古典ライブラリー

大鏡 第10章

後一条院と二つの鏡の歌

帝紀の最後は当代の後一条天皇。一条天皇の第二皇子で、母は道長の娘彰子。祖父の道長、叔父の頼通・教通らが後見する安泰の御代である。世継は、帝のことを先に語ったのは道長の栄華の根を示すためだと言い、繁樹は「明らかな鏡に会ったようだ」と歌を詠み、世継も「古鏡」の歌を返す。この問答が『大鏡』という書名の由来となる。

  1. 1六十八代ろくじふはちだい六十八代ろくじふはちだいろくじゅうはちだい   
  2. 2つぎのみかどつぎのみかどつぎのみかど當代たうだい當代たうだいとうだい。。。御おん御おんおんいみなあつなりいみなあつなりいみなあつなり。。。これこれこれ一條院いちでうゐん一條院いちでうゐんいちじょういんののの御おん御おんおん第二だいに第二だいにだいに王子わうじ王子わうじおうじ也なり也なりなり。。。御母みはは御母みははみわわいまのいまのいまの入道殿下にふだうでんか入道殿下にふだうでんかにゅうどうでんかののの第一だいいち第一だいいちだいいちののの御おん御おんおんむすめなりむすめなりむすめなり。。。皇太后宮くわうたいこうぐう皇太后宮くわうたいこうぐうこうたいごうぐうととと申まう申まうもうすすす。。。
  3. 3たゞたゞただ今いま今いまいまたれかたれかたれかはははおぼつかなくおぼしおぼつかなくおぼしおぼつかなくおぼし思人おもふひと思人おもふひとおもうひとののの侍はべ侍はべはべらんらんらん。。。されどまづすべらぎのされどまづすべらぎのされどまずすべらぎの御おん御おんおん事こと事ことことををを申まう申まうもうさまにたがへさまにたがへさまにたがえ侍はべ侍はべはべらぬことらぬことらぬこと。。。寬弘くわんこう寬弘くわんこうかんこう五年ごねん五年ごねんごねん戊申つちのえさる戊申つちのえさるつちのえさる九月くぐわつ九月くぐわつくがつ十一日じふいちにち十一日じふいちにちじゅういちにちにてにてにて生うま生うまうまれさせれさせれさせ給たま給たまたまふふう。。。
  4. 4同おなじ同おなじおなじ八年はちねん八年はちねんはちねん辛亥かのとゐ辛亥かのとゐかのとい六月ろくぐわつ六月ろくぐわつろくがつ十三日じふさんにち十三日じふさんにちじゅうさんにち東宮とうぐう東宮とうぐうとうぐうにたゝせにたゝせにたたせ給たま給たまたまひきひきいき。。。御歲おほんとし御歲おほんとしおおんとし四歲しさい四歲しさいしさい。。。長和ちやうわ長和ちやうわちょうわ五年ごねん五年ごねんごねん丙辰ひのえたつ丙辰ひのえたつひのえたつ五月ごぐわつ五月ごぐわつごがつ廿九日にじふくにち廿九日にじふくにちにじゅうくにち位くらゐ位くらゐくらいにつかせにつかせにつかせ給たま給たまたまききき。。。御歲おほんとし御歲おほんとしおおんとし九歲くさい九歲くさいくさい。。。寬仁くわんにん寬仁くわんにんかんにん二年にねん二年にねんにねん戊午つちのえうま戊午つちのえうまつちのえうま正月しやうぐわつ正月しやうぐわつしょうがつ三日みつか三日みつかみつか御元服ごげんぷく御元服ごげんぷくごげんぷく。。。
  5. 5御歲おほんとし御歲おほんとしおおんとし十一じふいち十一じふいちじゅういち。。。位くらゐ位くらゐくらいにつかせにつかせにつかせ給たま給たまたまててて十年じふねん十年じふねんじゅうねんにやならせにやならせにやならせ給たまは給たまはたまわらむらむらむ。。。今年ことし今年ことしことし二年にねん二年にねんにねん乙丑きのとうし乙丑きのとうしきのとうしとこそとこそとこそははは申まう申まうもうめれめれめれ。。。同おな同おなおなじみかどゝじみかどゝじみかどと申まう申まうもうせどもせどもせども。。。うしろみおほくたのもしくおはしますうしろみおほくたのもしくおはしますうしろみおおくたのもしくおわします。。。
  6. 6御おん御おんおんおほぢにてたゞおほぢにてたゞおおじにてただ今いま今いまいまののの入道殿下にふだうでんか入道殿下にふだうでんかにゅうどうでんか出家しゆつけ出家しゆつけしゅっけせさせせさせせさせ給たま給たまたまへれどへれどえれど。。。よのおやよのおやよのおや一切衆生いつさいしゆじやう一切衆生いつさいしゆじやういっさいしゅじょう一子いつし一子いつしいっしのとくのとくのとくはははぐゝみおはしますぐゝみおはしますぐくみおわします。。。第一だいいち第一だいいちだいいちののの御おん御おんおんおぢにてたゞおぢにてたゞおじにてただ今いま今いまいまののの左大臣さだいじん左大臣さだいじんさだいじん。。。
  7. 7一天下いちてんか一天下いちてんかいちてんかをををまつりごちておはしますまつりごちておはしますまつりごちておわします。。。つぎのつぎのつぎの御おん御おんおんおぢとおぢとおじと申まう申まうもうはははにてにてにて左大將さだいしやう左大將さだいしやうさだいしょうかけておはしますかけておはしますかけておわします。。。つぎのつぎのつぎの御おん御おんおんおぢとおぢとおじと申まう申まうもうははは大納言だいなごん大納言だいなごんだいなごんあるひあるひあるいははは東宮大夫とうぐうのだいぶ東宮大夫とうぐうのだいぶとうぐうのだいぶ。。。
  8. 8中宮權大夫ちゆうぐうのごんのだいぶ中宮權大夫ちゆうぐうのごんのだいぶちゅうぐうのごんのだいぶ。。。中納言ちゆうなごん中納言ちゆうなごんちゅうなごんなどなどなど樣〴〵さまざま樣〴〵さまざまさまざまにておはしますにておはしますにておわします。。。かくのごとくにおはしませばかくのごとくにおはしませばかくのごとくにおわしませば御おん御おんおんうしろみおほくもおはしますうしろみおほくもおはしますうしろみおおくもおわします。。。むかしもむかしもむかしも今いま今いまいまもみかどかしこしともみかどかしこしともみかどかしこしと申まう申まうもうせどせどせど。。。
  9. 9臣じん臣じんじんあまたしてかたぶけたてまつるあまたしてかたぶけたてまつるあまたしてかたぶけたてまつる時とき時ときときはははかたぶきかたぶきかたぶき給たま給たまたまものものもの也なり也なりなり。。。さればたゞさればたゞさればただ一天下いちてんか一天下いちてんかいちてんかはははわがわがわが御おん御おんおんうしろみのかぎりにておはしませばうしろみのかぎりにておはしませばうしろみのかぎりにておわしませば。。。いとたのもしくめでたきいとたのもしくめでたきいとたのもしくめでたき事こと事ことことなりなりなり。。。
  10. 10むかしむかしむかし一條いちでう一條いちでういちじょうののの院ゐん院ゐんいんののの御おん御おんおんなやみのおりおほせられけるなやみのおりおほせられけるなやみのおりおおせられけるははは。。。すべからくすべからくすべからくははは次第ついで次第ついでついでのまゝにのまゝにのままにのみこのみこのみこをををなむなむなん春宮とうぐう春宮とうぐうとうぐうとすべけれどとすべけれどとすべけれど。。。うしろみすべきうしろみすべきうしろみすべき人ひと人ひとひとなきによりなきによりなきにより思おも思おもおもひかけずひかけずいかけず。。。
  11. 11さればさればされば二に二ににののの宮みや宮みやみやをばをばをばたてたてまつるなりとおほせられけるもたてたてまつるなりとおほせられけるもたてたてまつるなりとおおせられけるも此この此このこのたうだいのたうだいのとうだいの御おん御おんおんことよことよことよ。。。げにさるげにさるげにさる事こと事ことことぞかしぞかしぞかし。。。
  12. 12帝王ていわう帝王ていわうていおうののの御おん御おんおん次第しだい次第しだいしだいははは申まう申まうもうさずともありぬべけれどさずともありぬべけれどさずともありぬべけれど。。。入道殿下にふだうでんか入道殿下にふだうでんかにゅうどうでんかののの御おん御おんおん榮花えいぐわ榮花えいぐわえいがもなにゝよりもなにゝよりもなにによりひらけひらけひらけ給たま給たまたまぞとぞとぞと思おも思おもおもへばへばえば。。。まづまづまず御門みかど御門みかどみかど后きさき后きさききさきののの御おん御おんおんありさまありさまありさまををを申まう申まうもうなりなりなり。。。
  13. 13木き木ききはははねねねをををおほしてつくろひおほしたてつればこそおほしてつくろひおほしたてつればこそおおしてつくろいおおしたてつればこそ。。。えだもしげりてこのみえだもしげりてこのみえだもしげりてこのみをもをもをもむすべやむすべやむすべや。。。しかあればまづしかあればまづしかあればまず帝王ていわう帝王ていわうていおうののの御おん御おんおんつゞきつゞきつづきをををおぼえておぼえておぼえて。。。つぎにつぎにつぎに大臣だいじん大臣だいじんだいじんののの御おん御おんおんつゞきつゞきつづきはははあかさんとなりといへばあかさんとなりといへばあかさんとなりといえば。。。
  14. 14おおおほいぬほいぬほいぬ丸まる丸まるまるおとこおとこおとこ。。。いで〳〵いで〳〵いでいでいといみじうめでたしやいといみじうめでたしやいといみじゅうめでたしや。。。こゝらのすべらぎのこゝらのすべらぎのここらのすべらぎの御おん御おんおんありさまありさまありさまををををををかけかけかけ給たま給たまたまへるにへるにえるに。。。ましてましてまして大臣だいじん大臣だいじんだいじんなどのなどのなどの御おん御おんおん事こと事ことことはははとしごろやみにむかひたるにとしごろやみにむかひたるにとしごろやみにむかいたるに。。。
  15. 15あさあさあさ日ひ日ひひのののうら〳〵うら〳〵うらうらとさしとさしとさし出で出ででたるにあへらむこゝちもするかなたるにあへらむこゝちもするかなたるにあえらむここちもするかな。。。又また又またまたおきならがおきならがおきならが家いへ家いへいえののの女をんな女をんなおんなどものもとなるどものもとなるどものもとなる。。。。。。
  16. 16とぐとぐとぐわざもしらずわざもしらずわざもしらずうちうちうちはははさめてさめてさめてをををきたるにならひてきたるにならひてきたるにならいて。。。あかくみがけるかゞみにむかひてあかくみがけるかゞみにむかひてあかくみがけるかがみにむかいて。。。わがわがわが身み身みみのかたちのかたちのかたちををを見み見みみるにるにるに。。。かつかつかつはははかげかげかげはづかしくはづかしくはずかしく。。。
  17. 17又また又またまたいとめづらしきにもむかへりやいとめづらしきにもむかへりやいとめずらしきにもむかえりや。。。あなけうありのわざやなあなけうありのわざやなあなきょうありのわざやな。。。おきないまおきないまおきないま十廿年さんじふねん十廿年さんじふねんさんじゅうねんのいのちのいのちのいのちはははけふけふきょうのびぬるのびぬるのびぬる心地ここち心地ここちここちししし侍はべ侍はべはべををを。。。
  18. 18みきくみきくみきく人〳〵ひとびと人〳〵ひとびとひとびとおこがましうおかしけれどもおこがましうおかしけれどもおこがましゅうおかしけれども。。。いひつゞくるいひつゞくるいいつづくる事こと事ことことどもどもどもはははおろかならずおそろしければおろかならずおそろしければおろかならずおそろしければ。。。物もの物ものものもいもいもいはははでみなきゝゐたりでみなきゝゐたりでみなききいたり。。。おおおほいぬまるおとこいできゝほいぬまるおとこいできゝほいぬまるおとこいできき給たま給たまたまややや。。。
  19. 19うたうたうたひとつくりてひとつくりてひとつくりて侍はべ侍はべはべりといふめればりといふめればりというめれば。。。よつぎいとかむあることなりとてよつぎいとかむあることなりとてよつぎいとかむあることなりとて。。。うけうけうけ給たま給たまたまはははらんといふらんといふらんという。。。しげきいとやさしげにいひいづしげきいとやさしげにいひいづしげきいとやさしげにいいいず。。。
  20. 20あきらけきかゞみにあへばあきらけきかゞみにあへばあきらけきかがみにあえば過す過すすにしもいまゆくすゑのこともにしもいまゆくすゑのこともにしもいまゆくすえのことも見み見みみえけりえけりえけり
  21. 21といふめればといふめればというめれば。。。よつぎいたくかむじてあまたゝびよつぎいたくかむじてあまたゝびよつぎいたくかむじてあまたたび誦ず誦ずずじてじてじてうめきてうめきてうめきて返かへ返かへかえししし。。。
  22. 22すべらぎのあともすべらぎのあともすべらぎのあともつぎ〳〵つぎ〳〵つぎつぎかくれなくあらたにかくれなくあらたにかくれなくあらたに見み見みみゆるゆるゆるふるかゞみふるかゞみふるかがみかもかもかも
  23. 23今いま今いまいまはははながたのかゞみながたのかゞみながたのかがみ。。。まきゑらでんのまきゑらでんのまきえらでんのはははこにいれたるにむかひたるこにいれたるにむかひたるこにいれたるにむかいたる心こころ心こころこころちしちしちし給たま給たまたまややや。。。いでやそれいでやそれいでやそれはははさきらめけどさきらめけどさきらめけど。。。くもりやすきところあるやくもりやすきところあるやくもりやすきところあるや。。。
  24. 24いかにいにしへのこだいのかゞみいかにいにしへのこだいのかゞみいかにいにしえのこだいのかがみははは。。。かねしろくてかねしろくてかねしろくて人ひと人ひとひと手て手ててふれねどかくぞあかきなどふれねどかくぞあかきなどふれねどかくぞあかきなど。。。したりがほにわらふかほつきしたりがほにわらふかほつきしたりがおにわらうかおつき。。。ゑにかゝまほしくみゆゑにかゝまほしくみゆえにかかまほしくみゆ。。。
  25. 25あやしながらさすがなるけつきてあやしながらさすがなるけつきてあやしながらさすがなるけつきて。。。おかしくまことにめづらかになんおかしくまことにめづらかになんおかしくまことにめずらかになん。。。
  26. 26よつぎよしなしよつぎよしなしよつぎよしなし事こと事ことことよりよりよりはははまめやかなるまめやかなるまめやかなる事こと事ことことををを申まう申まうもういでんいでんいでん。。。よく〳〵よく〳〵よくよくたたたれも〳〵れも〳〵れもれもきこしめせきこしめせきこしめせ。。。けふけふきょうのかうじののかうじののこうじの說法せつぽふ說法せつぽふせっぽうははは。。。ぼだいのためとおぼしぼだいのためとおぼしぼだいのためとおぼし。。。
  27. 27又また又またまたおきならがとくとおきならがとくとおきならがとくとははは。。。をををきくとおぼすきくとおぼすきくとおぼす許ゆる許ゆるゆるぞかしといへばぞかしといへばぞかしといえば。。。僧そう僧そうそう俗ぞく俗ぞくぞくげにげにげに說經せつきやう說經せつきやうせっきょう說法せつぽふ說法せつぽふせっぽうおほくうけおほくうけおおくうけ給たま給たまたまはれどはれどわれど。。。かくめづらしきかくめづらしきかくめずらしき事こと事ことことののの給たま給たまたまふふう人ひと人ひとひとははは。。。
  28. 28さらにおはせぬなりとてさらにおはせぬなりとてさらにおわせぬなりとて。。。としとしとしをををいたるあまほうしどもいたるあまほうしどもいたるあまおうしども。。。ひたひにひたひにひたいに手て手ててをををあてゝしんあてゝしんあててしんをををなしつゝきゝゐたりなしつゝきゝゐたりなしつつききいたり。。。
  29. 29よつぎよつぎよつぎはははいとおそろしきいとおそろしきいとおそろしき翁おきな翁おきなおきなににに侍はべ侍はべはべりりり。。。眞實まさで眞實まさでまさでののの心こころ心こころこころおはせんおはせんおわせん人ひと人ひとひとははは。。。などかなどかなどかはづかしとおぼさゞらんはづかしとおぼさゞらんはずかしとおぼさざらん。。。世中よのなか世中よのなかよのなかををを見み見みみしりしりしりうかべたてゝもちてうかべたてゝもちてうかべたててもちて侍翁はべるおきな侍翁はべるおきなはべるおきななりなりなり。。。
  30. 30目め目めめにもみゝにもきゝあつめてにもみゝにもきゝあつめてにもみみにもききあつめて侍はべ侍はべはべるるる。。。よろづのよろづのよろずの事こと事ことことののの中なか中なかなかにたゞいまのにたゞいまのにただいまの入道殿下にふだうでんか入道殿下にふだうでんかにゅうどうでんかのありさまのありさまのありさま。。。いにしへいにしへいにしえをををきゝきゝきき今いま今いまいまををを見侍みはべ見侍みはべみわべにもにもにも。。。二ふた二ふたふたつもなくつもなくつもなく又また又またまた三み三みみつもなくつもなくつもなく。。。
  31. 31ならびなくならびなくならびなくはははかりなくおはしますかりなくおはしますかりなくおわします。。。たとへばたとへばたとえばのごとしのごとしのごとし。。。御おん御おんおんありさまのありさまのありさまの返〳〵かへすがへす返〳〵かへすがへすかえすがえすめでたきなりめでたきなりめでたきなり。。。世間せけん世間せけんせけんののの太政大臣だいじやうだいじん太政大臣だいじやうだいじんだいじょうだいじん攝政關白せつしやうくわんぱく攝政關白せつしやうくわんぱくせっしょうかんぱくととと申まう申まうもうせどせどせど。。。
  32. 32はじめはじめはじめをををはりとめでたきはりとめでたきはりとめでたき事こと事ことことはははえおはしまさぬえおはしまさぬえおわしまさぬ事こと事ことこと也なり也なりなり。。。法文ほふもん法文ほふもんほうもん聖敎しやうげう聖敎しやうげうしょうぎょうのなかにもののなかにもののなかにもの給たま給たまたまなるなるなるははは。。。うううをををのこおのこおのこおほかれどほかれどほかれど。。。まとのまとのまとのうううをををとなるとなるとなる事こと事ことことはははかたしかたしかたし。。。
  33. 33といふうへといふうへといううえ木き木ききあれどあれどあれど。。。このみこのみこのみをををむすぶむすぶむすぶ事こと事ことことかたしとこそかたしとこそかたしとこそはははときときとき給たま給たまたまへれへれえれ。。。天下てんか天下てんかてんか大臣だいじん大臣だいじんだいじん公卿くぎやう公卿くぎやうくぎょうののの御おん御おんおん中なか中なかなかににに。。。このたからのこのたからのこのたからの君きみ君きみきみのみこぞよにめづらかにおはすめれのみこぞよにめづらかにおはすめれのみこぞよにめずらかにおわすめれ。。。
  34. 34いまゆくすゑもたれのいまゆくすゑもたれのいまゆくすえもたれの人ひと人ひとひとかかばかりかかばかりかかばかりはははおはせんおはせんおわせん。。。いとありがたきいとありがたきいとありがたき御おん御おんおん事こと事ことこと也なり也なりなりややや。。。誰たれ誰たれたれもこゝろもこゝろもこころをををひとつにてきこしめせひとつにてきこしめせひとつにてきこしめせ。。。よにあるよにあるよにある事こと事ことことはははなになになに事こと事ことことをををかかかははは。。。
  35. 35みのがしきゝのこしてみのがしきゝのこしてみのがしききのこして侍はべ侍はべはべらんらんらん。。。このよつぎがこのよつぎがこのよつぎが申事まうすこと申事まうすこともうすことどもどもどもはしもしりはしもしりはしもしり給たま給たまたまはぬはぬわぬ人〳〵ひとびと人〳〵ひとびとひとびとおほくおはすらんとなむおほくおはすらんとなむおおくおわすらんとなむ思おも思おもおもひひい侍はべ侍はべはべるといふめればるといふめればるというめれば。。。すすすべて〳〵べて〳〵べてべて申まう申まうもうべきならずとてきゝあへりべきならずとてきゝあへりべきならずとてききあえり。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

六十八代 後一条院

次の帝は当代(今上)である。御諱は敦成。これは一条院の第二皇子である。御母は今の入道殿下(道長)の第一の御娘である。皇太后宮彰子と申し上げる。今、誰がはっきりしないとお思いになる人がおりましょうか(みな知っていることですが)。けれども、まず帝のことを申し上げる順序に違えないように(申しましょう)。寛弘五年戊申九月十一日、土御門殿でお生まれになる。同八年辛亥六月十三日、東宮にお立ちになった。御年四歳。長和五年丙辰五月二十九日、位にお即きになった。御年九歳。寛仁二年戊午正月三日にご元服。御年十一。位にお即きになって十年におなりになるでしょうか。今年は万寿二年乙丑と申すようです。同じ帝と申し上げても、(この帝は)ご後見が多く頼もしくいらっしゃいます。御祖父である今の入道殿下は出家なさっているけれど、世の親として、一切衆生を一人子のように慈しむ徳で育んでいらっしゃいます。第一の御叔父である今の関白左大臣(頼通)は、天下の政治をとっていらっしゃいます。次の御叔父と申し上げるのは内大臣(教通)で、左大将を兼ねていらっしゃいます。次の御叔父と申し上げる方々は、大納言で、あるいは東宮大夫(頼宗)、中宮権大夫(能信)、中納言(長家)などと、さまざまでいらっしゃいます。このようでいらっしゃるので、ご後見が多くいらっしゃるのです。昔も今も帝が賢いと申しても、臣下が大勢で傾け申し上げるときには、傾いてしまわれるものです。ですから、ただ天下はご自分のご後見の方々ばかりでいらっしゃるので、たいへん頼もしくめでたいことです。

昔、一条院がご病気のときにおっしゃったことには、「本来なら順序どおりに第一皇子(敦康親王)を東宮とすべきだが、後見すべき人がいないので、思いがけないことに、第二皇子をお立て申し上げるのだ」とおっしゃったのも、この当代のことですよ。まことにもっともなことです。

帝のご次第は申し上げなくてもよいでしょうが、入道殿下のご栄華も何によって開けなさったのかと思うと、まず帝・后のご様子を申し上げるのです。植木は根を育て手入れして育て上げればこそ、枝も茂って実も結ぶのですよ。そういうわけで、まず帝のご系譜を思い起こして、次に大臣のご系譜を明らかにしようというのです」と言うと、

大犬丸の男(繁樹)が、「いやいや、まったくすばらしいことですなあ。多くの帝のご様子でさえ鏡をかけて照らし出しなさったのに、まして大臣などのお身の上は、長年闇に向かっていたところに、朝日がうららかに差し出たのに出会ったような気持ちもすることよ。また、翁の家の女どものところにある、櫛箱の鏡は、映る影も見えにくく、磨くことも知らずに(箱に)しまい込んでおいたのに慣れて、明るく磨いた鏡に向かって、わが身の姿を見ると、恥ずかしくもあり、またたいへん珍しいものにも向かっていることよ。ああ、なんとおもしろいことでしょう。翁の寿命は、今日、十年二十年延びた気がします」と、ひどく得意になっているのを、見聞きする人々はばかばかしくおかしいけれど、語り続けることどもはなみなみでなく恐れ入ることなので、ものも言わずに、みな聞き入っていた。大犬丸の男が、「さあ、お聞きになりますか。歌を一首作りました」と言うようなので、世継が「たいへん感心なことだ」と言って、「承りましょう」と言う。繁樹はたいそう優雅な様子で詠み出す。

あきらけき鏡にあへば過ぎにしも今行く末のことも見えけり

と言うようなので、世継はひどく感心して、何度も口ずさんで、うなって返歌(を詠む)。

すべらぎのあともつぎつぎかくれなくあらたに見ゆる古鏡かも

「今風の葵形や八花形の鏡で、蒔絵や螺鈿の箱に入れたものに向かったような気持ちがなさいますか。いや、そういうのはきらきら輝いているけれど、曇りやすいところがあるよ。どうです、昔の古代の鏡は、金属が白くて、人の手が触れなくても、このように明るい」などと、得意顔で笑う顔つきは、絵に描きたいほどに見える。身分は卑しいながらも、さすがに堂々とした様子で、おもしろく、まことにめずらしい。

世継が、「つまらないことよりは、まじめなことを申し出しましょう。よくよく、どなたもお聞きください。今日の講師の説法は菩提(極楽往生)のためとお思いになり、また翁たちの話は、日本紀を聞くのだとお思いになるだけでよいのですよ」と言うと、僧も俗人も「なるほど、説経・説法はたくさん承ったけれど、このように珍しいことをおっしゃる人は、まったくいらっしゃらなかった」と言って、年老いた尼や法師たちが、額に手を当てて信心をこめながら聞き入っていた。

「世継はたいへん恐ろしい翁でございます。真実の心をお持ちの方なら、どうして気恥ずかしいとお思いにならないことがありましょう。世の中を見知り、心に浮かべ持っております翁なのです。目にも耳にも見聞きして集めております多くの事の中で、今の入道殿下のご様子は、昔のことを聞き今を見ますにも、二つもなく、また三つもなく、並ぶものもなく、はかりしれずいらっしゃいます。たとえば一乗の法(法華経)のようなものです。ご様子がかえすがえすもすばらしいのです。世間の太政大臣・摂政・関白と申し上げても、初めから終わりまでめでたいことは、とてもいらっしゃらないものです。仏の教えの中でおっしゃっていることには、「魚の子は多いけれど、本当の魚になることは難しい。菴羅という木があるが、実を結ぶことは難しい」とお説きになっています。天下の大臣・公卿の中で、この宝の君(道長)だけが、世にめったにないほどでいらっしゃるようです。今も将来も、誰がこれほどでいらっしゃるでしょうか。まことにありがたいことですよ。どなたも心を一つにしてお聞きください。世にあることで、何を見逃し聞き残しておりましょうか。この世継が申すことどもには、ご存じない方々も多くいらっしゃるだろうと思うのです」と言うようなので、(人々は)「何もかも、言いようもない」と言って聞き合った。

意訳

帝紀の最後に、当代の後一条天皇が語られる。九歳で即位した幼帝を、祖父の道長と、頼通・教通・頼宗・能信・長家の五人の叔父が支えている。世継は「臣下が大勢で傾け申し上げれば、帝も傾いてしまうものだ。しかしこの帝は、後見がみな身内だから安泰だ」と言う。前の三条天皇の不遇を思えば、この言葉は道長の権勢をたたえつつ、皮肉な響きも帯びている。

一条天皇が、第一皇子の敦康親王(母は定子)ではなく第二皇子の敦成親王(後一条天皇)を東宮に立てた理由を「後見がいないから」と語ったという話も、定子の兄伊周が失脚し、道長がすべてを握っていた現実を映し出す。

このあと、繁樹が「あきらけき鏡にあへば」、世継が「あらたに見ゆる古鏡かも」と詠みかわす。歴史を明らかに映し出す鏡としての語り、という比喩がここで示され、『大鏡』という書名もここから来ている。今風のきらびやかな鏡よりも、古い鏡のほうが曇らないという世継の自慢は、老人の昔語りの価値を説くものでもある。そして世継は、いよいよ道長の比類のない栄華を、法華経の一乗の法にたとえて、大臣列伝へと話を進めていく。

語釈・文法注

後一條院
第六十八代の天皇(1008〜1036)。在位1016〜1036。物語の「今」の帝で、生存中だが、底本は帝紀の題に「後一條院」と記す。
彰子
藤原彰子(988〜1074)。道長の長女で、一条天皇の中宮。後一条・後朱雀天皇の母。のち上東門院。紫式部が仕えた。
土御門殿
道長の邸。京極殿とも。
萬壽二年
1025年。この物語の「今」。
關白左大臣
藤原頼通(992〜1074)。道長の長男。後一条・後朱雀・後冷泉天皇の摂政・関白。
内大臣
藤原教通(996〜1075)。道長の五男。のち関白。
御うしろみ
後見。帝を補佐し守る人。
一のみこ
敦康親王(999〜1018)。一条天皇の第一皇子で、母は定子。定子の死後、後ろ盾を失った。
うへ木はねをおほして
植木は根を育てて。帝・后という根が育ったからこそ、道長の栄華という枝葉が茂り実を結んだというたとえ。
かゞみ
鏡。歴史を映し出すものとしての鏡。この問答から『大鏡』の書名が生まれた。
くしげ
櫛笥。櫛などの化粧道具を入れる箱。
ゆけする
得意になる、いばる。
あふひやつはながたのかゞみ
葵形や八花形の鏡。縁を葵の葉や八弁の花の形にした、当時流行の鏡。
日本紀
『日本書紀』。また広く、六国史などの正式の歴史書。
一乘法
一乗の法。すべての人が仏になれると説く唯一の教え。法華経の教えを指す。
菴羅
菴羅樹。マンゴーの木。花は多いが実を結ぶことは少ないとされた。

文法

おぼつかなくおぼし思人の侍らん
「かは〜ん」で反語。誰がはっきりしないと思う人がいようか、いや、いない。
ならせ給らむ
「らむ」は現在推量。おなりになっているのだろう。
かたぶき給もの也
傾いてしまわれるものだ。帝の位が危うくなること。
ありぬべけれど
「ぬべけれ」は強意+当然。きっとよいはずだが。
あへらむこゝち
「あへ」は「会ふ」の已然形(命令形)、「ら」は完了「り」の未然形、「む」は婉曲。出会ったような気持ち。
えおはしまさぬ事也
「え〜ぬ」は不可能。いらっしゃることができないものだ。
なに事をかは
「かは」は反語。何を見逃し聞き残しているだろうか、いや何もない。

和歌・漢詩

あきらけきかゞみにあへば過にしもいまゆくすゑのことも見えけり

作者
夏山繁樹
状況
世継の語りを聞いて、繁樹が詠んだ歌。明るく曇りのない鏡(世継の語り)に出会ったので、過ぎた昔のことも、今のことも、これから先のことまでも見えることだ。

修辞

見立て
世継の歴史語りを、すべてを映し出す鏡に見立てる。この歌が『大鏡』の書名の由来となった。

すべらぎのあともつぎ〳〵かくれなくあらたに見ゆるふるかゞみかも

作者
大宅世継
状況
繁樹の歌への返歌。帝の御代の跡も次々に隠れることなく、あらたかに映し出す古い鏡(である私の語り)だなあ。

修辞

掛詞
「つぎつぎ」に自分の名「世継」をかける。
掛詞
「あらた」に「新た」と「灼た(あらたか、はっきりしている)」をかける。

解説

後一条天皇(敦成親王)は、寛弘五年(1008)に生まれた。その誕生と、五十日の祝いのにぎわいは、母彰子に仕えた紫式部の『紫式部日記』に詳しく描かれている。

「鏡」の問答は、『大鏡』という書名の由来とされる。本来、この作品は『世継物語』『世継の翁の物語』などとも呼ばれたが、のちに「大鏡」の名が定まった。以後、『今鏡』『水鏡』『増鏡』と続く歴史物語は「鏡物」と呼ばれる。

世継は、自分の語りを「日本紀を聞く」と思えばよいと言う。正史である『日本書紀』以下の六国史は、光孝天皇の代までで終わっていた。それ以後の歴史を、仮名で、しかも裏話まで含めて語ろうとする作者の意識が、このことばにうかがえる。

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出典

底本
経済雑誌社編『国史大系』第17巻(大鏡) 経済雑誌社、明治34年(1901)、480〜484頁(コマ256–258)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日