、僧都そうづ僧都そうづそうずととと聞き聞ききこえしこえしこえし、、、小侍從こじじゆう小侍從こじじゆうこじじゅうとかいふとかいふとかいう親おや親おやおやにやあらんにやあらんにやあらん。。。そのそのその坊ばう坊ばうぼうにこめすゑてにこめすゑてにこめすえて、、、程ほど程ほどほど經へ經へへけるけるけるほどにほどにほどに、、、都みやこ都みやこみやこよりよりより、、、然しか然しかしかるべきるべきるべき人ひと人ひとひとのむすめのむすめのむすめををを、、、わたさんといひければわたさんといひければわたさんといいければ、、、「「「かゝるかゝるかかる事こと事ことことのあるにのあるにのあるに、、、人ひと人ひとひとののの聞き聞ききくくく所ところ所ところところももも、、、憚はゞか憚はゞかはばからはしければらはしければらわしければ、、、しばししばししばし都みやこ都みやこみやこへへへかへりてかへりてかえりて、、、むかへんむかへんむかえん折をり折をりおりこここ」」」。。。
  24. 24とてとてとて、、、したてゝしたてゝしたてて出い出いいだしけるがだしけるがだしけるが、、、あまりこちたくあまりこちたくあまりこちたく、、、贈おく贈おくおくりりり物もの物ものものなどしてぐしけれなどしてぐしけれなどしてぐしけれははは、、、今いま今いまいまはははかくてやみぬべきわざなめりとかくてやみぬべきわざなめりとかくてやみぬべきわざなめりと、、、思おも思おもおもひけるにつけてもひけるにつけてもいけるにつけても、、、いといといと心こころ心こころこころぼそくてぼそくてぼそくて、、、がめのがめのがめの下した下したしたににに歌うた歌うたうたをををかきておくりけるかきておくりけるかきておくりけるををを、、、とりいでてとりいでてとりいでて見み見みみければければければ、、、
  25. 25行ゆ行ゆゆくくく方かた方かたかたもしらぬうきもしらぬうきもしらぬうき木き木ききののの身み身みみなれどもよにしめぐらばなれどもよにしめぐらばなれどもよにしめぐらば流なが流ながながれあへかめれあへかめれあえかめ
  26. 26となむとなむとなむ、、、よめりけるよめりけるよめりけるををを見み見みみててて、、、むすめなりけるむすめなりけるむすめなりける人ひと人ひとひとははは、、、院ゐん院ゐんいんのののみや〳〵などみや〳〵などみやみやなど、、、うみうみうみ奉たてまつ奉たてまつたてまつりたるがりたるがりたるが、、、まだまだまだ若わか若わかわかくおはしけるにくおはしけるにくおわしけるに、、、京きやう京きやうきょうへへへ送おく送おくおくりつるりつるりつる人ひと人ひとひと、、、このこのこの歌うた歌うたうたをををよみおきたるよみおきたるよみおきたる、、、「「「返事かへりごと返事かへりごとかえりごとをやをやをやすべきすべきすべき。。。又また又またまた迎むか迎むかむかへやすべきへやすべきえやすべき」」」。。。
  27. 27ととと申まう申まうもうしあはせければしあはせければしあわせければ、、、「「「かへしかへしかへしははは、、、よのつねのことなりよのつねのことなりよのつねのことなり。。。迎むか迎むかむかへへえ給たま給たまたまへらんこそへらんこそえらんこそ、、、歌うた歌うたうたのののほいもほいもほいも侍はべ侍はべはべらめらめらめ」」」。。。ととと聞き聞ききこえければこえければこえければ、、、心こころ心こころこころにやかなひけんにやかなひけんにやかないけん。。。
  28. 28そのそのその日ひ日ひひのののうちにうちにうちに、、、迎むか迎むかむかへにへにえに更さら更さらさらにやりてにやりてにやりて、、、「「「けふけふきょうかならずかならずかならず、、、かへらせかへらせかえらせ給たま給たまたまへへえ」」」。。。とてとてとて、、、あけゆくあけゆくあけゆく程ほど程ほどほどににに、、、かへりにけりかへりにけりかえりにけり。。。又また又またまたそのそのその然しか然しかしかるべきるべきるべき人ひと人ひとひとのむすめのむすめのむすめををを、、、いひしらずいひしらずいいしらず、、、ゐどころなどしつらひゐどころなどしつらひいどころなどしつらい、、、はしたものはしたものはしたもの、、、雜仕ざふし雜仕ざふしぞうしなどいふものなどいふものなどいうもの數かず數かずかずあまたあまたあまた、、、したてゝすゑたりけれどしたてゝすゑたりけれどしたててすえたりけれど、、、一夜ひとよ一夜ひとよひとよばかりにてばかりにてばかりにて、、、硯すゞり硯すゞりすずりがめのがめのがめの人ひと人ひとひとにのみにのみにのみ、、、離はな離はなはなるゝるゝるる事こと事ことこともなくぞありけるもなくぞありけるもなくぞありける。。。
  29. 29そのそのその女をんな女をんなおんなももも、、、大臣おとど大臣おとどおとど家いへ家いへいえののの宮仕みやづか宮仕みやづかみやずかへへえ人ひと人ひとひとなりけるがなりけるがなりけるが、、、母はは母ははははののの筑紫つくし筑紫つくしつくしににに下くだ下くだくだりてりてりて、、、菅原すがはら菅原すがはらすがわらののの氏うぢ氏うぢうじ寺じ寺じじののの別當べつたう別當べつたうべっとうににに具ぐ具ぐぐしたりけるがしたりけるがしたりけるが、、、法師ほふし法師ほふしほうしみまかりにければみまかりにければみまかりにければ、、、都みやこ都みやこみやこへへへのぼるべきよすがもなくてのぼるべきよすがもなくてのぼるべきよすがもなくてをををりけるりけるりけるををを、、、そのむすめそのむすめそのむすめははは、、、朝夕あさゆふ朝夕あさゆふあさゆうににに、、、これこれこれををを歎なげ歎なげなげきけるきけるきけるほどにほどにほどに、、、大臣殿おほいどの大臣殿おほいどのおおいどの、、、五節ごせち五節ごせちごせちたてまつりたてまつりたてまつり給たま給たまたまひけるにやひけるにやいけるにや。。。
  30. 30わらわらわらはははににに出い出いいだすべきだすべきだすべき女をんな女をんなおんな、、、外ほか外ほかほかのののかた〴〵かた〴〵かたがた見み見みみ給たま給たまたまひけれどひけれどいけれど、、、こればかりなるこればかりなるこればかりなる見み見みみえざりければえざりければえざりければ、、、「「「思おも思おもおもふやうふやううよう有あ有あありていふぞりていふぞりていうぞ。。。いいいはははんことんことんこと聽き聽きききてんやきてんやきてんや」」」。。。
  31. 31とありければとありければとありければ「「「いかでかいかでかいかでか仰おほ仰おほおおせごとにせごとにせごとに、、、したがはずしたがはずしたがわず侍はべ侍はべはべらんらんらん」」」。。。ととと申まう申まうもうしけるにしけるにしけるに、、、「「「五節ごせち五節ごせちごせちのわらのわらのわらはははににに出い出いいださんとださんとださんと思おも思おもおもふふう」」」。。。とのたまひければとのたまひければとのたまいければ、、、「「「いかなることもいかなることもいかなることも、、、うけうけうけ給たま給たまたまはははりりり候さふら候さふらそうろうふべきふべきうべきををを。。。それそれそれはははえなんえなんえなん侍はべ侍はべはべるまじきるまじきるまじき」」」。。。
  32. 32ととと申まう申まうもうしければしければしければ、、、あながちにあながちにあながちに思おも思おもおもふふう事こと事ことことにてあるににてあるににてあるに、、、構かま構かまかまへてへてえて聽き聽きききたらばきたらばきたらば、、、いかなるいかなるいかなる大事だいじ大事だいじだいじをもをもをも叶かな叶かなかなへんへんえん。。。」」」とありければとありければとありければ、、、かくまでのたまはせんことかくまでのたまはせんことかくまでのたまわせんこと、、、さのみもえいなびさのみもえいなびさのみもえいなび申まう申まうもうさでさでさで出い出いいでたりけるにでたりけるにでたりけるに、、、かのかのかの大臣殿おほいどの大臣殿おほいどのおおいどののわらのわらのわらははは、、、いかばかりなるらんとていかばかりなるらんとていかばかりなるらんとて、、、殿上人てんじやうびと殿上人てんじやうびとてんじょうびとわわわれも〳〵とれも〳〵とれもれもと、、、ゆかしがりあへりけるゆかしがりあへりけるゆかしがりあえりける中なか中なかなかににに、、、さかりにさかりにさかりに物もの物ものものなどいひけるなどいひけるなどいいける何なに何なになにののの少將せうしやう少將せうしやうしょうしょうなどいひけるなどいひけるなどいいける人ひと人ひとひとももも、、、見み見みみんなどしけるんなどしけるんなどしけるををを、、、あるあるある殿上人てんじやうびと殿上人てんじやうびとてんじょうびとののの、、、「「「珍めづら珍めづらめずらしげなししげなししげなし。。。いつもいつもいつも御覽ごらん御覽ごらんごらんぜよぜよぜよ」」」。。。
  33. 33ととと云い云いいひければひければいければ、、、怪あや怪あやあやしとしとしと思おも思おもおもひてひていて見み見みみるにるにるに、、、わがえさらずわがえさらずわがえさらず物もの物ものものいふいふいう人ひと人ひとひとなりければなりければなりければ、、、恨うら恨うらうらみみみ耻は耻ははぢしめけれどぢしめけれどじしめけれど、、、さささほどほどほど思おも思おもおもひたちてひたちていたちて出い出いいでにけりでにけりでにけり。。。後のち後のちのちににに、、、大臣殿おほいどの大臣殿おほいどのおおいどの、、、「「「此こ此ここののの喜よろこ喜よろこよろこびにいかなるびにいかなるびにいかなる大事だいじ大事だいじだいじかあるかあるかある」」」。。。
  34. 34ととと問と問ととひひい給たま給たまたまひければひければいければ、、、「「「熊野くまの熊野くまのくまのにまうでんのにまうでんのにもうでんの志こころざし志こころざしこころざしぞぞぞ深ふか深ふかふかくくく侍はべ侍はべはべるるる」」」。。。ととと申まう申まうもうすにすにすに、、、やすきやすきやすき事こと事ことこととてとてとて夫ぶ夫ぶぶさささをををなどあまたなどあまたなどあまた召め召めめしてしてして、、、淸きよ淸きよきよきころもきころもきころも何なに何なになにかとかとかと出い出いいだしたてさせだしたてさせだしたてさせ給たま給たまたまひてひていて、、、參まゐ參まゐまいりてりてりて筑紫つくし筑紫つくしつくしののの母はゝ母はゝはは迎むか迎むかむかへよせんへよせんえよせん事こと事ことことををを心こころ心こころこころざしざしざし申まう申まうもうしてかへるにしてかへるにしてかえるに、、、淀よど淀よどよどのわたりにやのわたりにやのわたりにや。。。
  35. 35みゆきなどのみゆきなどのみゆきなどの、、、よそひのやうによそひのやうによそいのように、、、道みち道みちみちもえさりあへぬもえさりあへぬもえさりあえぬ事こと事ことことのありけるがのありけるがのありけるが、、、けふけふきょう政所まんどころ政所まんどころまんどころののの京きやう京きやうきょうににに出い出いいでたまふといひてでたまふといひてでたまうといいて、、、よそによそによそにははは、、、ものともものともものとも思おも思おもおもはぬはぬわぬ事こと事ことことののの、、、いひしらずいひしらずいいしらず見み見みみえけるえけるえけるほどにほどにほどに、、、むしたれたるむしたれたるむしたれたるはざまよりやはざまよりやはざまよりや見み見みみえけんえけんえけん。。。
  36. 36ふみふみふみをををかきてかきてかきて、、、京きやう京きやうきょうよりよりより御おん御おんおんふみとてあるふみとてあるふみとてあるををを見み見みみれれれははは、、、大臣殿おほいどの大臣殿おほいどのおおいどのののの御使おほんつかひ御使おほんつかひおおんつかいにににはははあらであらであらで、、、思おも思おもおもひがけぬひがけぬいがけぬ筋すぢ筋すぢすじののの文ふみ文ふみふみなりけりなりけりなりけり。。。ありつるありつるありつる石淸水いはしみづ石淸水いはしみづいわしみずののの僧そう僧そうそうののの舟ふね舟ふねふねののの人ひと人ひとひとなどなどなど、、、見み見みみしりたるともしりたるともしりたるとも人ひと人ひとひとといひければといひければといいければ、、、きゝもきゝもききも入い入いいれぬれぬれぬほどにほどにほどに、、、かた〴〵かた〴〵かたがた思おも思おもおもひかけずひかけずいかけず、、、いはせければいはせければいわせければ、、、いなびもいなびもいなびもはははてゞてゞてで下くだ下くだくだりてりてりて、、、かのかのかの筑紫つくし筑紫つくしつくしののの母はゝ母はゝはは、、、むかへとりてむかへとりてむかえとりて、、、都みやこ都みやこみやこにしすゑなどしたりけるとなむきこえしにしすゑなどしたりけるとなむきこえしにしすえなどしたりけるとなむきこえしははは、、、大だい大だいだい進しん進しんしんとかいふとかいふとかいう人ひと人ひとひとののの事こと事ことことにやあらんにやあらんにやあらん。。。
  37. 37陸奧みちのく陸奧みちのくみちのく守かみ守かみかみ橘たちばな橘たちばなたちばな仲なか仲なかなかととと申まう申まうもうすすす、、、かのかのかの國くに國くにくににまかりにまかりにまかり下くだ下くだくだりてりてりて、、、五月さつき五月さつきさつき四日よか四日よかよか、、、館たち館たちたちににに廳ちやう廳ちやうちょう官ぐわん官ぐわんがんとかいふとかいふとかいう者もの者ものもの、、、年老としお年老としおとしおいたるいたるいたる出い出いいできてできてできて、、、あやめふかするあやめふかするあやめうかするををを見み見みみければければければ、、、例れい例れいれいののの菖蒲あやめ菖蒲あやめあやめにににはははあらぬあらぬあらぬ草くさ草くさくさををを、、、葺ふ葺ふふきけるきけるきけるををを見み見みみててて、、、「「「けふけふきょうはははあやめあやめあやめをををこそこそこそ葺ふ葺ふふくくく日ひ日ひひにてあるににてあるににてあるに、、、是こ是ここれれれはははいかなるものいかなるものいかなるものををを葺ふ葺ふふくぞくぞくぞ」」」。。。
  38. 38ととと問と問ととはせければはせければわせければ、、、「「「傳つた傳つたつたへへえうけたまはるうけたまはるうけたまわるははは、、、このこのこの國くに國くにくににににははは、、、むかしむかしむかし五月さつき五月さつきさつきとてとてとて、、、あやめふくあやめふくあやめうく事こと事ことことももも、、、知し知ししりりり侍はべ侍はべはべらざりけるにらざりけるにらざりけるに、、、中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうのみたちののみたちののみたちの御時おほんとき御時おほんときおおんとき、、、「「「けふけふきょうははは菖蒲あやめ菖蒲あやめあやめふくものふくものふくものををを、、、いかにさるいかにさるいかにさる事こと事ことこともなきにかもなきにかもなきにか」」」。。。とのたまはせければとのたまはせければとのたまわせければ、、、「「「國くに國くにくにののの例れい例れいれいにさるにさるにさる事侍ことはべ事侍ことはべことはべらずらずらず」」」。。。ととと申まう申まうもうしけるしけるしけるををを、、、「「「さみだれのさみだれのさみだれの頃ころ頃ころころなどなどなど軒のき軒のきのきのしづくものしづくものしずくも、、、あやめによりてこそあやめによりてこそあやめによりてこそ、、、今いま今いまいま少すこ少すこすこししし見み見みみるにもるにもるにも聞き聞ききくにもくにもくにも、、、心こころ心こころこころすむすむすむ事こと事ことことなればなればなれば、、、はやはやはや葺ふ葺ふふけけけ」」」。。。とのたまひけれどとのたまひけれどとのたまいけれど、、、「「「このこのこの國くに國くにくににににははは、、、おひおひおい侍はべ侍はべはべらぬなりらぬなりらぬなり」」」。。。ととと申まう申まうもうしければしければしければ、、、「「「さりとてもさりとてもさりとても、、、いかでかいかでかいかでか無な無ななくてくてくてはははあらんあらんあらん。。。淺香あさか淺香あさかあさかののの沼ぬ沼ぬぬののの、、、有あ有あありりり。。。それそれそれををを葺ふ葺ふふけけけ」」」。。。とのたまひけるよりとのたまひけるよりとのたまいけるより、、、こもとこもとこもと申まう申まうもうすものすものすものをををなんふきなんふきなんうき侍はべ侍はべはべるるる。。。」」」とぞとぞとぞ、、、むさしのむさしのむさしの入道にふだう入道にふだうにゅうどう隆たか隆たかたか資すけ資すけすけととと申まう申まうもうすすすははは、、、語かた語かたかたりりり侍はべ侍はべはべりけるりけるりける。。。
  39. 39もしもしもし然しか然しかしからばらばらば、、、「「「ひくひくひく手て手ててもたゆくもたゆくもたゆく長なが長ながながきねのきねのきねの」」」、、、といふといふという歌うた歌うたうた、、、おぼつかなくおぼつかなくおぼつかなく侍はべ侍はべはべりりり。。。中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうののの御墓みはか御墓みはかみわかははは、、、みちのおくにぞみちのおくにぞみちのおくにぞ侍はべ侍はべはべるなるるなるるなる。。。ととと傳つた傳つたつたへきゝへきゝえきき侍はべ侍はべはべりしりしりし、、、誠まこと誠まことまことにやにやにや。。。
  40. 40藏人くらうど藏人くらうどくろうどノノノ頭とう頭とうとうにもにもにも、、、成な成ななりりり給たま給たまたまはははででで、、、みちのおくのみちのおくのみちのおくの守かみ守かみかみににに成な成ななりりり給たま給たまたまひてかくれたまひにしかばひてかくれたまひにしかばいてかくれたまいにしかば、、、このこのこの世よ世よよまでもまでもまでも、、、殿上てんじやう殿上てんじやうてんじょうのつぎめののつぎめののつぎめの臺盤だいばん臺盤だいばんだいばんすゑたるすゑたるすえたるをばをばをば、、、雀すずめ雀すずめすずめののぼりてののぼりてののぼりて、、、くふくふくうをををりなどぞりなどぞりなどぞ侍はべ侍はべはべるなるるなるるなる。。。
  41. 41實方さねかた實方さねかたさねかたののの中將ちゆうじやう中將ちゆうじやうちゅうじょうののの、、、頭とう頭とうとうになりになりになり給たま給たまたまはぬはぬわぬ、、、おもひのおもひのおもいの遺や遺ややりておはするなどりておはするなどりておわするなど申まう申まうもうすもすもすも、、、誠まこと誠まことまことににに侍はべ侍はべはべらばらばらば、、、あはれにあはれにあわれに耻は耻ははづかしくもづかしくもずかしくも、、、末すゑ末すゑすえののの世よ世よよののの人ひと人ひとひとははは侍はべ侍はべはべるるる事こと事ことことかなかなかな。。。
  42. 42いづれのいづれのいずれの年とし年としとしにかにかにか侍はべ侍はべはべりけんりけんりけん。。。右近うこん右近うこんうこんののの馬場むまば馬場むまばむまばののの、、、をををりのりのりの日ひ日ひひにやありけんにやありけんにやありけん。。。女をんな女をんなおんな車くるま車くるまくるま、、、物見ものみ物見ものみものみにやりもてゆきけるににやりもてゆきけるににやりもてゆきけるに、、、重通しげみち重通しげみちしげみちののの大納言だいなごん大納言だいなごんだいなごん、、、宰相中將さいしやうのちゆうじやう宰相中將さいしやうのちゆうじやうさいしょうのちゅうじょうにおはしけるにおはしけるにおわしける時とき時ときときにやにやにや、、、車くるま車くるまくるまやりつゞけてやりつゞけてやりつづけて、、、見知みし見知みしみしりたるりたるりたる車くるま車くるまくるまなればなればなれば、、、見み見みみよきよきよき所ところ所ところところにたてさせなどしてにたてさせなどしてにたてさせなどして、、、後のち後のちのちにわがにわがにわが隨身ずいじん隨身ずいじんずいじんををを女をんな女をんなおんなののの車くるま車くるまくるまにやりてにやりてにやりて、、、
  43. 43たれ〳〵ぞたれぞさやまのたれ〳〵ぞたれぞさやまのたれたれぞたれぞさやまのほとゝぎすほとゝぎすほととぎす
  44. 44とかやとかやとかや聞き聞ききこえければこえければこえければ、、、女をんな女をんなおんなののの車くるま車くるまくるまよりよりより、、、
  45. 45うううはははのそらにのそらにのそらにはははいかゞなのらんいかゞなのらんいかがなのらん
  46. 46とぞいひとぞいひとぞいい返かへ返かへかえしけるしけるしける。。。いとすぐれてきこゆることもなくいとすぐれてきこゆることもなくいとすぐれてきこゆることもなく、、、かなはずもやあらんかなはずもやあらんかなわずもやあらん。。。されどもされどもされども、、、事こと事ことことがらのやさしくがらのやさしくがらのやさしく聞き聞ききこえしなりこえしなりこえしなり。。。時とき時ときときののの程ほど程ほどほどにおぼえんこともかたくてにおぼえんこともかたくてにおぼえんこともかたくて、、、さてやまむよりもさてやまむよりもさてやまむよりも、、、かやうにかやうにかように云い云いいひたるもひたるもいたるも、、、さるさるさる事こと事ことことときこゆときこゆときこゆ。。。
  47. 47又また又またまた連歌れんが連歌れんがれんがのいつのいつのいつ文字もじ文字もじもじももも、、、げにとげにとげにと聞き聞ききこえねどもこえねどもこえねども、、、さやうにさやうにさように問と問ととふべきことにふべきことにうべきことに侍はべ侍はべはべりけるなるべしりけるなるべしりけるなるべし。。。又また又またまた確たしか確たしかたしかにもにもにも、、、えうけたまはらざりきえうけたまはらざりきようけたまわらざりき。。。ひひひをををりといふことりといふことりということははは、、、おぼつかなきことにおぼつかなきことにおぼつかなきことに侍はべ侍はべはべるとかやるとかやるとかや。。。
  48. 48兼かね兼かねかね方かた方かたかたははは眞手まて眞手まてまて番ばん番ばんばんととと申まう申まうもうししし侍はべ侍はべはべりけるとかやりけるとかやりけるとかや。。。匡房まさふさ匡房まさふさまさふさ中納言ちゆうなごん中納言ちゆうなごんちゅうなごんののの、、、次第しだい次第しだいしだいとかやにもとかやにもとかやにも、、、このこのこの事こと事ことことははは見み見みみえええ侍はべ侍はべはべるとぞきゝるとぞきゝるとぞきき侍はべ侍はべはべりしりしりし。。。
  49. 49又また又またまたいづれのいづれのいずれの年とし年としとしにかにかにか。。。眞弓まゆみ眞弓まゆみまゆみののの的まと的まとまとかくるかくるかくる事こと事ことことををを、、、舍人とねり舍人とねりとねりののの爭あらそ爭あらそあらそひてひていて、、、日ひ日ひひくれくれくれ夜よ夜よよふくるまでふくるまでふくるまで侍はべ侍はべはべりければりければりければ、、、物見車ものみぐるま物見車ものみぐるまものみぐるまどもどもども、、、おひ〳〵におひ〳〵においおいに歸かへ歸かへかえりけるにりけるにりけるに、、、かきつけてかきつけてかきつけて大將だいしやう大將だいしやうだいしょうののの隨身ずいじん隨身ずいじんずいじんににに、、、とらせたりけるとかやとらせたりけるとかやとらせたりけるとかや。。。
  50. 50梓弓あづさゆみ梓弓あづさゆみあずさゆみためらふためらふためらうほどにほどにほどに月つき月つきつきかげのいるかげのいるかげのいるをををのみのみのみ見み見みみててて歸かへ歸かへかえりぬるかなりぬるかなりぬるかな
  51. 51ひがことにやひがことにやひがことにや侍はべ侍はべはべりけんりけんりけん。。。いづものいづものいずもの國くに國くにくににてにてにて、、、うせうせうせ給たま給たまたまひにしひにしいにし大將殿だいしやうどの大將殿だいしやうどのだいしょうどのののの、、、つきつきつき給たま給たまたまへりしとかやへりしとかやえりしとかや。。。
  52. 52堀河ほりかは堀河ほりかはほりかわのみかどののみかどののみかどの內侍ないし內侍ないしないしにてにてにて、、、とかいひしとかいひしとかいいし人ひと人ひとひとののの、、、家いへ家いへいえをををはははなちてなちてなちて、、、外ほか外ほかほかににに渡わた渡わたわたるとてるとてるとて、、、はしにかきつけたりけるはしにかきつけたりけるはしにかきつけたりける、、、
  53. 53すみわびてわれさへのきのすみわびてわれさへのきのすみわびてわれさえのきの忍草しのぶぐさ忍草しのぶぐさしのぶぐさしのぶしのぶしのぶかた〴〵しげきかた〴〵しげきかたがたしげき宿やど宿やどやどかなかなかな
  54. 54とかきたるとかきたるとかきたる、、、まだそのまだそのまだその家け家けけはははのこりてのこりてのこりて、、、そのそのその歌うた歌うたうたももも侍はべ侍はべはべるなりるなりるなり。。。見み見みみたるたるたる人ひと人ひとひとののの語かた語かたかたりりり侍はべ侍はべはべりしりしりしはははいとあはれにゆかしくいとあはれにゆかしくいとあわれにゆかしく、、、そのそのその家け家けけははは、、、かみわたりにかみわたりにかみわたりに、、、いづことかやいづことかやいずことかや。。。
  55. 55冷泉堀河れいぜいほりかは冷泉堀河れいぜいほりかはれいぜいほりかわののの西にし西にしにしととと北きた北きたきたとのすみなるところとぞとのすみなるところとぞとのすみなるところとぞ人ひと人ひとひとははは申まう申まうもうしゝしゝしし、、、おはしましておはしましておわしまして御覽ごらん御覽ごらんごらんずべきぞかしずべきぞかしずべきぞかし。。。まだうせぬまだうせぬまどうせぬ折をり折をりおりににに」」」。。。又また又またまた堀河ほりかは堀河ほりかはほりかわのみかどののみかどののみかどの、、、うせたまひてうせたまひてうせたまいて、、、今いま今いまいまのみかどののみかどののみかどの、、、內侍ないし內侍ないしないしにわたるべきにわたるべきにわたるべき由よし由よしよし侍はべ侍はべはべりけるにりけるにりけるに、、、
  56. 56あまのがあまのがあまのがははは同おな同おなおなじじじ流なが流ながながれといひながらわたらむことれといひながらわたらむことれといいながらわたらむことははは猶なほ猶なほなおぞぞぞ悲かな悲かなかなしきしきしき
  57. 57とよまれてとよまれてとよまれて侍はべ侍はべはべりけんりけんりけん。。。いとなさけいとなさけいとなさけ多おほ多おほおおくこそくこそくこそ、、、きこえきこえきこえ侍はべ侍はべはべりしかりしかりしか。。。
  58. 58近ちか近ちかちかくおはせしくおはせしくおわせし橫川よかは橫川よかはよかわののの座主ざす座主ざすざすののの坊ばう坊ばうぼうににに、、、といひてといひてといいて、、、心こころ心こころこころたくみにてたくみにてたくみにて石いし石いしいしたてたてたて、、、飾かざ飾かざかざ車くるま車くるまくるまののの風流ふりう風流ふりうふりゅうなどするものなどするものなどするものはべりきはべりきはべりき。。。うたへうたへうたえ申まう申まうもうすことありてすことありてすことありて、、、藏人くらうど藏人くらうどくろうどノノノ頭とう頭とうとうにてにてにて、、、雅兼まさかね雅兼まさかねまさかね中納言ちゆうなごん中納言ちゆうなごんちゅうなごんのおはしけるのおはしけるのおわしける時とき時ときとき、、、かのかのかの家いへ家いへいえにいたりにいたりにいたり侍はべ侍はべはべりけるにりけるにりけるに、、、「「「大原おほはら大原おほはらおおはらのたきののたきののたきの歌うた歌うたうたこそこそこそ、、、いとをかしくいとをかしくいとおかしく聞き聞ききこえしかこえしかこえしか」」」。。。
  59. 59ととと侍はべ侍はべはべりけるにりけるにりけるに、、、「「「うれへうれへうれえ申まう申まうもうすことすことすことはははいかでもいかでもいかでも侍はべ侍はべはべりなんりなんりなん。。。このこのこの仰おほ仰おほおおせこそせこそせこそ身み身みみにしみてにしみてにしみて嬉うれ嬉うれうれしくしくしく侍はべ侍はべはべれれれ」」」。。。とてなんとてなんとてなん限かぎ限かぎかぎりなくりなくりなく喜よろこ喜よろこよろこびてびてびて出い出いいでにけるでにけるでにける。。。
  60. 60そのそのその歌うた歌うたうたははわ、、、花園はなぞの花園はなぞのはなぞののおとゞののおとゞののおとどの、、、大原おほはら大原おほはらおおはらののの房ばう房ばうぼうののの、、、瀧たき瀧たきたき見み見みみににに入い入いいりたまへりけるにりたまへりけるにりたまえりけるに、、、
  61. 61今いま今いまいまよりよりよりはははかけておろかにいはしみづかけておろかにいはしみづかけておろかにいわしみず御覽ごらん御覽ごらんごらんをををへつるたきのへつるたきのへつるたきの白糸しらいと白糸しらいとしらいと
  62. 62とよめりけるとぞとよめりけるとぞとよめりけるとぞ。。。戯たはぶ戯たはぶたわぶれごとのやうなれどもれごとのやうなれどもれごとのようなれども、、、ことざまのことざまのことざまの、、、をかしくをかしくおかしく聞き聞ききこえこえこえ侍はべ侍はべはべればればれば、、、申まう申まうもうししし侍はべ侍はべはべるになんるになんるになん。。。
  63. 63つのかみつのかみつのかみといひしといひしといいし人ひと人ひとひとははは、、、何いづ何いづいずれのれのれの山里やまざと山里やまざとやまざとにかにかにか、、、夕ゆふ夕ゆふゆうぐれにぐれにぐれに、、、庭には庭にはにわにおりてにおりてにおりて、、、とゆきかうゆきとゆきかうゆきとゆきこうゆき、、、しあるきてしあるきてしあるきて、、、
  64. 64あはれなるあはれなるあわれなるかな〳〵かな〳〵かなかな
  65. 65とととたび〳〵ながめければたび〳〵ながめければたびたびながめければ、、、帶刀たちはき帶刀たちはきたちわき信のぶ信のぶのぶといひしがといひしがといいしが、、、
  66. 66日ひ日ひひくるればくるればくるればところ〴〵のところ〴〵のところどころの鐘かね鐘かねかねののの聲こゑ聲こゑこえ
  67. 67ととと付つ付つつけたりければけたりければけたりければ、、、あなふわいとなんいひけるあなふわいとなんいひけるあなうわいとなんいいける。。。「「「そのかみそのかみそのかみのののかはづかはづかわずをををとりてとりてとりて、、、飼か飼かかひけるひけるいける程ほど程ほどほどににに、、、そのかそのかそのかはははづづず、、、身み身みみまかりにければまかりにければまかりにければ、、、ほしてもたりけるとかやほしてもたりけるとかやほしてもたりけるとかや」」」。。。
  68. 68いづれのいづれのいずれの齋さい齋さいさいののの宮みや宮みやみやとかとかとか。。。人ひと人ひとひとののの參まゐ參まゐまいりてりてりて、、、今樣いまやう今樣いまやういまよう歌うた歌うたうたひなどせられけるにひなどせられけるにいなどせられけるに、、、末すゑ末すゑすえつつつ方かた方かたかたににに四し四しし句く句くくののの神かみ神かみかみ歌うた歌うたうとうううたふとたふととうとててて、、、「「「うゑきうゑきうえきをををせしやうせしやうせしょうははは、、、鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすすませんとにもあらずすませんとにもあらずすませんとにもあらず」」」。。。
  69. 69ととと歌うた歌うたうたはれければはれければわれければ、、、心こころ心こころこころときときとき人ひと人ひとひとなどなどなど聞き聞きききてきてきて、、、憚はゞか憚はゞかはばかりあることなどやりあることなどやりあることなどや、、、出い出いいでこんとでこんとでこんと思おも思おもおもひけるひけるいけるほどにほどにほどに、、、「「「くつ〳〵かうなるなめすゑてくつ〳〵かうなるなめすゑてくつくつこうなるなめすえて、、、染紙そめがみ染紙そめがみそめがみよませんとなりけりよませんとなりけりよませんとなりけり」」」。。。
  70. 70とぞとぞとぞ、、、うたはれたりけるがうたはれたりけるがうたわれたりけるが、、、いといといと其そ其そそののの人ひと人ひとひとうたよみなどにうたよみなどにうたよみなどにははは聞き聞ききこえざりけれどもこえざりけれどもこえざりけれども、、、得え得ええつるつるつる道みち道みちみちになりぬればになりぬればになりぬれば、、、かくぞかくぞかくぞ侍はべ侍はべはべりけるりけるりける。。。このこのこの事こと事ことこと刑部卿ぎやうぶきやう刑部卿ぎやうぶきやうぎょうぶきょうとかとかとか。。。
  71. 71人ひと人ひとひとののの語かた語かたかたられられられ侍はべ侍はべはべりしにりしにりしに、、、侍從大納言じじゆうのだいなごん侍從大納言じじゆうのだいなごんじじゅうのだいなごんととと、、、申まう申まうもうすすす人ひと人ひとひとももも侍はべ侍はべはべりしがりしがりしが、、、さらばことわりなるべしさらばことわりなるべしさらばことわりなるべし。。。
  72. 72といふといふという寺てら寺てらてらににに、、、あるあるある僧坊そうばう僧坊そうばうそうぼうののの、、、池いけ池いけいけのののはははちすにちすにちすに、、、鳥とり鳥とりとりののの子こ子ここをををうみたりけるうみたりけるうみたりけるをををとりてとりてとりて、、、籠こ籠ここにいれてにいれてにいれて、、、飼か飼かかひけるひけるいけるほどにほどにほどに、、、うぐひすのうぐひすのうぐいすの籠こも籠こもこもよりよりより入い入いいりてりてりて、、、ものくゝめなどしければものくゝめなどしければものくくめなどしければ、、、うぐひすのうぐひすのうぐいすの子こ子ここなりけりとなりけりとなりけりと、、、知し知ししりにけれどりにけれどりにけれど、、、子こ子ここはははおほきにておほきにておおきにて親おや親おやおやにもにもにも似に似ににざりければざりければざりければ、、、怪あや怪あやあやしくしくしく思おも思おもおもひけるひけるいけるほどにほどにほどに、、、子こ子ここのののやう〳〵おとなしくなりてやう〳〵おとなしくなりてようようおとなしくなりて、、、ほとゝぎすとほとゝぎすとほととぎすと、、、鳴な鳴ななきければきければきければ、、、むかしよりむかしよりむかしより云い云いいひひい傳つた傳つたつたへたるへたるえたるふるきことふるきことふるきこと誠まこと誠まことまことなりとなりとなりと思おも思おもおもひてひていて、、、あるあるある人ひと人ひとひとよめるよめるよめる、、、
  73. 73親おや親おやおやのおやぞいまのおやぞいまのおやぞいまはははゆかしきゆかしきゆかしき郭公ほととぎす郭公ほととぎすほととぎすはやはやはや鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすのこのこのこははは子こ子ここなりけりなりけりなりけり
  74. 74とよめりけるとよめりけるとよめりける。。。萬葉集まんえふしふ萬葉集まんえふしふまんようしゅうののの長歌ちやうか長歌ちやうかちょうかにににのかひこののかひこののかいこの中なか中なかなかのののほとゝぎすほとゝぎすほととぎす、、、などいひてなどいひてなどいいて、、、このこのこの事こと事ことことににに侍はべ侍はべはべるなるるなるるなるををを、、、いといといと興きよう興きようきょうあることにもあることにもあることにも侍はべ侍はべはべるなるかなるなるかなるなるかな。。。
  75. 75藏人くらうど藏人くらうどくろうど實さね實さねさね兼かね兼かねかねときこえしときこえしときこえし人ひと人ひとひとののの、、、匡房まさふさ匡房まさふさまさふさののの中納言ちゆうなごん中納言ちゆうなごんちゅうなごんののの物語ものがたり物語ものがたりものがたりにかけるにかけるにかける文ふみ文ふみふみにもにもにも、、、中なか中なかなかごろのごろのごろの人ひと人ひとひとこのこのこの事こと事ことこと見み見みみあらはしたるあらはしたるあらわしたる事こと事ことことなどなどなど、、、かきてかきてかきて侍はべ侍はべはべるとかやるとかやるとかや。。。かやうにこそかやうにこそかようにこそ、、、傳つた傳つたつたへへえ聞き聞ききくことにてくことにてくことにて侍はべ侍はべはべるるるををを、、、目め目めめぢかくぢかくじかく、、、かゝるかゝるかかる事こと事ことことにてにてにて侍はべ侍はべはべらんこそらんこそらんこそ、、、いとやさしくいとやさしくいとやさしく侍はべ侍はべはべるなれるなれるなれ。。。
  76. 76右京うきやう右京うきやううきょうノノノ權けん權けんけんノノノ大夫だいぶ大夫だいぶだいぶ政まさ政まさまさといひてといひてといいて、、、歌うた歌うたうたよめるよめるよめる人ひと人ひとひとののの、、、さることありとさることありとさることありと聞き聞きききてきてきて、、、わざとたづねきてわざとたづねきてわざとたずねきて、、、そのそのその鳥とり鳥とりとりののの籠こ籠ここににに、、、結むす結むすむすびつけられびつけられびつけられ侍はべ侍はべはべりけるうたりけるうたりけるうた、、、
  77. 77鶯うぐひす鶯うぐひすうぐいすののの子こ子ここになりにけるになりにけるになりにける時鳥ほととぎす時鳥ほととぎすほととぎすいづれのねにかいづれのねにかいずれのねにか鳴な鳴ななかんとすらんかんとすらんかんとすらん
  78. 78萬葉集まんえふしふ萬葉集まんえふしふまんようしゅうにににははは、、、「「「父ちち父ちちちちににに似に似ににてもなかずてもなかずてもなかず。。。母はは母ははははにゝてもなかずにゝてもなかずににてもなかず」」」。。。ととと侍はべ侍はべはべるなればるなればるなれば、、、うぐひすとうぐひすとうぐいすとはははなかずやなかずやなかずや有あ有あありけんりけんりけん。。。などなどなど、、、いといといと優やさ優やさやさしくこそしくこそしくこそ申まう申まうもうすめりしかすめりしかすめりしか。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

中ごろ、男がいました。女を思って時々通っていたが、男がいる所で、灯火の炎の上にその女が見えたので、「これは忌むべきことだそうだ。火の燃えている所をかき落として、その人に飲ませるのだそうだ」といって紙に包んで持っていたうちに、用事が多くて紛れることがあったので忘れて、一日二日過ぎて、思い出すままに行ったところ、「病んで程なく女は亡くなりました」と言ったので、早く行って、あの灯火のかき落とした物を見せ(飲ませ)ないで(しまった)と、自分の過ちに悲しく思って、無常の鬼に一口に食われたというような心の憂さに、足ずりをしそうなほど嘆き泣いていたところ、「お見せせよということでしょうか、このお手紙を見つけました」といって取り出したのを見ると、

鳥部山の谷に煙が見えたなら、はかなく消えた私だと知ってください。

と書いてありました。歌までも灯火の煙のように思われて、たいそう悲しく思ったのも道理です。

またある女がいました。時々通っていた男がいつしか途絶えたので、つらくて心の中で思い悩んでいたが、その人が門の前を通り過ぎることがあったのを、家の人が「今お通りになります」と言ったので、思い余って「ちょっと立ったままでもお入りください」と追いかけて言わせたところ、(男は)車を返して入ってきたが、もと見た時よりも慕わしい様子で、ことのほか(美しく)見えたので、後悔して何かと言ったけれど、女はただ経ばかり読んで返事もしなかったうちに、七の巻の「即往安楽世界」という所を繰り返し読むと見ていたうちに、そのまま息絶えて亡くなったので、自分も寄って押さえ、人も寄って何かとしたけれど、そのまま亡くなってしまいました。こうして(男は)籠居もし、また髪もおろそうと思ったけれど、その時弁であった人なので、さすがに籠居もできず、土に下りて(喪に服し)、あれこれのことまで取り計らって、しばらくは山里に隠れていたので、世を背いたと聞こえたけれど、さすがに隠れきれずに出仕したので、「帰る弁」と言ったそうです。

左衛門尉頼実という蔵人は、歌の道にすぐれ、また好きにも好んでいましたが、七条にある所で「夕べに郭公を聞く」という題を詠みました時に、酔って、その家の車宿りに立ててあった車で歌を考えようとして寝過ごしてしまったのを、(人々は)探したけれど思いもよらず、もう披講しようとして皆が書いた後で、「このあたりは稲荷の明神こそ(おいでになる)」といって念じたところ、ふと思いついたのを書いたのでした。

稲荷山を越えてやって来たのか、郭公よ。夕べにかけて、木綿をかけた(神の山の方から)声が聞こえることだ。

同じ人が、「人に知られるほどの歌を詠ませてください。五年の命に代えましょう」と住吉に申したところ、「落葉雨の如し」という題に、

木の葉の散る宿では聞き分けることがない。時雨の降る夜も、時雨の降らない夜も。

と詠んだのを、必ずこれ(が祈った歌)だとも思いもよらなかったのでしょうか、病気になって生きようと祈りなどしたところ、家にいた女に住吉の神が乗り移って、「あのような歌を詠ませたではないか。だから生きられまい」とおっしゃったので、ひたすら後世の祈りになったということです。

また同じ一族で三河守頼綱といった人は、まだ若くて親のもとで三河国に下った時、その国の女に言い寄って、二度と便りもしなかったので、女が、

あきれたこと。(あの夜)見たのは夢だったのかと問ううちに、(あなたに)思い出させる身になってしまったことです。

と申したので、改めて心惹かれて思ったのでした。このように詠んだからといって、容貌が変わるものかとも思われますが、昔の人は、中ごろまでは、人の心はこのようでございました。このことは、その人の子の仲正といった者が語ったそうです。

三河守頼綱は、歌の道において人も認めていました。自分でも、ことのほか思い上がった様子でした。俊頼という人が少将であった時、頼綱が言ったのは、「少将殿、少将殿、歌を詠もうとお思いなら、頼綱をお供させなさい。ほかの者は入るべきではありません。洗い清めた仏供を二かわらけ供えなさい」などと言ったのでした。その歌は多くございますが、

夏山の楢の葉がそよぐ夕暮れは、今年も秋の心地がすることだ。

という歌こそ、人が口ずさんでいるようです。

近い世に、ある女を、八幡にいる宮寺の別当で僧都と申した人が、小侍従とかいう人の親でしょうか、その坊に籠め据えて年月が経ったうちに、都からしかるべき人の娘を(妻として)渡そうと言ってきたので、「このようなことがあるので、人の聞くところも憚られるから、しばらく都へ帰っていなさい。迎えに行く時もあろう」といって支度して出したが、あまりに大げさに贈り物などをして持たせたので、(女は)今はもうこれで終わりなのだろうと思うにつけても、たいそう心細くて、硯瓶の下に歌を書いて置いて行ったのを、取り出して見ると、

行く方も知らない浮き木のような身だけれど、世にめぐっているなら、流れて(またあなたに)会うこともあるでしょう。

と詠んであったのを見て、(別当の)娘であった人で、院(鳥羽院)の宮々などをお産み申し上げた方が、まだ若くていらしたのに、「京へ送った人が、この歌を詠み置いていった。返事をしたものだろうか。また迎えたものだろうか」とご相談申し上げたところ、「返歌は世の常のことです。お迎えになってこそ、歌の本意もございましょう」と申したので、心にかなったのでしょうか、その日のうちに迎えにまた(使いを)やって、「今日必ずお帰りください」といって、夜の明けるころに帰ってきました。またそのしかるべき人の娘は、言いようもないほど居所などを設け、端女や雑仕などという者を大勢整えて据えたけれど、一夜ばかりで、硯瓶の人にばかり(寄り添って)離れることもなかったのでした。その女も、大臣家の宮仕え人であったが、母が筑紫に下って菅原の氏寺の別当に連れ添っていたのが、その法師が亡くなったので都へ上るべきよすがもなくていたのを、その娘は朝夕に嘆いていたところ、大臣殿が五節の舞姫を奉られた時でしょうか、童として出すべき女を外のあちこちでご覧になったけれど、これほどの者が見えなかったので、「思うところがあって言うのだ。言うことを聞いてくれるか」とあったので、「どうして仰せ言に従わずにおりましょう」と申したところ、「五節の童に出そうと思う」とおっしゃったので、「どんなことも承りますが、それはできません」と申したところ、「強いて思うことなのだ。ぜひ聞いてくれたら、どんな大事でもかなえよう」とあったので、これほどまでにおっしゃることを、そうむやみにもお断りできずに出たところ、あの大臣殿の童はどれほどの者だろうといって、殿上人が我も我もと見たがり合った中に、盛んに言い寄っていた何の少将などという人も見ようとしたのを、ある殿上人が「珍しくもない。いつもご覧なさい」と言ったので、不審に思って見ると、自分が離れずに言い寄っている人だったので、恨んで恥ずかしめたけれど、それほどまでに思い立って出たのでした。後に大臣殿が「この喜びに、どんな大事があるか」とお尋ねになったところ、「熊野に詣でたいという志が深うございます」と申すと、たやすいことだといって人夫などを大勢召して、清らかな衣など何かと整えてお出しになって、(熊野に)参って筑紫の母を迎え寄せることを祈願申して帰るところ、淀のあたりでしたか、御幸などの装いのように道も避けきれないほどのことがあったが、「今日、政所(の北の方)が京にお出になる」といって、外見には何とも思っていない様子が言いようもなく見えたうちに、垂れ衣の隙間から見えたのでしょうか、手紙を書いて「京からのお手紙です」とあるのを見ると、大臣殿の御使いではなくて、思いがけない筋の手紙でした。あの石清水の僧(別当)の舟の人などで、見知っている供人だと言ったので、聞き入れもしないでいたが、あれこれ思いがけず言わせたので、断りきれずに(舟から)下りて、あの筑紫の母を迎え取って、都に住まわせなどしたと聞こえましたのは、小大進とかいう人のことでしょうか。

陸奥守橘為仲と申す人がその国に下って、五月四日、館に庁官とかいう年老いた者が出てきて菖蒲を葺かせていたのを見ると、いつもの菖蒲ではない草を葺いていたのを見て、「今日は菖蒲を葺く日であるのに、これはどういうものを葺くのか」と問わせたところ、「伝え承っておりますのは、この国では昔、五月といっても菖蒲を葺くことも知りませんでしたが、中将(実方)の御館の御時、『今日は菖蒲を葺くものなのに、どうしてそういうこともないのか』とおっしゃったので、『国の例にそういうことはございません』と申したところ、『五月雨のころなど、軒の雫も菖蒲によってこそ、もう少し見るにも聞くにも心が澄むことなのだから、早く葺け』とおっしゃったけれど、『この国には生えておりません』と申したところ、『そうであっても、どうしてなくてよかろう。安積の沼の花かつみというものがある。それを葺け』とおっしゃってから、真菰と申すものを葺いております」と、武蔵の入道隆資と申す人が語りました。もしそうなら、「ひく手もたゆく長きねの」という歌はおぼつかないことです。実方中将の御墓は陸奥にあると伝え聞きましたが、本当でしょうか。蔵人頭にもなられずに陸奥守になって亡くなられたので、この世までも、殿上の間の台盤を据えたところに雀が上って(台盤の飯を)食べる時などがあるそうです。実方の中将が頭になられなかった思いが残っていらっしゃるのだなどと申すのも、本当ならば、しみじみと畏れ多くも末世の人はあることですね。

いつの年でございましたか。右近の馬場の手結の日でしたでしょうか。女車が見物に向かっていたところ、重通の大納言が宰相中将でいらした時でしょうか、車を続けて行って、見知っている車なので、見やすい所に立てさせたりして、後に自分の随身を女の車にやって、

誰だ誰だ、誰だ、さ山の郭公よ

とか申し上げたので、女の車から、

上の空ではどう名のりましょう

と言い返したそうです。たいしてすぐれて聞こえることもなく、(付け合いも)かなっていないかもしれません。けれども、事の様子が優雅に聞こえたのです。その場ですぐに思いつくことも難しくて、それで黙ってしまうよりも、このように言ったのも、もっともなことと聞こえます。また連歌の五文字も、なるほどとは聞こえないけれども、そのように問うべきことだったのでしょう。また確かには承っておりません。「手結(ひをり)」ということは、はっきりしないことだそうです。兼方は「真手番」と申したとか。匡房中納言の『江次第』とかいうものにも、このことは見えると聞きました。

またいつの年でしたか、真弓の的を懸けることを舎人が争って、日が暮れ夜が更けるまでありましたので、見物の車どもが次々に帰ったところ、(歌を)書きつけて大将の随身に取らせたとか。

梓弓を引くのをためらっているうちに、月の光が(山に)入るのばかりを見て帰ってしまったことだ。

間違いでしょうか。出雲国で亡くなられた大将殿(藤原忠実か)が(大将に)おつきになっていらした(時の)ことだとか。

堀河の帝の内侍で周防とかいった人が、家を手放して他に移るといって、柱に書きつけた歌、

住みわびて私までもが退いてゆく、軒の忍ぶ草よ、偲ぶことの方々に茂っている宿であることよ。

と書いたのが、まだその家は残っていて、その歌もあるそうです。見た人が語りましたのは、「たいそうしみじみと心惹かれて。その家は上のあたりの、どこでしたか、冷泉堀河の西と北の隅にある所だと人は申しました。お出かけになってご覧になるべきですよ。まだなくならないうちに」と。また堀河の帝がお亡くなりになって、今の帝(鳥羽天皇)の内侍に移るべき旨がありました時に、

天の川は同じ流れ(同じ皇統)とは言いながら、(新しい帝のもとへ)渡ることはやはり悲しいことです。

とお詠みになったのでしょう。たいそう情趣深く聞こえました。

近ごろいらした横川の座主の坊に、琳賢といって、器用で石を立てたり飾り車の風流(の細工)などをしたりする者がおりました。訴え申すことがあって、雅兼中納言が蔵人頭でいらした時、その家に参りましたところ、「大原の滝の歌こそ、たいそう趣深く聞こえた」とおっしゃったので、「訴え申すことはどうなってもかまいません。この仰せこそ身にしみて嬉しゅうございます」といって、限りなく喜んで出て行きました。その歌は、花園の大臣(有仁)が大原の坊の滝を見にお入りになった時に、

今からは決しておろそかには言いません、岩清水よ、(大臣の)ご覧を経た滝の白糸よ。

と詠んだのだそうです。戯れ言のようだけれど、様子が趣深く聞こえますので申したのです。

摂津守範永といった人は、どこの山里でしたか、夕暮れに庭に下りて、行きつ戻りつ歩いて、

しみじみと趣深いことよ、趣深いことよ

と何度も口ずさんでいたので、帯刀節信といった者が、

日が暮れると、あちこちの鐘の声(がする)

と付けたので、「ああ、すばらしい」と言ったそうです。「その昔、井手の蛙を捕って飼っていたところ、その蛙が死んだので、干して持っていたとか」。

どの斎宮でしたか、人が参って今様を歌ったりなさった時に、終わりの方に四句の神歌を歌うといって、「植木をしたわけは、鶯を住ませようというのでもない」と歌われたので、心の鋭い人などが聞いて、(斎宮で)憚りのあることなどが出てこないかと思っていたところに、「くつくつと鳴くなるなめ(なめくじ?)を据えて、染紙(経)を読ませようというのであった」と歌われたが、その人は歌詠みとしては聞こえなかったけれど、得意の道になると、このようでございました。このことは刑部卿とかいう人が語られましたが、侍従大納言(成通)と申す人もありましたので、それなら道理でしょう。

菩提樹院という寺で、ある僧坊の池の蓮に鳥が卵を産んでいたのを取って籠に入れて飼っていたところ、鶯が籠に入ってきて餌を含ませたりしたので、鶯の子だったのだと知ったけれど、子は大きくて親にも似ていなかったので不審に思っていたうちに、子がだんだん大人びてきて「ほととぎす」と鳴いたので、昔から言い伝えている古いことは本当だったと思って、ある人が詠んだ歌、

(鶯の親の)親こそ今は知りたいものだ。郭公は早くも鶯の子だったのだ。

と詠みました。万葉集の長歌に「鶯の卵の中の郭公」などといって、このことがあるそうですが、たいそう興あることでございますね。蔵人実兼と申した人が匡房の中納言の物語を書いた書物(江談抄)にも、中ごろの人がこのことを見届けたことなどを書いているとか。このように伝え聞くことでございますのに、目の前でこのようなことであるのこそ、たいそう優雅でございます。右京権大夫頼政といって歌を詠む人が、そういうことがあると聞いて、わざわざ訪ねてきて、その鳥の籠に結びつけられました歌、

鶯の子になってしまった郭公は、どちらの声で鳴こうとするのだろう。

万葉集には「父に似ても鳴かず、母に似ても鳴かず」とございますので、鶯とは鳴かなかったのでしょうか、などと、たいそう優雅に申したようです。

意訳

巻十「うちぎき(打聞)」は、聞き書きの意。和歌にまつわる逸話を自由に書き連ねる。章題の「敷島の打聞」の「敷島」は大和、ひいては和歌のこと。

頼実は住吉の神に「五年の命と引き換えに名歌を」と祈り、「木の葉ちる宿は聞きわく事ぞなき」の名歌を得たが、のちに病気になると神が「あの歌を詠ませたではないか」と告げ、命は延びなかったという。和歌に命をかけた数寄者の話である。

八幡の別当の女の話では、別当に捨てられかけた女が硯瓶の下に残した歌によって呼び戻され、その女房小大進は、五節の童に出た後、思いがけない縁で筑紫の母を迎えることができた。陸奥では菖蒲の代わりに花かつみ(真菰)を葺いた話、藤原実方の霊が雀となって殿上の台盤をついばむ話、郭公が鶯の巣で育つ「托卵」を目撃した話など、多彩な聞き書きが続く。

語釈・文法注

鳥部山
京都東山の火葬場。
卽住安樂世界
法華経巻七・薬王品の句「即往安楽世界」。女人が極楽に往生することを説く。
かへる辨
出家したと思われながら出仕に戻った弁官。
左衞門ノ尉賴實
源頼実(1015〜1044)。歌人。和歌六人党の一人。
いなり山
稲荷山。京都伏見の稲荷大社の山。
住吉
住吉大社。和歌の神として信仰された。
三河守賴綱
源頼綱(1025〜1097)。頼実の甥。歌人。
仲正
源仲正。頼綱の子。頼政の父。歌人。
佛供
仏に供える飯。
硯がめ
硯に注ぐ水を入れる瓶。
小大進
女流歌人。石清水別当光清の娘とも。
陸奧守橘爲仲
橘為仲(?〜1085)。歌人。陸奥守。
はなかつみ
花かつみ。陸奥の安積の沼の名物とされた水草。真菰とする説がある。
實方中將
藤原実方(?〜998)。歌人。陸奥守として下り、任地で没した。死後雀になって殿上の台盤の飯をついばんだという伝説がある。
ひをり
手結。騎射や競馬の前に行う練習の日。
江次第
大江匡房『江家次第』。朝廷の儀式の解説書。
周防
周防内侍。第62章参照。
琳賢
比叡山の僧。造園や細工に巧みだった。
つのかみ範永
藤原範永。摂津守。歌人。第47章参照。
帶刀節信
藤原節信。帯刀。歌人。数寄者として知られた。
井手のかはづ
山城国井手の蛙。歌枕。節信が井手の蛙の干物を持っていたという逸話は『袋草紙』に見える。
菩提樹院
京都にあった寺。
鶯のかひこの中のほとゝぎす
万葉集巻九・高橋虫麻呂の長歌。郭公が鶯の巣に卵を産む「托卵」を詠む。
右京ノ權ノ大夫賴政
源頼政(1104〜1180)。歌人・武将。のち以仁王と挙兵した。

文法

かくよむとも、みめかたちやは變るべき
このように詠んだからといって、容貌が変わるものだろうか、いや変わらない。
さればえ生くまじ
だから生きることはできまい。

和歌

鳥部山谷にけぶりの見えたらばはかなく消えし我れとしらなむ

詠者
女
状況
死んだ女が男に遺した手紙の歌。

修辞

比喩
火葬の煙をはかなく消えた自分の姿とする。

いなり山こえてやきつる郭公ゆふかけてしも聲のきこゆる

詠者
源頼実
状況
「夕べに郭公を聞く」の題で、稲荷明神に祈って詠んだ歌。

修辞

掛詞
「ゆふ」に「夕」と神に捧げる「木綿」をかける。

木の葉ちる宿は聞きわく事ぞなき時雨する夜もしぐれせぬよも

詠者
源頼実
状況
住吉の神に祈って得た「落葉雨の如し」の題の歌(後拾遺集)。

修辞

趣向
落葉の音が時雨の音と区別がつかないことを詠む。

あさましや見しは夢かと問ふ程におどろかすにもなりにけるかな

詠者
三河の女
状況
一夜限りで便りをしなくなった源頼綱に贈った歌。

修辞

掛詞
「おどろかす」に、目を覚まさせることと、便りをして思い出させることをかける。

夏山のならのはそよぐ夕暮はことしも秋のこゝちこそすれ

詠者
源頼綱
状況
頼綱の代表的な歌(後拾遺集)。

行く方もしらぬうき木の身なれどもよにしめぐらば流れあへかめ

詠者
八幡の別当の女
状況
別当の坊を出される時、硯瓶の下に残した歌。

修辞

掛詞
「うき木」に「浮き木」と「憂き」をかける。
縁語
「うき木」「流れ」「めぐる」。

梓弓ためらふほどに月かげのいるをのみ見て歸りぬるかな

詠者
作者未詳
状況
真弓の的懸けが夜まで長引き、見物の車が帰った時の歌。

修辞

掛詞
「いる」に月が「入る」と弓を「射る」をかける。
縁語
「梓弓」「いる」。

すみわびてわれさへのきの忍草しのぶかた〴〵しげき宿かな

詠者
周防内侍
状況
住み慣れた家を手放す時、柱に書きつけた歌(金葉集)。

修辞

掛詞
「のき」に「退き」と「軒」、「しのぶ」に「忍草」と「偲ぶ」をかける。

あまのがは同じ流れといひながらわたらむことは猶ぞ悲しき

詠者
周防内侍
状況
堀河天皇の崩御後、鳥羽天皇の内侍として仕えることになった時の歌。

修辞

比喩
天の川を皇統にたとえる。

今よりはかけておろかにいはしみづ御覽をへつるたきの白糸

詠者
琳賢
状況
源有仁が大原の坊の滝を見に来た時に詠んだ歌。

修辞

掛詞
「いはしみづ」に「言はじ」と「岩清水」をかける。

親のおやぞいまはゆかしき郭公はや鶯のこは子なりけり

詠者
作者未詳
状況
鶯が郭公の雛を育てるのを見て詠んだ歌。

鶯の子になりにける時鳥いづれのねにか鳴かんとすらん

詠者
源頼政
状況
鶯に育てられた郭公の籠に結びつけた歌。

修辞

掛詞
「ね」に「音(声)」と「根(血筋)」を響かせる。

解説

巻十は今鏡の結びの巻で、和歌にまつわる逸話を自由に書き連ねる「打聞」の形をとる。歌に命をかける数寄者や、和歌によって人生が変わった人々の話が多い。

関連

出典

底本
関根正直『今鏡新註』 六合館、昭和2年(1927)、394〜409頁(コマ212–219)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日