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徒然草 第10章(第55段〜第58段)

家は夏をむねとし、道心は住む所によらず

家は夏を基準に造るべきだという住まいの心得、久しぶりに会った人や品のない人の話しぶり、知らない道の話をする人の見苦しさを語り、出家の心は住む所によらないという考えを退けて、世を捨てることの意味を説く。

蔀を上げて風を通す住まいと、庭を浅く流れる遣水
第55段「家の作りやうは夏をむねとすべし」の情景。蔀を上げた住まいに風が通り、庭の浅い遣水が涼しさを添えている。
  1. 1家いへ家いへいえのつくりやうのつくりやうのつくりょうははは夏なつ夏なつなつをををむねとすべしむねとすべしむねとすべし。。。冬ふゆ冬ふゆふゆはははいかなるいかなるいかなる所ところ所ところところにもすまるにもすまるにもすまる。。。あつきあつきあつき頃ごろ頃ごろごろわろきすまひわろきすまひわろきすまいははは堪た堪たたへがたきことなりへがたきことなりえがたきことなり。。。深ふか深ふかふかききき水みづ水みづみずはははすゞしげなしすゞしげなしすずしげなし。。。
  2. 2淺あさ淺あさあさくてくてくて流なが流ながながれたるれたるれたる遙はるか遙はるかはるかにすゞしにすゞしにすずし。。。こまかなるものこまかなるものこまかなるものををを見み見みみるにるにるに、、、りりり戶と戶ととはははののの間ま間ままよりもあかしよりもあかしよりもあかし。。。天てん天てんてん井ゐ井ゐいののの高たか高たかたかきききははは冬ふゆ冬ふゆふゆ寒さむ寒さむさむくともしびくらしくともしびくらしくともしびくらし。。。ははは用よう用ようようなきなきなき所ところ所ところところをををつくりたるつくりたるつくりたる、、、見み見みみるもおもしろくるもおもしろくるもおもしろく、、、よろづのよろづのよろずの用よう用ようようにもたちてよしとぞにもたちてよしとぞにもたちてよしとぞ、、、人ひと人ひとひとのさだめあひのさだめあひのさだめあい侍はべ侍はべはべりしりしりし。。。
  3. 3久ひさ久ひさひさしくへだゝりてしくへだゝりてしくえだたりて逢あ逢ああひたるひたるいたる人ひと人ひとひとののの、、、我わ我わわががが方かた方かたかたにありつることにありつることにありつること、、、かずかずにのこりなくかずかずにのこりなくかずかずにのこりなく語かた語かたかたりつゞくるこそあいなけれりつゞくるこそあいなけれりつづくるこそあいなけれ。。。へだてなくなれぬるへだてなくなれぬるへだてなくなれぬる人ひと人ひとひとももも、、、程ほど程ほどほどへてへてへて見み見みみるるるははははづかしからぬかはづかしからぬかはずかしからぬかははは。。。
  4. 4ざまのざまのざまの人ひと人ひとひとははは、、、あからさまにあからさまにあからさまに立た立たたちちち出い出いいでゝもでゝもでても、、、興きよう興きようきょうありつるありつるありつる事こと事ことこととてとてとて、、、息いき息いきいきもつきあへずもつきあへずもつきあえず語かた語かたかたりりり興きよう興きようきょうずるぞかしずるぞかしずるぞかし。。。よきよきよき人ひと人ひとひとののの物もの物ものものがたりするがたりするがたりするははは、、、人ひと人ひとひとあまたあれどあまたあれどあまたあれど、、、一人ひとり一人ひとりひとりににに向む向むむきていふきていふきていうををを、、、おのづからおのづからおのずから人ひと人ひとひともきくにこそあれもきくにこそあれもきくにこそあれ。。。
  5. 5よからぬよからぬよからぬ人ひと人ひとひとははは誰たれ誰たれたれともなくあまたのともなくあまたのともなくあまたの中なか中なかなかにににうちうちうち出い出いいでゝでゝでて、、、見み見みみるるる事こと事ことことのやうにのやうにのように語かた語かたかたりなせばりなせばりなせば、、、皆同みなおな皆同みなおなみなおなじくじくじく笑わら笑わらわらひのゝしるひのゝしるいののしる、、、いとらうがはしいとらうがはしいとろうがわし。。。をかしきをかしきおかしき事こと事ことことをををいひてもいひてもいいても、、、いたくいたくいたく興きよう興きようきょうぜぬとぜぬとぜぬと、、、興きよう興きようきょうなきことなきことなきことをををいひてもいひてもいいても、、、よくよくよく笑わら笑わらわらふにぞふにぞうにぞ、、、品しな品しなしなのののほどほどほどはははかられぬべきかられぬべきかられぬべき。。。
  6. 6人ひと人ひとひとののの見み見みみざまのよしあしざまのよしあしざまのよしあし、、、人ひと人ひとひとはははそのごとなどそのごとなどそのごとなど定さだ定さださだめあへるにめあへるにめあえるに、、、おのがおのがおのが身み身みみにににひきかけていひひきかけていひひきかけていい出い出いいでたるいとわびしでたるいとわびしでたるいとわびし。。。
  7. 7人ひと人ひとひとのかたりのかたりのかたり出い出いいでたるでたるでたるののの、、、歌うた歌うたうたのわろきこそのわろきこそのわろきこそほいなけれほいなけれほいなけれ。。。すこしそのすこしそのすこしその道知みちし道知みちしみちしらむらむらむ人ひと人ひとひとははは、、、いみじといみじといみじと思おも思おもおもひてひていてはははかたらじかたらじかたらじ。。。すべていともすべていともすべていとも知し知ししらぬらぬらぬ道みち道みちみちののの物もの物ものものがたりしたるがたりしたるがたりしたる、、、かたはらいたくかたはらいたくかたわらいたく聞き聞きききにくしきにくしきにくし。。。
  8. 8あらばあらばあらば住す住すすむむむ所ところ所ところところにしもよらじにしもよらじにしもよらじ。。。家いへ家いへいえにありにありにあり人ひと人ひとひとにまじはるともにまじはるともにまじわるとも、、、をををねがはむにかたかるべきかねがはむにかたかるべきかねがわむにかたかるべきかはははといふといふというははは、、、更さら更さらさらににに後世ごせ後世ごせごせ知し知ししらぬらぬらぬ人ひと人ひとひとなりなりなり。。。
  9. 9げにげにげにはははこのこのこの世よ世よよをををはははかなみかなみかなみ、、、かならずかならずかならずををを出い出いいでむとでむとでむと思おも思おもおもはむにはむにわむに、、、何なに何なになにののの興きよう興きようきょうありてかありてかありてか朝夕君あさゆふきみ朝夕君あさゆふきみあさゆうきみにつかへにつかへにつかえ、、、家いへ家いへいえをををかへりみるいとなみのいさましからむかへりみるいとなみのいさましからむかえりみるいとなみのいさましからむ。。。
  10. 10心こころ心こころこころはははにににひかれてひかれてひかれて移うつ移うつうつるものなればるものなればるものなれば、、、靜しづか靜しづかしずかならでならでならでははは道みち道みちみちははは行ゆ行ゆゆじがたしじがたしじがたし。。。そのそのそのうつうつうつはもはもはものむかしののむかしののむかしの人ひと人ひとひとににに及およ及およおよばずばずばず、、、山林さんりん山林さんりんさんりんににに入い入いいりてもりてもりても飢うゑ飢うゑうえをををたすけたすけたすけ、、、嵐あらし嵐あらしあらしををを防ふせ防ふせふせぐよすがなくてぐよすがなくてぐよすがなくてははは、、、あられぬわざなればあられぬわざなればあられぬわざなれば、、、おのづからおのづからおのずから世よ世よよをををむさぼるにむさぼるにむさぼるに似に似ににたることもたることもたることも、、、たよりにたよりにたよりにふればなどかなからむふればなどかなからむふればなどかなからむ。。。
  11. 11さればとてさればとてさればとて、、、そむけるかひなしそむけるかひなしそむけるかいなし。。。さばかりならばさばかりならばさばかりならば、、、なじかなじかなじかははは捨す捨すすてしなどいはむてしなどいはむてしなどいわむははは、、、むげのことなりむげのことなりむげのことなり。。。さすがにさすがにさすがに一ひと一ひとひとたびたびたび道みち道みちみちににに入い入いいりてりてりて、、、世よ世よよをををいとはむいとはむいとわむ人ひと人ひとひとたとひたとひたとい望のぞみ望のぞみのぞみありともありともありとも、、、いきほひあるいきほひあるいきおいある人ひと人ひとひとののの貪欲多とんよくおほ貪欲多とんよくおほとんよくおおきにきにきに似に似ににるべからずるべからずるべからず。。。
  12. 12紙かみ紙かみかみのののふすまふすまふすま、、、麻あさ麻あさあさののの衣ころも衣ころもころも、、、一鉢いつはつ一鉢いつはついっぱつのまうけのまうけのもうけ、、、のあつもののあつもののあつもの、、、いくばくかいくばくかいくばくか人ひと人ひとひとのつひえのつひえのついえをををなさむなさむなさむ。。。もとむるもとむるもとむる所ところ所ところところはやはやはやすくすくすく、、、そのそのその心こころ心こころこころはやはやはやくくく足た足たたりぬべしりぬべしりぬべし。。。
  13. 13かたちにかたちにかたちにはははづるづるずる所ところ所ところところもあればもあればもあれば、、、さささはははいへどいへどいえど惡あく惡あくあくにににはははうとくうとくうとく、、、善ぜん善ぜんぜんにににははは近ちか近ちかちかづくことのみぞづくことのみぞずくことのみぞ多おほ多おほおおききき。。。人ひと人ひとひとととと生うま生うまうまれたらむしるしにれたらむしるしにれたらむしるしにははは、、、いかにもしていかにもしていかにもして世よ世よよをををのがれむのがれむのがれむ事こと事ことことこそあらまほしけれこそあらまほしけれこそあらまほしけれ。。。
  14. 14ひとへにむさぼることひとへにむさぼることひとえにむさぼることをををつとめてつとめてつとめて、、、におもむかざらむにおもむかざらむにおもむかざらむははは、、、よろづのよろづのよろずの畜類ちくるゐ畜類ちくるゐちくるいにかはるにかはるにかわる所ところ所ところところあるまじくやあるまじくやあるまじくや。。。

引用の仕方

レポート・論文で引用する場合の表記例です。行番号を選んでから開くと、その行へのリンクになります。

現代語訳

〔第55段〕家の造り方は、夏を基準にするのがよい。冬はどんな所にでも住める。暑いころに住みにくい住まいは、たえがたいものである。深い水は涼しそうに見えない。浅くて流れているのが、はるかに涼しい。細かい物を見るには、遣戸の部屋は蔀の部屋よりも明るい。天井の高いのは、冬寒く、灯火が暗い。造作は、用のない所を造っておくのが、見ても趣があり、いろいろな用にも役立ってよいと、人々が話し合っておりました。

〔第56段〕久しく会わなかった人に会ったとき、自分の方にあったことを、あれこれと残らず話し続けるのは、おもしろくない。隔てなく慣れ親しんだ人でも、しばらくたって会うときは、気がひけないことがあろうか。品のない人は、ちょっと外出しても、おもしろかったことだといって、息もつかずに話し興じるものだ。身分も教養もある人が話をするときは、人が大勢いても、一人に向かって話すのを、自然とほかの人も聞くのである。よくない人は、だれに向かってというのでもなく、大勢の中に出て、見てきたことのように話すので、みな同じように笑い騒ぐのは、たいそう騒がしい。おもしろいことを言っても大して興じないのと、つまらないことを言ってもよく笑うのとで、人柄の程度は推し量られるにちがいない。人の容姿のよしあしや、学問のある人についてはその学識などを品定めし合っているときに、自分の身に引き寄せて言い出すのは、まことに見苦しい。

〔第57段〕人が語り出した歌物語で、その歌のできが悪いのは残念なことだ。少しでもその道を知っている人なら、すばらしいと思って語りはしないだろう。すべて、よく知らない道の話をしているのは、はたで聞いていて気の毒で、聞きにくい。

〔第58段〕「仏道を求める心があれば、住む所にはよるまい。家にいて人と交わっていても、後世を願うのにむずかしいことがあろうか」と言うのは、まったく後世のことを知らない人である。ほんとうにこの世をはかないものと思い、必ず生死の迷いから抜け出ようと思うのに、何のおもしろさがあって、朝夕主君に仕え、家のことを気にかける営みに励めようか。心は周囲のものに引かれて移るものだから、静かな所でなくては、仏道は修行しにくい。(今の人は)その器量が昔の人に及ばず、山林に入っても、飢えをしのぎ嵐を防ぐ手だてがなくては生きていけないのだから、おのずから世をむさぼるように見えることも、場合によってはどうしてないことがあろうか。だからといって、「世を背いたかいがない。その程度なら、なぜ捨てたのか」などと言うのは、まったくひどいことだ。やはり、ひとたび仏道に入って世を厭う人は、たとえ望みがあったとしても、権勢のある人の欲深さには似るはずがない。紙の夜具、麻の衣、一鉢の食事、あかざの吸い物が、どれほど人の費えとなろうか。求める所はたやすく、その心はすぐに満ち足りるだろう。出家の姿に恥じる所もあるので、そうは言っても、悪には遠ざかり、善には近づくことばかりが多い。人と生まれたしるしには、何としてでも世を逃れることこそ望ましい。ひたすらむさぼることに励んで、悟りに向かわないのは、あらゆる畜生と変わるところがないのではないか。

意訳

〔第55段〕家は夏の暑さをしのげるように造るのがよい。浅い流れの水が涼しく、遣戸の部屋は明るく、天井の高い部屋は冬寒い。用のない空間を残しておくと、かえって役に立つ。具体的で実用的な住まいの知恵である。

〔第56段〕〔第57段〕久しぶりに会って自分のことばかり話す人、大勢の前で身ぶりたっぷりに話す人、何にでも大笑いする人、人の品定めを自分に引き寄せる人――話し方にこそ品格が表れる。知らない分野の話を得意げにするのも聞き苦しい。

〔第58段〕「信心があれば家にいても修行できる」という考えを、兼好は退ける。心は環境に左右されるから、静かな所に身を置かなければならない。出家者が生活のために多少世俗的に見えても、権勢家の欲深さとは比べものにならない。人と生まれたからには世を逃れるべきだ――遁世者としての兼好の信念が、強い調子で語られている。

語釈・文法注

遣り戶
引き戸。
蔀
格子の裏に板を張った戸。上下二枚で、上を吊り上げて開ける。
造作
家の建築や内部の作り。
次ざまの人
身分や教養の劣った人。
ざえ
学問、特に漢学の素養。
歌物語
和歌にまつわる話。
道心
仏道を求める心。
後世
死後の世。来世の安楽。
生死
生まれ変わり死に変わりする迷いの世界。
緣
心を動かす外の条件や環境。
藜
あかざ。若葉を食用にする草。粗末な食べ物の代表。
菩提
悟りの境地。

文法

すまる
「住まる」で、「る」は可能の助動詞。住むことができる。
はづかしからぬかは
「かは」は反語。気恥ずかしくないことがあろうか。
かたかるべきかは
「かは」は反語。むずかしいことがあろうか、いやない。
いさましからむ
「何の興ありてか…いさましからむ」で、どうして励む気になれようか、という反語。
なじかは捨てし
「なじかは」は「なにしかは」のつづまった形で、どうして。どうして捨てたのか。
かはる所あるまじくや
「や」は疑問。変わるところはないのではないか。

解説

第55段の「家のつくりやうは夏をむねとすべし」は、京都の蒸し暑い夏を知る人の実感のこもった言葉として、今もよく引かれる。後半の「用なき所をつくりたる」がよいという考えは、第82段の「不具なるこそよけれ」とも通じる、兼好らしい美意識である。

第56段は、人の話し方から品格を見分けるという段で、「よき人」と「よからぬ人」を対比させる兼好の得意な書き方がよく表れている。

第58段は、在家のままでも信仰は保てるという考えに反論し、出家遁世の必要を説く。兼好自身が出家した身であり、その生き方を弁護する言葉としても読める。一方で、出家者が生活のために世俗と関わることを認め、それを非難する人を「むげのことなり」と退けるところに、理想と現実の両方を見すえる兼好の姿勢がある。

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出典

底本
丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(徒然草) 板倉屋書房、明治36年(1903)、784〜786頁(コマ406–407)。国立国会図書館デジタルコレクション
校訂・訳・注
古典ライブラリー編集部
更新日