徒然草 第21章(第123段〜第128段)
人間の大事と雅房大納言
人間の大事は衣食住と薬の四つにすぎないと説く段、念仏に生きた是法法師、導師を「唐の犬に似ている」とほめた人と、酒を勧めるのは両刃の剣で斬るようなものだという言葉、博打の勝ち時、改めて益のないことは改めるな、そして犬の足を切ったといううそで昇進を絶たれた雅房大納言の話から、生き物への慈悲を説く。

- 1事事ことをををなしてなしてなして時時ときをををうつすうつすうつすををを、、、おろかなるおろかなるおろかなる人人ひとともともとも、、、ひがことするひがことするひがことする人人ひとともいふべしともいふべしともいうべし。。。國國くにのためのためのため君君きみのためのためのため、、、止止やむことむことむことををを得得えずしてなすべきことおほしずしてなすべきことおほしずしてなすべきことおおし。。。
- 2そのあまりのそのあまりのそのあまりの暇暇いとまいくばくならずいくばくならずいくばくならず思思おもふべしふべしうべし。。。人人ひとののの身身みににに止止やむことむことむことををを得得えずしていとなむずしていとなむずしていとなむ所所ところ、、、第一第一だいいちににに食物食物しょくもつ、、、第二第二だいにににに着着きるるる物物もの、、、第三第三だいさんににに居居おるるる所所ところなりなりなり。。。
- 3人間人間にんげんののの大事大事だいじこのこのこの三三みつにすぎずつにすぎずつにすぎず。。。飢飢うえゑずゑずえず寒寒さむからずからずからず、、、風雨風雨ふううにににをををかされずしてかされずしてかされずして、、、しづかにしづかにしずかに過過すぐすすすををを樂樂らくとすとすとす。。。たゞしたゞしただし人人ひとみなみなみな病病やまいありありあり、、、病病やまいにににをををかされぬればそのかされぬればそのかされぬればその愁愁うれ忍忍しのびがたしびがたしびがたし。。。
- 4醫療醫療いりょうをををわするべからずわするべからずわするべからず。。。藥藥くすりををを加加くわへてへてえて、、、四四よつのつのつの事事こともとめもとめもとめ得得えざるざるざるををを貧貧まずしとすしとすしとす。。。このこのこの四四よつかけざるつかけざるつかけざるををを富富とめりとすめりとすめりとす。。。このこのこの四四よつのつのつの外外ほかをもをもをもとめとめとめ營營いとなむむむををを。。。四四よつのつのつの事儉約事儉約ことけんやくならばならばならば誰誰たれののの人人ひとかかか足足たらずとせむらずとせむらずとせむ。。。
- 5法師法師ほうしははは、、、淨土宗淨土宗じょうどしゅうにににはははぢずといへどもぢずといへどもじずといえども、、、をををたてずたてずたてず、、、たゞたゞただ明暮明暮あけくれ念佛念佛ねんぶつしてやすらかにしてやすらかにしてやすらかに世世よををを過過すぐすありさますありさますありさま、、、いとあらまほしいとあらまほしいとあらまほし。。。
- 6人人ひとにおくれてにおくれてにおくれてののの佛佛ほとけ事事ことににに、、、あるあるあるひじりひじりひじりををを請請しょうじじじ侍侍はべりしにりしにりしに、、、說法說法せっぽういみじくしていみじくしていみじくして、、、みなみなみな人淚人淚ひとなみだをををながしけりながしけりながしけり。。。かへりてかへりてかえりて後後のち、、、聽聞聽聞ちょうもんののの人人ひとどもどもども、、、「「「いつよりもいつよりもいつよりも殊殊ことににに今日今日きょうはははたふとたふととうとくおぼえくおぼえくおぼえ侍侍はべりつるりつるりつる」」」ととと感感かんじあへりしじあへりしじあえりし返事返事へんじににに、、、あるものゝいふあるものゝいふあるもののいう「「「何何なにともともとも候候そうらへへえ。。。あれあれあれほどほどほどののの狗狗いぬににに似候似候にそうらひなむうへひなむうへいなむうえははは」」」といひたりしにといひたりしにといいたりしに、、、あはれもさめてをかしかりけりあはれもさめてをかしかりけりあわれもさめておかしかりけり。。。
- 7さるさるさる導師導師どうしのののほめやうやほめやうやほめようやはははあるべきあるべきあるべき。。。「「「またまたまた人人ひとににに酒勸酒勸さけすすむるとてむるとてむるとて、、、おのれまづたべておのれまづたべておのれまずたべて人人ひとににに强强しひひひ奉奉たてまつらむとするらむとするらむとするははは、、、にてにてにて人人ひとををを斬斬きらむとするにらむとするにらむとするに似似にたることなりたることなりたることなり。。。二方二方ふたかたにににはははつきたるものなればつきたるものなればつきたるものなれば、、、もたぐるもたぐるもたぐる時時ときまづまづまず我我わががが頭頭かしらををを斬斬きるゆゑにるゆゑにるゆえに人人ひとをばをばをばえきらぬなりえきらぬなりえきらぬなり。。。おのれまづおのれまづおのれまず醉醉えひてひていて臥臥ふしなばしなばしなば、、、人人ひとはははよもめさじよもめさじよもめさじ」」」ととと申申もうしきしきしき。。。
- 8劔劔けんにてにてにて斬斬きりこゝろみたりけるにやりこゝろみたりけるにやりこころみたりけるにや、、、いとをかしかりきいとをかしかりきいとおかしかりき。。。
- 9「「「負負まけきききはははまりてまりてまりて、、、のこりなくうちのこりなくうちのこりなくうち入入いれむとせむにれむとせむにれむとせむに、、、あひてあひてあいてはははうつべからずうつべからずうつべからず。。。立立たちかへりつゞけてちかへりつゞけてちかえりつづけて勝勝かつべきつべきつべき時時ときのいたれるのいたれるのいたれるををを知知しるべしるべしるべし。。。そのそのその時時ときををを知知しるるるをををよきばくちといふなりよきばくちといふなりよきばくちというなり」」」ととと、、、あるものあるものあるもの申申もうしきしきしき。。。
- 10あらためてあらためてあらためて益益えきなきことなきことなきことははは、、、改改あらためぬめぬめぬをををよしとするなりよしとするなりよしとするなり。。。
- 11大納言大納言だいなごんははわ、、、才才さいかしこくよきかしこくよきかしこくよき人人ひとにてにてにて、、、大將大將だいしょうにもなさばやとおぼしけるにもなさばやとおぼしけるにもなさばやとおぼしける頃頃ごろ、、、院院いんののの近習近習きんじゅなるなるなる人人ひと「「「唯今唯今ただいまあさましきことあさましきことあさましきことををを見侍見侍みはべりつりつりつ」」」ととと申申もうされければされければされければ、、、「「「何事何事なにごとぞぞぞ」」」ととと問問とはせはせわせ給給たまひけるにひけるにいけるに、、、「「「雅房卿鷹雅房卿鷹まさふさのきょうたかにかはむとてにかはむとてにかわむとて、、、生生いきたるきたるきたる犬犬いぬののの足足あしをををきりきりきり侍侍はべりつるりつるりつるををを、、、ののの穴穴あなよりよりより見侍見侍みはべりつりつりつ」」」ととと申申もうされけるにされけるにされけるに、、、うとましくにくゝおぼしめしてうとましくにくゝおぼしめしてうとましくにくくおぼしめして、、、日日ひごろのごろのごろの御氣色御氣色みけしきもたがひもたがひもたがい、、、昇進昇進しょうしんもしもしもし給給たまはざりけりはざりけりわざりけり。。。
- 12さばかりのさばかりのさばかりの人人ひと、、、鷹鷹たかをもをもをもたれたりけるたれたりけるたれたりけるははは思思おもはずなれどはずなれどわずなれど、、、犬犬いぬののの足足あしはははあとなきことなりあとなきことなりあとなきことなり。。。そらごとそらごとそらごとははは不便不便ふびんなれどもなれどもなれども、、、かゝることかゝることかかることをををきかせきかせきかせ給給たまひてにくませひてにくませいてにくませ給給たまひけるひけるいける君君きみののの御心御心みこころはははいといといとたふとたふととうとききき事事ことなりなりなり。。。
- 13大大おおかたかたかた生生いけるものけるものけるものををを殺殺ころししし、、、痛痛いためめめ鬪鬪たたかはははしめてしめてしめて遊遊あそびびび樂樂らくまむまむまむ人人ひとははは、、、畜生殘害畜生殘害ちくしょうざんがいのたぐひなりのたぐひなりのたぐいなり。。。よろづのよろづのよろずの鳥獸小鳥獸小ちょうじゅうちいさききき蟲蟲むしまでもまでもまでも、、、心心こころをををとゞめてありさまとゞめてありさまとどめてありさまををを見見みるにるにるに、、、子子こをををおもひおもひおもい親親おやをををなつかしくしなつかしくしなつかしくし、、、夫婦夫婦ふううをををともなひともなひともない、、、妬妬ねたみいかりみいかりみいかり、、、欲欲よくおほくおほくおおく、、、身身みをををあいしあいしあいし、、、命命いのちををををををしめることしめることしめること、、、偏偏ひとえににに愚痴愚痴ぐちなるゆゑになるゆゑになるゆえに、、、人人ひとよりもまさりてよりもまさりてよりもまさりてはははなななはははだしだしだし。。。
- 14かれにくるしみかれにくるしみかれにくるしみををを與與あたへへえ、、、命命いのちををを奪奪うばはむことはむことわむこと、、、いかでかいたましからざらむいかでかいたましからざらむいかでかいたましからざらむ。。。すべてすべてすべて一切一切いっさいのののをををみてみてみて、、、慈悲慈悲じいののの心心こころなからむなからむなからむははは人倫人倫じんりんにあらずにあらずにあらず。。。
現代語訳
〔第123段〕無益なことをして時を過ごすのを、愚かな人とも、まちがったことをする人とも言うべきである。国のため、君のため、やむをえずしなければならないことは多い。その残りの暇はいくらもないと思うべきである。人の身にやむをえず営むものは、第一に食べる物、第二に着る物、第三に住む所である。人間の大事は、この三つに過ぎない。飢えず、寒くなく、風雨に冒されないで、静かに過ごすのを楽しみとする。ただし、人はみな病気がある。病気に冒されると、その苦しみは耐えがたい。医療を忘れてはならない。薬を加えて、この四つのものを手に入れられないのを貧しいとする。この四つが欠けないのを富んでいるとする。この四つのほかのものを求めて営むのを、ぜいたくとする。この四つのことが質素であれば、だれが足りないと思うだろうか。
〔第124段〕是法法師は、浄土宗の学僧として恥ずかしくないほどであったけれども、学者ぶることをせず、ただ明け暮れ念仏して、心安らかに世を過ごしている様子は、まことに望ましい。
〔第125段〕人に先立たれて、四十九日の仏事に、ある聖をお招きしましたところ、説法がすばらしくて、みな涙を流した。導師が帰った後、聴聞した人たちが、「いつもよりとりわけ今日は尊く思われました」と感心し合った返事に、ある者が言うには、「何はともあれ、あれほど唐の犬に似ているのですからね」と言ったので、感動もさめて、おかしかった。そんな導師のほめ方があるものだろうか。また(その者が)、「人に酒を勧めるといって、自分がまず飲んで人に無理強いしようとするのは、剣で人を斬ろうとするのに似たことだ。両側に刃がついているものなので、持ち上げるときに、まず自分の頭を斬るので、人を斬れないのである。自分がまず酔って寝てしまったら、人はまさか飲むまい」と申した。剣で斬ってみたのだろうか、たいそうおかしかった。
〔第126段〕「博打で負けがこんで、残りをすべて賭けようとする相手とは、打ってはならない。形勢が逆転して、続けて勝つはずの時が来ていることを知るべきである。その時を知るのを、よい博打打ちと言うのである」と、ある者が申した。
〔第127段〕改めても益のないことは、改めないのをよしとするのである。
〔第128段〕雅房大納言は、学才にすぐれ、人柄もよい人で、(院が)大将にもしてやりたいとお思いになっていたころ、院の近習である人が、「たった今、あきれたことを見ました」と申しあげたので、「何事か」とお尋ねになると、「雅房卿が、鷹の餌にしようとして、生きている犬の足を切っておりましたのを、中垣の穴から見ました」と申しあげたので、(院は)いとわしく憎らしくお思いになって、日ごろのご機嫌も変わり、昇進もおさせにならなかった。あれほどの人が鷹を持っていたのは意外だが、犬の足のことは根も葉もないことであった。うそは気の毒だったが、このようなことをお聞きになって憎まれた君のお心は、まことに尊いことである。
だいたい、生きているものを殺し、傷つけ、闘わせて遊び楽しむような人は、畜生が互いに殺し合う類いである。あらゆる鳥獣や小さな虫までも、心をとめてその様子を見ると、子を思い、親を慕い、夫婦が連れ添い、ねたみ怒り、欲が多く、わが身をいとおしみ、命を惜しむことは、ひとえに愚かであるがゆえに、人よりもまさってはなはだしい。それらに苦しみを与え、命を奪うことは、どうしていたましくないことがあろうか。すべて、あらゆる生き物を見て慈悲の心がないような者は、人の道にはずれている。
意訳
〔第123段〕人に必要なのは、食べ物・着る物・住まい、そして病気のための薬の四つだけ。これが足りていれば富んでいるのであり、それ以上を求めるのはおごりである。簡素な生活の要点を、明快に示した段である。
〔第124段〕〔第127段〕学識を誇らずに念仏に生きる是法法師の姿を理想とし、改めて益のないことは改めるなと説く。短いながら、兼好の生き方の指針がうかがえる。
〔第125段〕〔第126段〕すばらしい説法を「唐の犬に似ているからだ」とほめた人の、ずれたほめ言葉。酒の無理強いを両刃の剣にたとえた話。負けがこんだ相手とは打つなという博打打ちの言葉。人の言葉のおかしみや、意外な知恵を書きとめる。
〔第128段〕犬の足を切ったといううそを聞いて、才人の雅房の昇進を止めた院を、兼好は尊いと言う。うそは気の毒だが、生き物を苦しめる者を退けた心こそが尊いからだ。鳥獣も虫も、子を思い命を惜しむ心は人と同じ――あらゆる命への慈悲を説いて結ぶ。
語釈・文法注
- むやく
- 無益。役に立たないこと。
- おごり
- ぜいたく。
- 是法法師
- 鎌倉末期の浄土宗の僧。兼好と同時代の人。
- 學匠
- 学問にすぐれた僧。また、学者ぶること。
- 四十九日
- 人の死後四十九日目に行う法要。
- 導師
- 法会で中心となって経を読み、説法する僧。
- 唐の狗
- 唐犬。中国から渡来した大型の犬。
- 劔
- 両刃の剣。
- ばくち
- 博打。
- 雅房大納言
- 土御門雅房(1262〜1302)。
- 中垣
- 隣家との間の垣根。
- 有情
- 心を持つすべての生き物。
文法
- 誰の人か足らずとせむ
- 「か…む」は反語。だれが足りないと思うだろうか。
- 淨土宗にはぢずといへども
- 浄土宗(の学僧)として恥ずかしくないけれども。
- ほめやうやはあるべき
- 「やは」は反語。そんなほめ方があるだろうか、いやない。
- いかでかいたましからざらむ
- 「いかでか…む」は反語。どうしていたましくないことがあろうか。
解説
第123段は、人間に必要なものを衣食住と医療に限定し、それ以上を求めることを「おごり」とする。『徒然草』の簡素な生活の理想を、もっとも端的に示した段である。第18段の清貧の讃美とも通じる。
第125段は、ほめ言葉の滑稽さを描いた笑話である。「唐の狗に似候ひなむ」の真意ははっきりしないが、ありがたい説法をまったく見当違いの理由でほめているおかしさは明らかである。後半の酒の話も同じ人物の言葉とされ、どちらもとぼけた味わいがある。
第128段は、前半で雅房の逸話を語り、後半で生き物への慈悲を説く。うそによって昇進を絶たれた雅房は気の毒だが、生き物を苦しめる者を嫌った院の心を兼好は尊んでいる。第121段とともに、仏教の慈悲の心を、身近な動物への思いやりとして説いている。
関連
出典
- 底本
- 丸岡桂・松下大三郎編『国文大観』日記草子部(徒然草) 板倉屋書房、明治36年(1903)、811〜813頁(コマ419–420)。国立国会図書館デジタルコレクション
- 校訂・訳・注
- 古典ライブラリー編集部
- 更新日